アメリカと気候変動
2015年暮のCOP21で、195カ国が賛同して成立した環境問題への取り組みであるパリ協定。今月29日のイタリアでのG7は、7カ国のうちアメリカ、イタリア、フランス、イギリスが新首脳を迎え、改めてパリ協定賛同の確認が行われたが、同意6対保留1で協定実行が足踏み状態に入ったとみられる。
同意の意思を示さなかったのはアメリカのトランプ大統領で、大統領選キャンペーン中から気候変動は嘘であると主張し、アメリカ市民の税金をNATOなどに使わず国内の雇用増大のために石炭採掘を拡大させる、などの公約をしてきたために、トランプ当選直後からパリ協定からのアメリカの脱退が懸念されていた。米大統領は、「パリ協定に対する態度は数日中に決める。Make America Great Again!」とツィートしており、「アメリカはそれでも我々の友達」というイギリスのメイ首相と、「予想していたより希望が持てる」と評価したフランスのマクロン新大統領を横目に、ドイツのメルケル首相は、「私たちがお互いを頼る時代は終わった、というのがこの数日の経験だ」と合意成立の失敗に大いに不満の意を表した。
メルケル首相はミュンヘンで、「もちろんアメリカやイギリスとは友達であり、ロシアとも友好関係を持つことができればと思うが、私たちの未来と運命のために私たち自身で闘わなければならないということを知る必要がある」。地球は一つ、だ。パリ協定は、地球温暖化を抑えるために化石燃料の使用を止めるだけではなく、新エネルギーの開発と発展途上国も含め環境のための新産業振興を掛け合わせた世界規模の取り組みであるため、アメリカ一国の退却で止めるわけにはいかない、ということのようだ。
ブラッセルで・・・
5月24日G7の前にブラッセルで、ヨーロッパ連合とNATO加盟諸国とミーティングしたトランプ米大統領は、「加盟国28カ国のうち24カ国が金を払っておらず、アメリカが肩代わりをしている。金を払わない限りは協力体制は続かない」と演説し、アメリカとカナダおよびヨーロッパ諸国によって結成された軍事同盟の根底(NATO条約第5条。加盟国が襲撃を受けた場合、相互が軍事援護に乗り出す協約)を揺るがせる危惧を抱かせた。
その上、EU指導者らとの会合では、ドイツに関して、「すごく悪い(very bad)」ドイツ人が「アメリカにドイツ車を売りすぎる」と責め立てるなどしている。
これに対しドイツのCDU議員で北大西洋機構関連の外務大臣秘書であるユルゲン・ハルトは、「私たちが見たものは知性でもなくまたアメリカの潜在的な未来でもなく、アメリカの大統領に期待していたものでは全くなかった」と口を極め、「米大統領は、世界を導く力を見せる絶好のチャンスを台無しにした」と述べた。
アメリカで・・・
5月31日、すでにCBSなどがトランプ大統領がパリ協定から離脱することを決定したと伝えているが、まだ本人の発表はない。
「アメリカ、ファースト」は「アメリカ、アローン(孤立)」にならないか? とメディア。
トランプ大統領初の海外遠征から帰国したその日に、MSNBCが世論調査をしているが、「トランプ外交は信頼できるものと言えるか?」という問いに対し、90%以上が「No」と答えている。
パリ協定、今後の行方・・・
ちなみにオバマ政権が設定した目標は、温暖化ガスを2025年までに26%から28%削減することだった。
パリ協定から脱退しないで欲しいと願うアメリカ企業も多い。 ExxonMobil(エクソンモービル。バイオマス生産開発を急速に進めている)、 DuPont、Google、Intel やMicrosoftなどがトランプ政権に圧力をかけているという。
2015年にパリ協定が採択された時に、調印した国々が万が一脱退する場合は4年の猶予が必要であるという約束もさせられている。果たして、トランプ大統領はどういう方法でいち早くパリ協定から撤退するのか、世界中が注目している。
世界で2番目に温暖化ガスを排出する国アメリカがパリ協定から撤退すれば、シリア、ニカラグアに次ぐ3番目の協定外の国となる。
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情報ソース:
http://www.lepoint.fr/monde/angela-merkel-tire-l-amere-lecon-du-g7–29-05-2017-2131069_24.php