Giuseppe Penone、2013年にベルサイユで個展 - ベルサイユ宮殿が大工事に入ってすでに数年経つが、これまで文化大臣フレデリック・ミッテランが采配していた工事の第二期工事を、ジャン=ジャック・アヤゴンの後に2011年11月に就任した新ディレクター、カトリーヌ・ぺガールが、単独で引き受けることになる。
ジャン=ジャック・アヤゴンのキュレーションで、これまで2007年からビエンナーレ形式で行われていたベルサイユ宮殿での現代アート展は、今後も継続されていく方向にあり、カトリーヌ・ぺガールは、2013年にむけてイタリアのアルテ・ポーベラの中心的アーティストとしてよく知られるジョゼッペ・ぺノーネ(Giuseppe Penone、64歳)を選んだ。 …
ベルサイユにキッチュな作品やマンガをおいて視覚的インパクトを狙ったジェフ・クーンズ展や村上隆展は、これまで周辺から強い反対運動がおきた。
今回選ばれたジョゼッペ・ぺノーネの仕事はそうしたポップアートからははまったく程遠く、セレクションの指針を大きく変えたカトリーヌ・ぺガールは、「アーティストはベルサイユに〈来る〉だけではなく、ベルサイユの〈ために〉来てくれなくては」という。2013年はベルサイユ宮殿の庭園を手がけた造園家アンドレ・ルノートルの生誕400周年にもあたり、自然を相手に造形をするぺノーネには、ベルサイユの深遠な歴史的背景を意識した仕事を希望しているという。(ノミネーションの記事:artclair.com)
My opinion: 2011年9月30日のブログに「ベルサイユに専制君主、文化の冒涜」という記事を書いた。このとき、ジャン=ジャック・アヤゴンが任期延長を帳消しになり、それまで政府関係の報道部で仕事をしてきてまったくアート・ディレクターの経験の無いカトリーヌ・ぺガールがベルサイユに就任することについて、イギリスのThe Art News Papaer が、「サルコジの息がかかったジャーナリストが指名された」としてだいぶ指名のあり方を非難したのである。
今回ノミネートされたジョゼッペ・ぺノーネは、イタリアの70年代コンセプチュアルアートの中枢ともいえるアーティストで、自然環境や地球にかかわる今日のアートにも非常に良く呼応する作品をつくる。キッチュよりもっと現実環境を見据えたアートが招待されることになり、このニュースは、またたくまに野外の仕事に愛着を持つアーティストや自然愛好家をすっかり喜ばせてしまった。
ジャーナリズムも人の観方も一転二転。サルコジの息がかかっていようがいまいが、ジョゼッペ・ぺノーネを選んだことによって現代美術を通してベルサイユとアーティストを引き合わせ、新しいの関係を作り出そうという姿勢がカトリーヌ・ぺガールの意識に見えるのは、正直いってなかなか喜ばしいことである。(S.H.)