カレに集まった難民はどうしてイギリスに行きたがるのか
各国の難民9000人が集まるカレのラ・ジャングル。なぜ彼らはイギリスへ行きたがるのか。実際にイギリスへたどり着いた難民を取材した。(フランス2TVとBBC)
「カレの生活はスーダンより酷かった。あそこでは人間扱いしてもらえなかった」。スーダンから来たジャメルは、カレから英仏海峡を渡るのに11回トライしてようやくイギリスへ。フランスの冷たい待遇に対してイギリスでは、移民用の家を配給されて人間らしく暮らせるようになり、亡命者受け入れ枠で、身分証明書も発行してもらった。居住の安定と身分証のおかげで新しい仕事も見つけられたという。生活が落ち着いたので、スーダンから妻を呼び寄せたい意向だ。…
また、シリア難民のアーマッドは、輸送トラックの荷台の中で3日を過ごしてイギリスまでやってきた。「ようやく夢のイギリスにたどり着いた」。
シリアからイギリスにたどり着くまで2ヶ月をかけた。イギリスで、やはり亡命者としての身分証をすぐに発行してもらい、仕事も見つけられたという。
My opinion: 国境を接した国々の人々にとって、住居するにも仕事をするにも一番最初に必要なものは「身分証」である。したがって、国を捨て財産を捨て、あらゆるものを捨ててきた難民に必要なのは、生活のインフラとともに身分を証明するものを身につけることである。
果たして、「イギリスへ行く難民はフランスに来る難民より少ないので、身分証発行も早く、受け入れ条件もいい」とフランス2TVが説明しているが、それには少々異議がある。
数年前サルコジ政権の時に、パスポート発行がえらく日数がかかって迷惑をしているというフランス人の話が話題を呼んだ。フランス国民であることを証明し直さないとパスポートを出さない、という妙な制約を設けたために、支障があちこちに出て問題になった時だ。あるフランス人は、自分の遠縁にイギリス人がいるのを思い出して、イギリスへパスポートを申請したら、すぐに郵便で送ってきたのであまりの簡便さに驚いたということがあった。そのくらい、フランス人の身分証作りにさえ時間がかかった。フランスの外へ向けての頑なな態度は、そうした内部行政の遅延と消極性と結びついていて、これはもうフランスの伝統芸と言っていいかもしれないように思う。つまり、難民をどう受け入れるかという態度の国の差は、難民が多い少ないというだけが基準ではないということだ。
さて、数百万人が難民化しているという状況へ、彼らの街を破壊している戦争とともに、もっと英知を集めて対処できないものだろうか。(S.H.)