環境アート「ウォーター・フットプリント」
展覧会ドキュメント・ビデオ

「アーティストの視線」 展

フランス、フィニステール県、トレヴァレーズ領
2014年、4月12日から10月13日まで

人間活動の自然へのインパクトを語るとき、「エコロジカル・フットプリント」という表現に行き着く。
「フットプリント(足跡)」ということばが使われるようになった背景に、人間が自然を踏みにじった跡という意味があり、定義の生みの親の一人 William E. Reesによれば、「エコロジカル・フットプリントは、人間活動が環境に与える負荷を、資源の再生産および廃棄物の浄化に必要な 面積として示した数値(…)」であるという。このことで私たちが直感的に気づくのは、近い将来、世界の人口が増加し、「フットプリント」が拡大していっ て、われわれは持続可能な開発への理想からはどんどん離れていくだろうということだ。

水についてのリサーチ段階で、私は地球の将来に対する悲観的なビジョンばかりに出会った。

地球は水が豊富である。しかしその97.5%は海水で塩分を含んでおり、わずか2.5%が淡水なのだ。
淡水の68.9%は氷。30.8%は 地下水。つまり、淡水のほんの0.3%が川や湖などを満たす水なのである(FAOWATER 調査)。氷河も地下水も減少している今日、世界の人口は増加 し続けている。現在水の確保に困難な国の数は、2025年には倍増する計算だ(つまり、世界の3分の2の国が水飢饉に瀕する)。… 

「ウォーター・フットプリント」という表現は「エコロジカル・フットプリント」の派生語で、その定義は事物の生産や消費の ために必要な水の量、つまり、日常生活に必要な水、家庭で使う水、食料、農業用水、運送、産業用水などをひっくるめた水の総量である。

「フランス人一人のウォーター・フットプリントは一年につき、1786立方メートル。つまり、ボーイング747型機、2機 分の容積に値する。…
ウォーター・フットプリントの47%は、フランスで消費されるものを生産する外国で使われている。つまり、フランスは約半 分の水を外国に頼っており、その量は128億立方メートル(トン)で、毎年水の赤字をかかえていることになる。よくフランスは、水に事欠かないというが、 この表現は間違っているといえるのである。」 (WWF 報告書 «フランスのウォーター・フットプリント», 2012)
「フランス全体のウォーター・フットプリントは、年間1060億トン。一人当たり、年間1786トンの割りになる。フラン ス人一人当たりのウォーター・フットプリントは世界平均より30%多い。」(UNESCO-IHE 報告書 « The Water Footprint of France », p.7)

こうして、私は新しいプロジェ クトを「ウォーター・フットプリント」と題することにした。
プロジェクトは二つの構造を持つ :
1. インスタレーション 「ウォーター・フットプリント」
2. パフォーマンス 「水を追いかける」

研究機関や報告書はいくつか存在し、データの収拾期間の相違や定義の相違があり、数値に差異がある。表現「ウォーター・フットプリント」は、地球サミットの リオ会議で1992年に初めて使われた。

参考資料 :
Rapport « The water footprint of France » (68 pages), A.E. ERCIN, M.M. MEKONNEN, A.Y. HOEKSTRA. March 2012, VALUE OF WATER RESEARCH REPORT SERIES NO. 56 UNESCO-IHE, Delft, the Netherlands, 1 Twente Water Centre, University of Twente, Enschede, the Netherlands; corresponding author: Arjen Hoekstra, e-mail a.y.hoekstra@utwente.nl
Rapport « L’empreinte eau de La France » (38 pages), Thierry Thouvenot, avec la participation des équipes du WWF-France. 2012. http://wwf.fr/media/documents/l-empreinte-eau-de-la-france
Nations Unis http://www.unwater.org/water-cooperation-2013/en/
Eau France http://www.eaufrance.fr/site-156/groupes-de-chiffres-cles/empreintes-sur-l-eau
FAO WATER http://www.fao.org/nr/water/who.html
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「ウォーター・フットプリント」 プロジェクト
テキスト 2013年から2014年
1. インスタレーション 「ウォーター・フットプリント」
<家庭で使う水の量 – ウォーター・フットプリントの3%>
「フランス人は一人一日、150リットルの水を使う。つまり年間55トンで、全体の消費量である1875*トンからみると、その3%に値する」 (Eau Franceのデータ).

フランス人の家庭で使う水は、風呂、シャワー、トイレ、掃除洗濯、飲食、植物の水、等が主な用途だ。

インスタレーション「ウォーター・フットプリント」は、55トンの水をいれた防水布で作った容物に橋をかけて、人が水 の上を歩けるようにしたもの。水の上を歩くのは、裸足(フットプリント)で、一人ずつ、と決め、自分が家庭で一年間に使う水の感触を足の裏に神経を集めてあじわ う。

インスタレーション全長、24.5m 幅、6m

*UNESCO-IHEの報告書の数字は、1786m3.

2. パフォーマンス 「水を追いかける」

ウォーター・フットプリントの97%は、したがって自分以外の産業系統で使われる水ということになる。農業用水、産業用水のことである。例えば、電 気を作り出すために必要な水の量は、ウォーター・フットプリントの22%にのぼる。ウォーター・フットプリントの97%を表現するには、大量の水の管理の概念を含めた特殊な環境が必要だった。

トレヴァレーズ領は19世紀の建築当初から水の管理に非常に神経を使い、領地の外の湧き水から水をいったん領地に入れて溜める大きな貯 水池を作っているのを調査中に発見した。この貯水池の容量が、ちょうどフランス人一人当たりのウォーター・フットプリント、つまり1800トンなのであ る。

パフォーマンスは、貯水池の1800トンの水をフリュオレセインで染めて、堰を 開く。水は、滝口や水路、道路などを通りながら水の行方を描き出し、領地下方にある人工池に行き着いて、池を鮮やかな緑にする。一人の人間が一年間 生きていくのに必要なヴァーチャルな水を、こうして視覚的に体感することができる。フリュオレセインで染める水は、貯水池の1800トンのほかに、インス タレーション「オー・アン・ブル」のある「狩の池」の水700トンで、700トンは水飢饉の多いエチオピアのウォーター・フットプリントに匹敵し、貯水池 と狩の池の水をあわせた2500トンは、アメリカ人一人当たりのウォーター・フットプリントにあたる。

(パフォーマンスは、展覧会会期中3回。5月10日、11日、シャクナゲ祭り。5月31日、6月1日、ランデヴー・オ・ジャルダン。9月、ヨーロッパ遺産の日。)

3.インスタレーション 「オー・アン・ブル」

トレヴァレーズ領の「狩の池」を利用して、人に有用な世界の水の希少さを表現するインスタレーションを構想。 「ウォーター・フットプリント」プロジェクトと並行して行えると考えた。80mの池に9つの直径40cm(容積33リットル)のプレキシの球体を並べ、球体の内側の空気を抜いて池の水を引 き込ん だ、球体の水が水面上にあるように設定したインスタレーション。球体の中の水は池の水が流動しているために、池にフリュオレセインを入れると、球体の中にも緑の水が浸入して緑になる。

構想 2012年
文章 2013、2014年

Nezsletter May 2014

Shigeko Hirakawa
プロジェクト実現、2014年4月
展覧会「Regard d’artiste」
EPCC Chemins du patrimoine en Finistère – Domaine de Trévarez企画、フランス、フィニステール県
会期、2014年4月12日から10月13日