芸術作品設置に関する照合検査委員会(la Commission de récolement des dépôts d’œuvres d’art (CRDOA)、1997年に会計検査院の注意喚起によって設立された)の報告書によれば、エリゼ宮のみならず、美術館、州県議会や市役所、国民議会、大使館などの官舎から約5万点の芸術作品が紛失(盗難)しているという。

大統領官邸のエリゼ宮から七点の芸術作品の盗難、6月届け出

6月に届けを出したのは国立造形芸術センター Centre national des arts plastiques (CNAP)で、エリゼ宮に置かれてあった木製の彫像やセラミック、ブロンズの胸像など七点が紛失しているとし、当センターは公に糾弾した。これらの作品は数千ユーロ程度で、強盗取締班にとってみれば大した被害とはみなされない。問題は他にある。一つは、盗まれたのは普通の金持ちのアパートではなく大統領官邸という特殊な場であることだ。2012年11月から2013年1月にかけてエリゼ宮備品の照合検査を行った際にみつかったこの不始末は、解決しないまま国立造形センターが盗難届けを出すに至った。その背景には、エリゼ宮の盗難作品のみならず、上院や国民議会、美術館、市役所、官舎、大使館などから盗まれた作品は総計5万点にも上ることがわかったことがある。残念ながらその大半の作品はきちんとした分別書類が形成されておらず、二度と戻ってこないと考えられている。

盗難届2300件、新しく900件追加

芸術作品や備品の管理不足もさながら、盗難とはっきりしたものがある。「2018年年末に、2300件もの盗難届があちこちから出された」と芸術作品設置照合検査委員会 CRDOA の会長ジャン=フィリップ・ヴァシアはいう。
CRDOA は近年、大統領官邸で盗まれたと思われる87件の作品について盗難届を出すように勧めた。首相官邸においても60件の盗難が明らかにされている。しかしながら文化省の国宝局は手を拱いており、例えば2014年、住宅省官舎で紛失した彫刻「ビーナスとアムール」の問題についてすら何の問題提起もしなかった。

新しく900件の盗難届がこの数ヶ月中に提出される予定だ。「我々が盗まれた作品についてきちんとした照合検査ができた時にだけ、その書類でもって盗難届けを提出するように各責任者に勧告している」と芸術作品設置照合検査委員会 CRDOA。公にして捜査を行うには、少なくとも作品の写真やどこに設置されていたのかなどの具体的な手がかりが必要なのだ。・・・ 

[引用:2019年7月、Le Parisien の記事から]

http://www.leparisien.fr/faits-divers/vol-d-oeuvres-d-art-a-l-elysee-enquete-sur-les-objets-disparus-de-la-republique-06-07-2019-8111262.php?fbclid=IwAR1wX73_fKp5IAFfxZYquaQjDuImgGaYtadjEVQYoarevHWVSJrhG381Opc#xtor=AD-1481423552