1月15日追記:この一週間の事態の展開はめまぐるしい。昨日14日オランド大統領は、南仏のトゥーロンに停泊しているフランス最大の空母シャルル・ド・ゴールに乗り込み、海軍に向けて年始の挨拶をした。空母シャルル・ド・ゴールはインド洋に向けて出発する予定だったが、イラク湾岸へ向かい、特別任務(戦闘)に加わることになるようだ。オランド社会党政権は2013年、緊縮経済政策のわくで軍事費の大幅削減と軍隊の3万4千人削減を2019年を目処に達成する法案を可決したが、この日トゥーロンでオランド大統領は、「特別の状況を鑑みて、先に決められた政策を見直し軍備縮小の度合いを緩めなければならない」と発言した。
同日14日、イエメンのアルカイダがパリ銃撃テロの命令を下したという犯行声明を出した。また14日は、25カ国で16カ国語に翻訳された300万部のシャルリ・エブドが事件後はじめて発売され、あちこち売り切れが続出するという異変の直後、先のビデオと同一人物と見られるアルカイダの犯行予告とも取れるシャルリ・エブド最新号の漫画化されたムハンマドへの批判がインターネットに流れた。「シャルリ・エブドが過激派に宣戦布告」というジョーク(?)がFBに載ったほどだ。テロに向き合う世界は、一体どこへ行こうとしているのか・・・。

Le porte-avion Charles-de-Gaulle dans la rade de Toulon, Var le 13 janvier 2015 BORIS HORVAT -AFP

写真上:空母シャルル・ド・ゴール

数字

  • フランス全土を警備する兵隊の数、10500人。
  • モスクの焼き討ち、発砲、スプレーで悪戯描き、暴力などイスラム教徒への嫌がらせがフランス全土で20件発生
  • 中学、高校で、生徒の反抗や不協和音が200件以上発生。そのうち警察や教育省へ報告しなければならないほどの事件が40件に上る(教育相が国会で報告)。「犠牲者への黙祷。知らない人へなぜ黙祷をしなくてはならないか」、「侮辱されたら、反撃するのは当たり前じゃないか」…。
  • 青少年の5人に一人は、このテロ事件を陰謀によって捏造されたものと考えているという(フランス教育相が今日発表)。原因はインターネットなどからの情報収集によるもの。
  • この一週間、精神不安定を訴えるフランス人が増え、安定剤や睡眠薬の販売が18%上昇した。
  • テロを擁護し賛美する発言がネットなどに掲載され54件が摘発対象となり、10人が裁判所へ出頭を命じられた。バランスの事件では4年の懲役、トゥールーズでは8カ月から1年の懲役確定。
  • 1月13日、マニュエル・ヴァルス首相は、フランス監獄内にいる100から200人のイスラム急進派を隔離し、ほかの囚人との接触を絶つ立法を急ぐと発表。
  • 当初100万部の予定だったシャルリ・エブドは予約爆発で、300万部へ。それでも足りない今日は200万部の増刷開始。同社の通常印刷部数は6万部。資金ぐりに汲々としていた。

表現の自由はどこまで許される?

宗教に対するかなりえげつない風刺でも、思想批判と同じレベルのものだといっていたシャルリ・エブドのカブ。「表現の自由」はどこまで許されて、またどこから罪とみなされるのか。

フランスは1789年の人権宣言で、人は言ったり書いたり印刷したりする自由が保障されている。しかし現行法には、これにちゃんとリミットが設けられている。①名誉毀損、②侮辱、③嫌悪の挑発、④テロの賞賛の4項目がそれだ。これらは裁判所が程度を見極め、最高7年の懲役刑が課せられる。

シャルリ・エブドは2012年、ムハンマドを侮辱したとして訴えられ、会社が放火されるなどの被害を受けていた。