論争、ジェフ・クーンズの贈り物

パリに贈呈されることになったジェフ・クーンズの彫刻「チューリップのブーケ」をめぐり、仏文化関係者の拒否運動が高まる

2016年11月21日、アメリカ大使館とパリ市との間で、パレ・ド・トーキョー前にジェフ・クーンズの彫刻「チューリップのブーケ」を設置することが決まり、ドイツの工場で制作中の彫刻の設置の日が近づいている。同時に、アーティストやアート・ディレクター、建築家や政策責任者などから設置の撤回を求めて、反対の声が上がっている。

反対の理由は、まず彫刻の寄贈の動機が2015年11月13日にパリで起きた悲惨なテロの犠牲者への追悼と記憶の象徴であるとしているが、場所的に全くテロとは関係のないところへの設置であること。パレ・ド・トーキョーという歴史的文化的にプレスティージュなところへの美術作品の設置は、もっと民主的に公募などしてみんなに選ばれたものでなければならないのではないか、ということ。建築的並びに文化遺産的に見ても、彫刻の大きさ（高さ12m、幅8m x 10m）からくるインパクトは、パリ市近代美術館とパレ・ド・トーキョーの均衡を崩し、エッフェル塔へのパースペクティブに障害となるだろうこと。芸術的に、1980年代のポップアーティストの第一人者であるジェフ・クーンズは、投機的な産業芸術の象徴であり、アートマーケットを操るネットワークを背景にしていることが知られている。彼のアートがパリの、特に旅行者の多い界隈で宣伝効果を上げることは、フランスのアートシーンや若いアーティストにとって益とはならないこと。費用的に、この彫刻の設置は、国にとって（納税者にとって）高くつくだろうということ。クーンズの彫刻制作には少なくとも350万ユーロがかかっており、その出費の大半はフランスのメセナが負っている。それらフランスのメセナは支援金の66％の税金控除を受けられる仕組みだからである。また、彫刻を支える床の強化のためにパレ・ド・トーキョーの地下工事をせねばならず、同現代アートセンターの活動機能への影響や国の負担は避けられない。技術的に、パレ・ド・トーキョーの展覧会場の上に35トンの彫刻を置くことは冒険で、長期にわたる安全性を担保できるかどうか不確実である。等々。

反対声明を出した反対者のリストは以下の通り。

署名者リスト：

Olivier Assayas, filmmaker; Marie-Claude Beaud, Director of the New National Museum of Monaco; Marie-Laure Bernadac, Honorary General Curator; Christian Bernard, director of the Spring of September; Christian Boltanski, artist; Nicolas Bourriaud, director of Montpellier Contemporain; Emilie Cariou, MP (LREM) Vice-Chair of the Finance Committee; Stéphane Corréard, director of the Galeristes salon; Matali Crasset, industrial designer; Alexia Fabre, chief curator of Mac / Val; Estelle Francès, founder of the Francès Foundation; Alexandre Gady, president of sites and monuments; Antoine de Galbert, collector, founder of the Maison rouge; Catherine Grenier, Director of the Alberto-et-Annette-Giacometti Foundation; Marie-Laure Jousset, Honorary Chief Curator; Marin Karmitz,collector; Gaëlle Lauriot-Prévost, designer; Claire Le Restif, director of the contemporary art center Le Crédac; Gabrielle Maubrie, gallerist, founder of the association Galleries mode d’emploi; Frédéric Mitterrand,former Minister of Culture; Jean-Luc Moulène, artist; Tania Mouraud, artist; Pierre Oudart, director of the Marseille-Méditerranée College of Art and Design; Dominique Perrault, architect.

http://www.liberation.fr/debats/2018/01/21/non-au-cadeau-de-jeff-koons_1624159