[緊縮政策、節約と増税]

フランソワ・オーランド大統領はTF1TVの日曜夜8時のテレビ会見で、政府の緊縮政策について細部を公表。一斉に各方面のメディアから多角的な分析を集めた。

2013年度予算を成立させるためには300億ユーロをどこからか捻出しなければならない。うち200億ユーロを増税、100億ユーロを支出軽減で賄う予定だという。増税200億ユーロ分は二分し、100億ユーロは企業税、100億ユーロは所得税、財産税などの一般税の増税となり、とくに年収100万ユーロ以上の納税者には75%の増税となるのが大きな目玉だ。75%増税に関しオーランド大統領は「これから二年間だけの増税」と期限を決めた。その理由でオーランド大統領はこの増税策を「2014年アジャンダ」と呼ぶ。…

また、政府の支出軽減に関し、内務省(国内の安全対策のため)、教育省(教員増強)、司法省の3省は据え置き、他の省は一律7%の予算削減。TGVの延長工事、各部署の刷新、軍隊や文化活動などが主に大幅削減される見込みだ。

一般家庭への影響は、今まで累進課税制で、おおざっぱに年所得6000ユーロ以下は0%、6000から12000ユーロまで5.5%、12000から26000ユーロまで14%、26000から71000ユーロは30%、71000ユーロ以上は41%、で、その年のインフレ率2%を加えたものであったが、今年からは、この累進課税に年収150000ユーロ以上へ45%の枠が加わり、また、全体にインフレ率を凍結して加算しない方針をとる。

ベルナール・アルノー長者番付でフランス一、世界第4位のLVMHを経営するフランス人だが、ベルギー国籍取得をベルギー政府に申請した。「すわ、(年収100万ユーロ以上のフランス人に課せられる)75%の増税から逃れるためか」と、各メディアが騒然とした。LVMH(ルイ・ヴィトン、モエ、エネスィ)は世界中に2500以上の支店を持ち年間売り上げ203億ユーロを超えるアルノーグループ。ベルギー人になる利点を挙げれば、ベルギーの税金は平均してフランスより安く、たとえば生前贈与税はフランスの40%に対しベルギーは3%のみ。死後の遺産相続税はフランスの40%に対しベルギー30%。財産税に関してはベルギーは0%となる。

しかしながら、フランスの税制を逃れてベルギーに税金を払おうと思えば、ベルギー人になる必要はまったく無く、ベルギーに住居を移して住めばいいだけだ。実際に1981年、フランスが社会党政権に掌握された年、ベルナール・アルノーはアメリカへ3年間居住して、社会党の税制改革を免れたという経歴がある。それならば、なぜベルギー国籍を申請したのか。真相を求めて憶測が飛び交う中で、当のベルナール・アルノーが記者会見をし、「フランスにはきちんと税金を払います」と発表した。

保守UMPはフランソワ・オーランドの75%増税に喧々諤々。「金持ちを嫌って増税し、経済的に成功することを忌むような(社会党)政治は、もういい加減にやめないと」とフィヨン前首相。「こういう政策が実行されるたびにフランスの有力者たちが外国へ出ていってしまったりするのは、国家にとってどれだけ不利なことか」とコッペ。

一方で、ベルギー駐在のフランス2TV ジャーナリストは、「ベルギー国籍を取得すれば、税金天国のモナコの国籍を取ることが可能になるので、そのためか?」という。フランス国籍の人間はモナコの国籍をとることができないからである。

François Hollande au JT de TF1 --Kenzo TribouillardAPSIPA

極左のメランションは「きちがいざただ」。極右のマリーヌ・ルペンは「サルコジ政権とは性質が違いますが、力の無さでは同じです」。

年収100万ユーロ以上の企業経営者はもとより、俳優、スポーツマンも同じように75%の増税が課せられる。

[ホモの結婚、法律化]

この秋、ホモの結婚と子供を養子にすることができる法案が国民議会に提出される。ヨーロッパではすでにオランダ、スエーデン、イギリス、ポルトガル、ベルギー、スペインなど、カトリックが強い国も含めて8カ国がホモの結婚を法律で認めている。フランスでは法案が通過して実施されるのは2013年だ。

[家計の赤字]

世論調査で、35歳から49歳の一般家庭の市民のうち5分の1に当たるフランス人が、少なくとも年一回家計の収支が赤字になることがあると回答した。

[首相フランスを駆け巡る]

警察よりも武装しているといわれるマルセイユの若者たちのあいだで麻薬販売やグループの対立が激化、死者が頻出している。こうした暴力のはびこる地域の状況を受けて、ヴァルス内務大臣とエロー首相は、マルセイユ、サン・トゥーアン、アミアンなど全国15箇所の警備体制を強化することを表明した。来年2013年には60箇所へ対策を立てる見通しだ。

(フランス2TV、TF1TV)

 

My opinion: 政策が何であれフランスは、緊縮政治を実行しなければならない土壇場にいる。75%増税が2年だけで済めばいいが、そうは行かない雰囲気だ。オーランド政権は来年度1.5%の経済成長を見込んで失業者対策へのてこ入れをしようとしているらしいが、フランス2TVの経済記者は、300億ユーロの注入では0.8%の経済成長を見込むのがやっとで就職難を解消できるレベルではない、と見る。すでに失業者は300万人を突破していて、とどめるすべが当面見つからない。(S.H.)