【2018年度、総文化予算、100億ユーロ】
現在の文化省構成
2018年度フランス文化省予算へ言及する前に、現在の文化省の構成に触れておく必要がある。2010年文化省は、それまで専門分野を司っていた10の管理局を大まかな4つの局に取りまとた省変革をしたが、マクロン政権下のフランソワーズ・ニセン文化相の文化省はこれを踏襲するものだ。
4つの局とは、①.総務局(文化大臣の省行政と文化政策の横の連携をスムーズに運営する)、②.文化遺産総局(フランス博物・美術館 DMF、フランス・アーカイブス DAF、建築・遺産管理局 DAPAから構成される)、③.芸術創造総局(音楽、舞踊、劇場エンターテイメント ・旧DMDTS、および造形芸術・旧DAPを含む)、④.メディアおよび文化産業総局(多様なメディア文化、広告産業界、すべての通信サービスの発展を、音響産業、書籍やレクチャー、および文化的経済を通じて、国の政策の精査調整をし規定する)。
さらにこれに加えて文化大臣の権限下で、「フランス語とフランスの言語・総務庁」が設けられ、フランス語の使用を保証し促進するために言語の豊かさを保持していく。また同庁は、フランスの言語(地域の言語など)を文化政策に取り込んで多様性を支持し、フランス語圏のフランス語に寄与しつつ、世界とヨーロッパにおける言語の多様性を強化していく姿勢だ。
2018年文化予算の概要
上の図:
文化省発表による全体の予算「100億ユーロ」とその大まかな配分。
大きい順から並列すると以下のようになる。
- 38億9500万ユーロ:公共視聴覚
- 16億ユーロ:税金
- 8億9700万ユーロ:文化遺産
- 7億7900万ユーロ:芸術創作
- 7億2400万ユーロ:映画、視聴覚産業、ビデオ・ゲーム
- 7億1100万ユーロ:人件費
- 5億5500万ユーロ:伝える文化教育・芸術を身近にする活動
- 2億8500万ユーロ:プレス、メディア
- 2億7100万ユーロ:書籍、文化産業
- 1億1200万ユーロ:文化研究、文化科学
- 9300万ユーロ:その他の税金など。
一番大きい支出は、100億ユーロのうちの40%を占める公共視聴覚だが、これは国営放送のテレビやラジオ(具体的には、フランス・テレビジョン、ARTE、ラジオ・フランス、フランス・メディア・モンド、TV5、フランス24)、また映像研究と保存の役割を担う国立オーディオヴィジュアル・インスティテュート(INA)を指している。
芸術創作の内訳
4番目に位置する「芸術創作」に、造形芸術が含まれるわけだが、その項は以下の通り。
芸術創作の7億7900万ユーロのうち、7億400万ユーロ強はパフォーマンス・アート、つまり劇場関係方面の予算であり、視覚芸術(ヴィジュアル・アート)には、そのほぼ「10分の1の7400万ユーロ」しか充てられていない。
視覚芸術(ヴィジュアル・アート)の予算説明について、その内容を引用しておこうと思う。
「視覚芸術(ヴィジュアル・アート):
2017年から2018年にかけた310万ユーロの減少は、2017年に国立造形芸術センター(CNAP)施設の敷地をパンタンに購入したことに関連しており、 4800万ユーロの費用がかかる事業は文化省にとって、視覚芸術のための象徴的なプロジェクトとなる。 2021年までに施設本部と全収蔵品10万点を収集する収蔵庫が一箇所にまとめられ、公共へ開放し現代アートをより一般に広める活動の現場として実行力のあるものとなる。
視覚芸術への予算は、最大5100万ユーロから4800万ユーロ。特に地域の現代美術基金と現代アートセンターのネットワーク構築(+40万ユーロ)、またデザインとファッションへの政策を活発化させ(+ 30万ユーロ)、視覚芸術の発展と一般化(+ 20万ユーロ)への予算を増加した。
同時に、2017年に大幅に増加(+ 100万ユーロ)した公の作品発注への予算は280万ユーロのまま維持される。特に写真分野で作品購入を積極的にする意向だ。芸術創造総局に写真庁を創設して文化政策を強化し、プログラム131に資金再編がされていくこととなる。
最後に、シテ・ド・ラ・セラミック(セーブル、リモージュ)、国立家具工芸への予算は、工芸品の価値と保存継続のために2017年のまま据え置きとする。」
要約をすれば、視覚芸術への予算の半分は国立造形芸術センターの新施設建造(昨年からの費用分割分)に費やされ、残りの半分で、工芸、デザイン、ファッション、そして造形芸術を賄うということのようだ。
http://www.culturecommunication.gouv.fr/var/culture/storage/pub/plf_2018/index.htm#/52