2014年9月24日、アルジェリアで人質になっていたフランス人、エルヴェ・グルデル(55歳、登山専門ガイド)がイスラム過激派によって斬首された。エルヴェ・グルデルは4日前に山歩きをするために10日間の旅行予定でアルジェリアを訪れていたが、イスラム過激派ジハードに捕まって人質となった。フランス人拘束の声明が発せられたと同時に、アルジェリア政府は軍隊1500人およびサーマル・カメラや犬などの装備を総動員して捜索していたが、功を奏さなかった。先のアメリカ人とイギリス人の斬首のときと同じようにビデオがネットにのせられた。ニュースではこのビデオを公開しないが、内容は、覆面4人の武装した男たちに囲まれた人質エルヴェ・グルデルが、「フランソワーズ、エルワン、アヌーク、両親へ、愛しています」という家族への短いことばを発した後、一人の男が、「フランスのイラクへの武力介入を糾弾する」と言って、人質の首を切り落とした4分ほどのものだ。エルヴェ・グルデルの惨殺のニュースはフランス中を駆け巡って国民を震撼とさせた。…
ニースに程近いエルヴェ・グルデルの家族のいる町サン・マルタン・ヴェズュビーの住民たちは驚きを隠せない。イスラム教徒の多いアルジェリアでは「イスラム教徒がこんなことをする道理がない。まったく不可解だ。決して、テロ集団のなすがままにしておいてはいけない」と住民たち。フランスでは、テロ対策を強化し、人の集まる駅やその他交通機関、デパートなどの警備を増強。またこれまで北アフリカの31か国を危険地域とみなしていたが、アルカイダ組織と連携のあるイスラム武装勢力の広がりのため、中央アジア9カ国を含めた40か国を危険地域として指定することになった。
この事件で、反撃としてフランスは空爆を始め225キロ爆弾を4発投下。アメリカはイスラム国を名乗る過激派組織の財源である油田を爆撃した。過激派組織イスラム国が所有する油田から出る原油は、イラクからトルコへ運ばれ中近東へ売られる。また残念なことに、非常に安価(石油缶一本が12ドル)なためにヨーロッパの国が買っているというEUの報告がある(原油を買うヨーロッパの国はテロリストの財源を潤わせていることになるからだ)。イスラム国を名乗る武装過激派によるフランス人惨殺は、フランスにいるイスラム教徒にも影響を及ぼし、「イスラム教でもこんな惨殺は許されるわけがない」とコメントするなど、ボルドーやシャモニー、パリなどで集会が行われた。
ニュー・ヨークの国連環境会議に出席中のフランソワ・オーランド大統領は演説でこの事件に触れ、「エルヴェ・グルデルが死んだ。なぜならば、フランスがテロと闘っているからだ。現在過激派によって起きているイラクやシリアでの殺人、迫害、強奪や強姦、少数民族の攻撃。フランスはこれらの行為を糾弾し、さらに闘いを続け、テロ組織には決して怯まない」と述べた。エルヴェ・グルデルの惨殺によって、フランスの武力介入への意思が一層固められた形だ。
一方で、エルヴェ・グルデルを誰が殺したかまだわかっておらず、遺体も捜索中だ。フランス人人質がつかまって4日目という早さで殺されたのはエルヴェ・グルデルが初めてで、これまでは数年拘束された上で釈放されたりあるいは殺されたり、誘拐犯は時間をかけるのが常であった。しかしながら痛手は大きく、2010年から今日までにフランス人10人が誘拐で死亡している。
またアジアの海上で、ヨットで航海していたドイツ人(61歳)がフィリピンのアブサヤに誘拐されている。アブサヤはアルカイダと強い繋がりがあり、ドイツはイラクの過激派組織イスラム国への武力介入こそはしないが、クルドへ1万6千丁ものアサルトライフル(全自動式の自動小銃)を供給しているという背景があるためと推測される。
(2014年9月25、26日付フランス2TV)
My opinion: 9月26日金曜日の報道するラジオは、最近頻繁に起きる人質惨殺をうけてか、過激派集団イスラム国が話題だった。人質をとるのは、捕られた人質に責任があるのではなくて、人質の国に問題があるからその国の人間なら誰でも良いから人質にする、という論理なのだ。個人的な恨みも何もないのに殺害するのは、「国」への挑戦(あるいは報復)に他ならない。だから、アメリカ人が殺されると、今度はアメリカという国が戦争を始める。「国民」の一人が殺されて、「国」が反撃をするのは、「国の個人的自衛権」の行使だそうだ。イスラム過激派はどうやら日本人も捕虜にしているらしい。いってみれば、この人たちの命は日本政府にかかっている。アメリカに引きずられて、日本がシリアやイラクに自衛隊を派遣しないように望むばかりだ。(S.H.)
報道するラジオ
過激派集団イスラム国