日本の有権者は約一億人だという。つまり投票率1%は100万人に値するのだ。何十万票あるいは何万票で当選する議員がいるとすれば、投票率を1%上げただけでも当選者を変えることが可能になるといことだろう。とくに小選挙区制では、一票の差が勝敗を決めるから、自分が思い描く社会に現実を近づけようとしてくれそうな立候補者がいたら放ったらかしていてはいけない。選挙に行こう!が再び合言葉である。かくいう私は昨日投票を終えました。…

さて、すでに来週に施行が迫る特別秘密法案の強行採決、集団的自衛権を閣議決定して国民の意向を無視し、武器三原則を撤廃して武器輸出を許可。またトルコなど政情がかなり不安定な外国への原発輸出、アメリカとの軍事協定などなど、安倍政権にはだいぶ辟易をしているので、この衆議院選挙で望むことはただひとつ。現政権のこれからの更なる暴走を止めるための衆議院の「ねじれ」を再びこの選挙で作ろうということである。自民党大多数、賛成大多数で、一方的に身勝手な法案を次々に通されてしまうと、憲法の将来、平和、そして国民全体の将来がきわめて危ない。ことに来年は、集団的自衛権の関連法案が30以上も国会審議されることを思えば、である。ということで、野党が少しでも議席を増やさなければならない正念場の「ねじれ」作りがこの衆議院選挙、と私は解釈している。

安倍首相が自ら命名した「アベノミクス解散」。筆者は経済はほとんど門外漢なのであるが、今の日本経済に関する外国のデータを少しばかり紹介してみようと思う。

安倍首相が衆議院解散を決めた指標となったのがGDP国内総生産だ。GDPについての「世界の目」を拾ってみた。

下の表は、国際通貨基金(こくさいつうかききん、英語: International Monetary Fund、IMF)の2014年10月のデータベースから引用されたもの(日本語ウィキペディアGDP国内総生産)である。2011年(右)から今年2014年(左)に推移した3カ国の数字を見てみよう。

*単位は10億US$

順位 2014 2013 2012 2011
1  アメリカ合衆国 17,528.38  アメリカ合衆国 16,799.70  アメリカ合衆国 16,244.58  アメリカ合衆国 15,533.83
2  中華人民共和国 10,027.56  中華人民共和国 9,181.38  中華人民共和国 8,229.38  中華人民共和国 7,321.99
3  日本 4,846.33  日本 4,901.53  日本 5,937.77  日本 5,905.6

ランキングはアメリカが一位、中国2位、日本は3位。問題は、この表をみると、2011年には日本のGDPが5,905.6(59056億ドル)であったのに対し、安倍政権が樹立した翌年2013年には4,901.53(49015億ドル)になってなんと僅か一年で17%も目減りしているのである。2014年も引き続き減少傾向にあるが、この国内生産高の驚くべき減少はいったい何を表すものなのだろうか。アメリカも中国も国内生産を伸ばす中で、日本の数字が小さくなり、それにつれ、4位のドイツのGDPに追いつかれそうなところまで来てしまっている。

また、GDPの成長率に関して、日本のいろいろな経済関係者が3%だの4%は伸びるといった憶測を飛ばしていたが、実際は、あちこちの公的かつ私的機関が下方修正しなければならないほどの低い成長率を記録した。とくにOECD、経済協力開発機構(けいざいきょうりょくかいはつきこう、英: Organisation for Economic Co-operation and Development)が2014年11月末に公表した加盟国34カ国のGDPの変遷一覧では、日本のGDPの伸び悩みは一目瞭然で、ヨーロッパで経済恐慌にあえぐイタリアと並んで最下位に近いところにある。

OECD data GDP Forecast

日本の2007年から2015年の予想までの折れ線グラフはブルーグレーの線で2015年(上のグラフのもっとも右の端)は34カ国中、最低の伸び率となっている。 ちなみに一番上の折れ線は中国、赤はインド(中国、インドともにOECD加盟申請中)、黒はOECDの平均値で世界の平均値より若干低い。つまりこのままの経済状況だと来年も国内総生産はさらに減少し、GDPの伸び率は安倍首相の希望する2%とはかなり程遠いところ(OECDによると1%前後)で低迷すると予想されるのである。

 

GDP伸び率の比較

先日アメリカのオバマ大統領が日本経済は来年も低迷のままといったペシミスティックな展望を述べた。アメリカ経済の持ち直し、経済恐慌といわれているヨーロッパですら日本より上とは。2012年から2013年にかけて減少した17%もの国内総生産はどこへ消えたのか。はたしてアベノミクスは本当に外国で評価されているのだろうか。折れ線グラフの横ばいが問いかける疑問は募る。

もうひとつ、安倍首相が100万人の雇用を作り出したという発言をしている。このことについて、失業者の多いヨーロッパで雇用問題を第三者的にではあるが30年も見ていると、短期間に100万人の「正規雇用」を作り出すのはほとんど神業に近いのではないかと直感的に思ったが、そうした疑問に答えるブログがあった。朝日デジタルなどは、「増えたのは非正規雇用者(123万人)で、正規雇用者は反対に22万人減」としている。足し引き計算でけっきょくのところ正規雇用者はほとんど作ってはいないことになるのか。フランスも非正規雇用が増えて人の心も荒んでいる。安定に欠ける将来への不安、職場の格差や差別、人間関係が浅薄になり責任を持たされないから人への関心も薄れる。自信を喪失した人間を大量生産する、そういう社会にはならないでほしい。(S.H.)

***いつもの報道するラジオで経済学者のゲスト二人が日本経済を検証: 

・20141121 報道するラジオ「解散総選挙!争点アベノミクスを検証 投票材料にして下さい」


[ビデオコメント]
来月14日に向けて選挙戦が始まりました。
なぜ解散したのかという議論もありますが、
選挙では安倍政権の2年間が問われることは確かです。
大きな争点の一つのアベノミクスについては、どう判断するのか、意見が分かれます。
そこできょうは経済学者二人にアベノミクスを検証してもらいます。
一人は、日本総合研究所調査部主席研究員の藻谷浩介さん。
「デフレの正体」や「里山資本主義」などベストセラーの著書も多いエコノミストです。
もう一人は、嘉悦大学教授の高橋洋一さん。
元財務官僚で小泉内閣と第一次安倍内閣のブレーンでした。
お二人に質問がありましたら是非お寄せ下さい。
そして、来月14日の投票の際には判断材料の一つにして下さい。