人権が揺らぐ日本
原発事故被害者の人権を守る、署名運動 【国連人権理事会は2017年11月、特に原発事故の被害者に対する日本政府の人権侵害に言及し、政府に現状の是正を勧告した。】 日本グリーンピースの公式サイトから引用: 「東京電力福島原発事故から7年、日本政府は、被害を受けた人々の暮らしをまもるどころか、人権を侵害しています。被害者の声が反映されないまま、避難指示が解除され、賠償や住宅支援の打ち切りが強行されています。 しかし、被害を受けた人々が直面している状況を改善できる希望が見えてきました。この11月、国連人権理事会による日本の人権審査で、国連加盟国4カ国が、原発事故被害者の人権状況を是正するように、日本政府に以下のように勧告したのです。*1
法成立51年、フランスの女性解放のプレリュード
1965年、女性の経済自立を許す法律が成立 女性解放の端緒をきったといわれる経済的解放は、1965年7月13日に起きた。 自由を謳歌する今となってはまったく想像もつかないが、51年前のフランスの既婚の女性には、まだナポレオン法典が定義する民法が部分的に生きていて、自分の配偶者の許可なしに働いたり銀行の口座からお金を引き出すことはできなかったのである。 ナポレオン一世が1804年に成立させた「ナポレオン法典」は、男性支配を強調し、既婚女性にあらゆる法的制約を課していた。 〈既婚女性の権利を奪っていたナポレオン法典とは〉
アクチュアリティ
[「みんなに結婚の自由を」法案、今日可決] 10日間のマラソン協議、および協議に向けての仕度などを含めると総計15日間にわたる調査の末に成立した「みんなに結婚の自由を」法案は今日2月12日、国民議会投票で過半数を取り、可決した。賛成329票、反対229票。社会党政権下のクリスチアーヌ・トビラ法務大臣が政府の姿勢を貫いて多数の反対派を論破し、勝利を招いたかたちだ。法案の通過に国会議員全員総立ちで拍手が沸きあがった。4月2日に上院で検討される予定。(フランス3TV)…
論争「権利」
ロワシー空港、警備員のストライキ - 年末の行き来の激しいパリ国際ロワシー空港で、荷物などを検査する警備職員たちが賃金値上げを要求するストライキに入り、空港では延々と利用客の列が際限なく続いて飛行機の発着に大きな支障が出ていたが、スト6日目の今日、政府に派遣された警察官たちが空港に乗り込んでスト中の警備員の代わりに荷物検査などをして検問に並んでいた利用客の便宜を図り、空港の正常化に勤めた。 警官を介入させた政府の処置に、ストライキ中の空港職員たちはもとより、共産党組合や政治団体が激怒。ストライキは、労働争議の権利として認められており、ストライキ行為による仕事の支障を他の労働力で補填して正常化しようとすることは、争議権を抹殺することにほかならない。国による警官介入処置への組合員や政治団体の抗議にフィヨン首相は、「麻痺した空港を解除するのが目的でしたが、なによりも年末年始の大事な時節をかたにとってストライキをすること事態が許せません」。今朝6時から空港に送りこまれた武装警察官たちは80人。空港周辺の警備に当たっていた警察官とあわせて180人がスト中の警備員の代わりに仕事に取り掛かり、警官は操作免許を持たないスキャナーなどの使用はスト不参加の警備員に任せ、利用客を飛行機に乗せるための荷物検査や身体検査をした。 朝のニュースに引き続き夜のニュースでは内務大臣クロード・ゲアンがフランス2TVで警官の介入について説明。サルコジ大統領自身もこれについての支持意見を表明した。 革命共産戦線(LCR)のオリビエ・ブザンスノは空港で、「警備員の仕事をさせに警察を送り込んで政府はストライキをぶっ壊したんですよ!ストライキの意味をぶっ壊すのは、権利をぶっ壊すのと同じです」とし、また共産党組合の支持に訪れたフランス共産党のマリー=ジョルジュ・ビュッフェは、「警察が出てくるのは予想がついていましたが、スト中の警備員の代わりに仕事をするなんて、前代未聞じゃあないですか」。 労働争議権の遵守か、クリスマスで帰郷を急ぐ人たちへのサービスか。スト不参加の警備員による乗客検査を待つ利用客の列は平均45分待ちで、警官の「援護」が加わっても待ち時間はたいして変わらなかったという。 豊胸整形手術用の不良シリコン、外国での問題 - 20日のニュースに引き続き、フランスのPIP社の豊胸手術に利用するシリコン製品の問題で、PIP社の製品の84%がスエーデン、イギリス、ベルギー、ドイツなどに輸出されているため、外国での問題をあきらかにするために、フランス2TVはPIPのシリコンで災難にあったイギリス女性を発見し取材した。 この女性によれば、シリコンの外膜が破れて摘出したところフランスのPIP社のものと判明し、弁護士に言われて証拠品として保管していたが、当のPIP社が弁済不能状態のため、整形手術をしたクリニックを相手に訴訟を起こした。同業者の医師によれば、「PIP社のものは手にとって曲げてみると周りの皮膜に変な折り目がついてしまうなどし、不良品だということがすぐ分かります」。(フランス2TV) 23日朝のニュース: 3万人の女性の胸から不良製品のシリコンを摘出することをこれから半年以内に国が推進する方針を決めた。一方で、専門家によるとPIP社のシリコンだからと言ってすぐに発がんの危険性があるわけではなく、摘出をしたくない女性はそのままでいてもいいのではないかという。国民保険が3万人の手術に見込んでいる予算は、6000万ユーロ。 My opinion: サルコジ政権になってからの特徴は、国が小さい問題に関与しすぎる傾向にあることだろう。誘拐事件や殺人事件などのたった一人の犠牲者の葬式にも大臣が参列したりしている。クリスマスの帰省時期のストライキという理由で警官を出して争議権に抵触したり、医療費の高騰、国民保険の赤字、医療施設の激減や適切な医療を受けられない地域や人々の増加などの医療の大きな問題を国が孕んでいながら、美容整形者全員の不良品摘出手術代を国が負担することを決めたりするのは、異常の判断としか思えない。PIP社の不良シリコン事件は、現政府の「問題の取り上げ方」自体を疑問視する好材料として、ここ数日頻繁にメディアが取り上げているものと解釈していい。 債務不履行で社長を始めとして幹部全員が姿をくらましてしまったPIP社の事件は、その製品の大半が外国へ輸出されていたことから国際事件へ発展した。社長は南米に姿を隠していると言われ、また3万人の手術の補償をしなければならない国民保険は訴訟を起こす方針だという(24日付ニュースから)。(S.H.)
論争、エヴァ・ジョリィ対フランソワ・フィヨン
論争沸騰、軍事パレードから二重国籍へ- 7月14日、キャトルズ・ジュイエ。シャンゼリゼ通りで行われる恒例の軍事パレードについて、EELV(ユーロップ・エコロジー・レ・ヴェール)に選出された大統領候補エヴァ・ジョリィの発言が、論争を巻き起こした。この日エヴァ・ジョリィが、「軍事パレードを廃止して、市民のパレードに切りかえてはどうか」と発言したところ、フランソワ・フィヨン首相がこれを受け、「なんとも悲しい発言だ。この’婦人’はフランスの伝統や、古い文化や価値、またフランスの歴史がまるで分かっておられない」と、メディアに向けて正式発表するかたちをとってやり返した。エヴァ・ジョリィはこれに反駁し、「私はフランスで50年も生活してきたれっきとしたフランス人です。私の愛国心に対し疑いを投げかけるような言い方は許せません」。引き続き『Le Point』誌上で、「こうした(首相の)言い過ぎは、ナショナル・アイデンティティをたてに虚勢を張るところからでている。首相は、ああしたことを言ったことで、公ですべき意見討論の意味を貶めたばかりではなく、共和制政体のあり方そのものが退廃へ向かっていることを露にした」と述べた。 EELVの創始者、ダニエル・カン=ベンディット(欧州議員)は、「エヴァは正しい。フィヨンの脱線だ」。ユーロップ・エコロジー書記長セシル・デュフロは、「こうした発言をする首相は恥だ」。また社会党のフランソワ・オーランドは、「(軍事パレードをうんぬんというのはひとつのアイデアとして出ただけ)出てくるアイデアのもろもろを公の場で検討していくのは当たり前のことなのだが、そうした討論の場すら拒否してしまうような政府は言語道断です。フィヨン発言は許せません」。社会党のマルチーヌ・オーブリィはさらに輪をかけて、「フランスで生まれたフランス人も、フランスの外で生まれたフランス人もフランス人として同等の立場にあります。同等の権利を再び外と内とで引き裂くようなフィヨン首相の発言は、大問題です。フロン・ナショナル(極右政党)と同じラインではないですか。今回、心底からショックを受けました」。 軍事パレードの問題を飛び越え、フィヨン発言は革新左派を逆撫でする結果となり、「ナショナル・アイデンティティ」にかんする保守右派政府と革新左派全体の対立を、再び浮上させることとなった。 (フランス2TV、TF1TV、F2blog、Le Point) 〈注記: キャトルズ・ジュイエの軍事パレードについて - 大本はナポレオン一世時代に始まったもので、そののち1880年から毎年国民の日7月14日に行われるようになったパレード。シャンゼリゼ通りで行われるようになったのは第一次世界大戦後の1919年。現在のパレードは約4000人の軍隊(兵学校、海軍、陸軍など)、および消防、警察などで構成されている。キャトルズ・ジュイエの軍事パレードは、ロシアの赤の広場の軍事パレードに次ぐ大きなパレードといわれている。〉 My opinion: エヴァ・ジョリィの立候補と今回の発言、またフィヨン首相の発言にはさまざまな大問題が含まれている。キャトルズ・ジュイエの軍事パレードについていえば、現在軍事パレードが定期的にこれだけの規模で行われている国はロシア、北朝鮮など、ある種の政治色が濃い国ばかりであること。伝統的かつ著名な風習を廃止するという「ひとつの」提案を無下にし、フランス・ノルウエーの二重国籍を持つエヴァ・ジョリィに対し、「このご婦人はフランスの歴史も価値も知らない」といったフィヨン首相の表現には、エヴァ・ジョリィを外国人とみなしてフランスという国の概念の外へ押し出そうという意味合いがありありとしていたことだった。出るべくして出たこの二重国籍を保持する大統領候補の「出自」の問題。このことで、保守現政府が政府樹立当初、省まで設けた「ナショナル・アイデンティティの概念」を思い起こす国粋主義的な保守の根本志向が再浮上し、従来の保革の思想的対立へ立ち返ることになった。 フランスは植民地が多かった。北アフリカ、仏領インドネシア、ポリネシアなど、旧植民地関係でもフランス国籍を持つ有色人種がたくさんいる。フランス自体、イタリア、スペイン、ロシアなどの少数ながら民族移動と居留が歴史的に頻繁に繰り返されており、国民の混血を免れてはいない。また、サルコジ大統領も父親はハンガリー人でブタペスト生まれ、母親はフランスで生まれているが、家系はユダヤ系ギリシャ人。フランス人のアイデンティティを再考して、フランス人として不釣合いあるいは疑わしい人間の国籍を没収する、などという政策をとるなどしている現政府の「シェフ」ですら、フランス国籍取得は一代前のことでしかない。 こうした国で考えることは、自分のアイデンティティもしかることながら、「人間の権利」とは何かということだ。生まれたときから授けられた権利、剥奪される権利、獲得していく権利。いろいろあるが、現在生活をしている現場の国の人間たちと同じ権利を保障する国籍に関していうならば、日本は本来、二重国籍保持を許してはいない。したがって日本国籍を持つ限りは、日本人が外国で大統領候補になる可能性などは皆無である。したがって、フランスに50年いてもエヴァ・ジョリィにはなれない。すでにその50年あるいは1年ですらも、エヴァ・ジョリィと同じ生き方はできない。国の外で見えてくる人間の「権利の対等」。対等の権利を持つ。人一人の運命にとどまらず国の運命まで変えるキー概念のひとつがここにある。(S.H.)
職業の自由ということの大きさ
2003年にアメリカ、ニュー・ヨークに行った。このとき、目から鱗が落ちるように再認識したことがある。それは、アメリカでは外国人が(といってもアメリカは外国人でつくられた国なのだが)、渡来一世ですらも自由に職業をえらび、あるものは管理職につきまたは教師になり、社会的ステータスをその人なりに持っておおらかに人生を謳歌していることだった。フィラデルフィアのペンシルバニア大学で学部の主任教授をしている日本人から話を聞き、クィーンズ・ミュージアムの専任アソシエイト・キュレーターとして仕事をしている日本人女性と出会い、ニュージャージーの大学の大学院を出たばかりで大学のギャラリーのディレクターに抜擢されたという日本女性に会って、彼らの自然さや満ち溢れた自信に出会った。2人の女性はともにアメリカに来て10年しか経っていないという。フランスではまったくありえないことを目の当たりにして驚嘆した。アメリカで見た「職業の選択の自由」。そんな大事な自由の一つを、フランスの20年の生活ですっかり忘れるほどになっていたことに、われながら呆れかえってしまったのである。 アメリカには永住権が存在することも職業の自由に大きな影響があるのかもしれない。 フランスは国にとって過客に過ぎないエトランジェに対し、フランス人だけが就ける職業という法律を制定することで、ある一線から常に外国人を締め出してきた。「そこいらへんで道路工事をしている外国人は、ひょっとしたら教師の資格を持っているかもしれないのに、フランスではあんな仕事しかできないでいるのよね」と、私のかかりつけの眼科の女医がもらしたことがあった。フランスでは、アメリカでよく聞く能力やその努力の証明となる「資格」という言葉をあまり聞かない。フランスは「権利」という法に照らした言葉のほうが好きだ。私は権利があるがあなたは権利がない、と言ってしまえる簡便さ。そんな国では、能力や努力の一切は別の世界のこととなるのである。(S.H.)