PISA・ランキングとは?
PISAの2013年の結果が発表され、フランスでも日本でも報道された。フランスは、数学的応用力で25位。2009年の22位から3ランク下落した。
PISAとは、The Programme for International Student Assessment(国際生徒評価のためのプログラム)の略語で、フランス語ではProgramme International pour le Suivi des Acquis des élèves(PISA)、日本では生徒の学習到達度調査。また、OECD(The Organisation for Economic Co-operation and Development 、フランス語:Organisation de coopération et de développement économiques)とは、日本語では経済協力開発機構。欧州や北米の先進国により、国際経済全般について協議することを目的とした国際機関で、本部はパリにある。
PISAは、加盟国34カ国を中心に、義務教育の終了段階にある15歳の生徒を対象に、読解力、数学的応用力、科学的応用力の三分野を調査し、国際的に学習到達度を比較することによって教育方法を改善していくことを目標とするという。
調査プログラムの開発は、1997年に開始。第1回調査は2000年で、以後3年ごとに行われることになっており、今回の報告書は2012年の調査結果ということになる。
[以下の世界地図は国別の調査結果]
日本は、読解力と科学的応用力で加盟国34カ国の中でトップへ躍進し、アセスメント参加国65カ国の中でも4位と、これまでにない好成績を記録したそうだ(TBS ニュース)。
さてフランスはというと、学力調査と社会的応用力を問うこのアセスメントが発表されたと同時に、大きな論争が巻き起こった。というのもフランスはPISAの前回の結果を下回り、ランキングを下落したからだ。「フランスようやく可(パッサーブル:passable)」と成績の悪さを憂いた。Passableとは「可」、優でもなく、良でもなく、その下のようやく通過できる点数である「可」のことだ。
果たしてフランスは、数学的応用力で25位。2009年の22位から3ランク下落した。科学的応用力についても数学と似たり寄ったりの26位。読解力は何とか21位。ほかの先進国、とくにトップを占めるアジア諸国からどんどん差が開いていく状況に論争が巻き起こらないほうがおかしい。今回も三分野すべてのトップは上海だった。上位10各国のうち7カ国はアジアの国が占めているという現実。「フランスはもっと教育程度を上げられるはずだ!」とみんなが悔悟しないわけはない。いったい何がフランスの子供たちの足を引っ張っているのだろうか。
フランスにいる470000人の義務教育最終年の15歳の子供の中から5000人がランダムに選ばれ、筆記試験に臨んだ。65カ国の参加国はみな同じ試験を受けたが、子供たちは、家庭環境、社会文化環境や学校の環境についての質問にも答えなければならない。今年は2003年のように数学的応用力を中心に試験がおなわれたが、2003年はフランスは平均以上だったのが、今回は「並」に。科学も「並」。読解力は、2003年2006年と下落の一方だったのが多少の持ち直しをみせた。
フランスは教育制度の見直しが叫ばれて久しい。とくに休日が多すぎ。月曜火曜、木曜金曜の登校、つまり水曜と土日を休む子供たちの勉強時間はほかの国に比べて大変少ない。「いつ勉強するんだ?」と大人に言わせるほどの、祭日や頻繁にあるバカンス・スコレールと、2ヶ月以上の長い夏休み。
それに加えて、サルコジ政権時代には、国家予算の削減と緊縮財政のために、数万人の教育者の首切りを敢行した。「大体、学校では落ちこぼれが増え、その対策のために補充教員を増やさなければならない時期に、サルコジ政権はわざと削ってほかの教員の負担を多くし、教育の環境を狂わせてしまった。それがたたってますよね」と社会学者。
数学的応用力に弱いといわれて、「掛け算が苦手」と15歳の生徒がつぶやく。15歳で掛け算、のはなし?
数学の理解は「数字」、と単純にいえないところがある。フランス語は、日本のような九九を生み出さなかった。例えば日常フランスは、「90」という数字を言うのに「4かける20足す10」という。こんな質面倒くさい数字の読み方で、掛け算する、というときに言語そのものが複雑にならないわけにはいかない。「90かける90」は、「4かける20と10かける4かける20と10」。「70かける70」は、「60と10かける60と10」。日本の九九がどんなに便利で頭に入りやすいものか、言語の違いに照らして見ればよく分かる。
どの国が頭がいいか、あるいは学校で学ぶ内容を社会に適合させていく能力を身に着けているか、という競争ランキングの問題よりも、こうした結果を内省的に受け止める文化のほうが大いに必要かつ重要な気がしている。
(フランス2TV、MSN info、TBSTV、S.H.)