フランスから―環境とアートのブログ

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「空気が危ない?」プロジェクトの周辺

「空気が危ない?」プロジェクトの周辺

20世紀から見た21世紀は、進歩と科学でいっぱいのいわば夢の世界だったが、いざ21世紀が始まってみると過去に追及された進歩に向かうはずの真実が、たとえば「不都合な真実」(アル・ゴア)に代表されるように姿を変え、真実追及に伴っていた到達の喜びが色褪せた、という現代社会の心理変貌を眺望する学者(エチエンヌ・クラン)がいる。 21世紀への端境期に、フランスは二度の気候変動による大きな被害を被った。1999年年末の大嵐でブライエ原子力発電所が浸水。事故寸前に陥ったらしいが、国民に知らされたのは数か月も経ったあとだった。2003年の夏は、欧州を襲ったヒート・ウエーブがフランスにおいて1万5千人の命を奪った。 2003年の秋冬、ニューヨークで研修中、「現代社会で15000人も猛暑で死ぬなんて、とても考えられない」という何人ものアメリカ人の反応に出会うなかで、気候変動の問題はどうにかして無理やりにでも自分のテーマに引き込まなければならないという思いを固め、図書館に行ってはプロジェクト構想のためのリサーチを続けた。 フランスでの研究と合わせて数か月のリサーチの末に構想が整い、プロジェクトを英語で命名。「Air in Peril?」。日本語はもっとずっと後に翻訳。「空気が危ない?」プロジェクトへ。この少し妙な日本語は、「われわれ人間社会の汚染で危機的状態に陥る空気」と「温暖化を招く危険な空気」といった二つの意味のとりかたができ、英語のAir in Peril?より意味の範囲が大きい。 2003年から2004年にかけた構想時に出てきた3つのエレメント、光合成の木、酸素分子、風車(エネルギー)が、初めて揃って実現できたのはその7年後の2011年の日本での個展であった。ビデオはその個展の一部である。 「空気が危ない? 光合成の森」(個展の題名)は、2011年福一事故の年に、放射能に汚染された「空気が危ない?」という意味を含んで一つの区切りをつけたわけだ。 追記:ちなみにNYでの研修目的は、二つの文化の間で生きる人間のバイカルチャーについてのリサーチだった。
2021年

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瞑想の図面、忘れられた曼陀羅

瞑想の図面、忘れられた曼陀羅

図面は、作品「忘れられた曼陀羅」のためにデッサンをもとに二ヶ月ほどかけてフォトショップCS4で引いたものだ。部分を分解して作成した図面は32枚にのぼった。 セーヌ・マリテイーム県の木工部はこれを解析して材料を発注し、ほとんど図面と5mmの誤差もなく、全長34メートルあまりのインスタレーションを作り上げた。図面引きは11月から12月にかけて。作品制作は現場のジュミエージュ修道院跡で2013年1月の寒い最中から4月までかけた。 平川滋子            
原発21基が停止、EDFまた不運

原発21基が停止、EDFまた不運

10月19日、原発5基が強制点検のため運転停止 フランス原子力安全局ASNの命令で、フランス電気会社EDF経営の原発のうち、フェッセンハイム、トリカスタン、シヴォーの5基が強制的に点検に入った。原子炉格納容器の中に設備されている蒸気発生器(スチーム・ジェネレーター)の底を覆うFond primaire という鉄製のボール型の部品に欠陥があることが指摘されており、原子炉の安全にかかわる重要な装置の一部でもあるため、稼働を停止して綿密に点検を行う運びとなった。この部品は、日本のJCFC日本鋳鍛鋼株式会社が製作したもので、インゴット・スチールで作られているが、検査の結果、部品の中央部分に、本来鋳鉄時に均されるはずの炭素が集中してしまう炭素偏析が検出された。…
現代アート・フェア、FIAC & Art2M & Paris Photos

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FIAC 2016 今年はグラン・パレとプチ・パレで、10月20日から23日まで。世界から189ギャラリーが参加。チュイルリー公園、プラス・ヴァンドームで野外インスタレーション・彫刻の展示「Hors Murs」。…

アーティスト公募

アーティスト・イン・レジデンス公募 •Chamalot Résidence d’artiste : シャマロ、1か月のアーティスト・イン・レジデンス2017年夏の公募、締め切り12月11日。グラント1200ユーロ、年齢45歳以下(学生不可)、絵画中心、フランス語を話せること、運転免許必要。詳しい情報はこちら…
グローバリズムとナショナリスト

グローバリズムとナショナリスト

ナイジェル・ファラジ、駆けつけ援護(2016年10月10日) イギリスをBrexitに誘導したUKIPのナイジェル・ファラジとアメリカ大統領候補のドナルド・トランプのスローガン、なんとそっくりなことだろう。 まずは、アメリカ共和党候補ドナルド・トランプのスローガンから。   Make America Great Again! もう一度、アメリカを偉大にしよう! Take Our Country Back 我々の国を取り戻そう
ヒラリー・クリントン、アル・ゴアとフロリダで環境問題へ迫る

ヒラリー・クリントン、アル・ゴアとフロリダで環境問題へ迫る

米大統領選の第2回目のディベイトの翌日、10月11日、ヒラリー・クリントンはフロリダへ・・・ アル・ゴアと、環境問題に積極的にチャレンジすると言明した(CNNニュース) サイクロン・マシューが甚大な被害を残したフロリダでの演説は、温暖化ガスや異常気象による地球や人類の危機について言及するものだった。地球の未来と子供達を守るために、環境問題に積極的に取り組む姿勢だ。 「環境に優しいクリーン・エネルギー開発へ国を挙げてチャレンジし、それによる新しい産業と雇用を生み出し、新しいアメリカに生まれ変わることを目指す…」 フロリダは、2000年にアル・ゴアが大統領選で負けた因縁の州で、彼にとってはそれ以来初めての演説となる。 ちなみに、ドナルド・トランプはパリ協定から脱退する方針を表明している。 Ajoutée le 11 oct. 2016 Watch: 28 Days Until The Election of The United States of America. http://www.youtube.com/channel/UC7YCA…

レンヌでフェスティヴァル

レンヌのフェステイヴァル 2016年10月7日から16日まで 現代アート・インスタレーション、テクノ・ナイト、詩、演劇、ブロカントなど、総合アート・フェスティバル カルチャー・ボックスからレンヌ・フェスティバル フェスティヴァルなう Les lapins géants du festival Maintenant
差別雇用で、実は企業が大損

差別雇用で、実は企業が大損

有色人種、女性、身障者、老齢者などに対する企業の社員雇用の差別が、フランス全体で1500億ユーロの経済損失を生んでいることがわかった。 差別雇用をなくせば、20年でGDPを6.9%上昇させられる France Stratégie(首相付インスティテューション:Commissariat général à la stratégie et à la prospective (CGSP))が9月20日に労働相に提出した画期的な報告書は、 労働市場での差別が招く経済的な影響を調査したもので、驚くべき数字が明らかになった。差別を少なくすれば、この先20年で、GDPの3.6%(800億ユーロ)から14,1% (3100億ユーロ)の成長を見込むことができるというものだ。
パリ協定施行に向けて各国が批准へ拍車

パリ協定施行に向けて各国が批准へ拍車

パリ協定、インドが批准 「子供の未来のため、大地の未来を思い」、インドが10月2日(マハトマ・ガンジーの誕生日)、パリ協定を批准した。 大量に温暖化ガスを出す国のうち、アメリカ、中国に続いて、3番目の温暖化ガス排出国である。1997年に採択された京都議定書以来18年ぶりに世界各国が気候変動を抑制するプロジェクトへ合意したパリ協定。現在、協定の施行へ向けて各国の批准が進んでいる。
難民にとってイギリスはそんなにいいところ?

難民にとってイギリスはそんなにいいところ?

カレに集まった難民はどうしてイギリスに行きたがるのか 各国の難民9000人が集まるカレのラ・ジャングル。なぜ彼らはイギリスへ行きたがるのか。実際にイギリスへたどり着いた難民を取材した。(フランス2TVとBBC) 「カレの生活はスーダンより酷かった。あそこでは人間扱いしてもらえなかった」。スーダンから来たジャメルは、カレから英仏海峡を渡るのに11回トライしてようやくイギリスへ。フランスの冷たい待遇に対してイギリスでは、移民用の家を配給されて人間らしく暮らせるようになり、亡命者受け入れ枠で、身分証明書も発行してもらった。居住の安定と身分証のおかげで新しい仕事も見つけられたという。生活が落ち着いたので、スーダンから妻を呼び寄せたい意向だ。…
カレの移民

カレの移民

オランド大統領カレへ、ラ・ジャングルの全面撤去を指示 英仏海峡に面したカレに集まる移民の仮住居を全面強制撤去する指示を出すため、今日9月26日、オランド大統領がカレへ出向した。 イギリスへ渡るため集まった難民が仮住居を作り住む居住地をル・ジャングルと呼ぶ。違法滞在のみならず、国道を走る車や輸送トラックを障害物を置いて無理やり止めたり、そのために事故を起こしたりの事件が増加している。周辺住民への脅威となったラ・ジャングルにはおよそ9000人の移民がいるが、他の地域の難民受け入れセンターへ分散するなどの方法がとられることとなり、今日オランド大統領がカレへ出向して、ラ・ジャングルの全面強制撤去の執行を地域の警察や憲兵隊、カレ市当局へ指示した。
Nuit blanche ニュイ・ブランシュ、10月1日から2日にかけて

Nuit blanche ニュイ・ブランシュ、10月1日から2日にかけて

2016年の第15回ニュイ・ブランシュは、パリ市中で10月1日土曜日の19時から翌日明け方7時まで行われる。コミッショナー、ジャン・ド・ロワズィ(現在パレ・ド・トーキョー会長)が、「ポリフィリの恋の夢」をテーマにセーヌ川沿いの回遊を想起し、40人ほどのアーティストにプロジェクトを委託した。パリ中に約150箇所のイベント、パフォーマンス、インスタレーション、ビデオプロジェクション、コンサートが混在する。パリ市庁舎、ポンピドーセンター、貨幣博物館なども参加する。
フランスでも地震続く

フランスでも地震続く

フランス、ナント市近郊を震源にする地震 このところフランス国内を震源とする地震が続いている。2016年7月21日、サン・フェリベール・ド・グラン・リューでマグニチュード3.5。9月22日にやはりこの地域で、ゲランドから37kmを震源にマグニチュード3.6の地震が発生した。ナントまで揺れを感じたという。
フランスのカレ港に移民阻止の壁造り、イギリスが建造費全額負担

フランスのカレ港に移民阻止の壁造り、イギリスが建造費全額負担

(9月23日追記:この記事の最後) 壁 英仏海峡を渡ってフランスからイギリスに違法入国をする移民を阻止する目的で、カレの港に海岸線を走る国道に沿って防音壁のような高さ4m、長さ1kmの壁が作られることになり工事が着工した。その両端には30kmの鉄条網が張り巡らされる。建造費用はすべてイギリスから出ており、その総額は270万(フランス2TV)とも320万ユーロ(ル・フィガロ)とも言われる。