エマニュエル・マクロンとマリーヌ・ルペン、正反対の政策

4月23日日曜の初戦はフランスの有権者77.77%が投票。得票率最上位を占めたエマニュエル・マクロン(24.01 %、8 657 326 票獲得)と、2位につけたマリーヌ・ルペン(21.3 %、7 679 493 票獲得)の決選投票が、5月7日来週の日曜に行われる。

http://www.francetvinfo.fr/elections/resultats/

http://www.ouest-france.fr/elections/presidentielle/presidentielle-macron-le-pen-des-programmes-aux-antipodes-comparateur-4962775

エマニュエル・マクロンに対するバッシングやフェイク・ニュースと名誉毀損、マリーヌ・ルペンのロシアからの資金問題やネオ・ナチとの交流などの話が飛び合う中、ここでは、当選後の政策に向けた双方の選挙公約を取りまとめてみる。

【ヨーロッパ】

マリーヌ・ルペンは、ユーロ圏とシェンゲン条約離脱を目指してブラッセルと交渉に入り、交渉樹立の暁には、EU帰属のいかんを問う国民投票を行う。EUとカナダの自由交易CETA にも反対。

エマニュエル・マクロンは、ユーロ圏内の財政や議会を重視し、2017年ドイツの選挙後、EU参加国に民主的な条約樹立を呼びかける。カナダとのCETAに賛同。

【環境】

エマニュエル・マクロンは、「農薬の異常な使用を取り締まる国々の筆頭にフランスを置き、今日規定を大幅に上回っている大気汚染を半減し、原発についてはエネルギー転換法に準拠する」。

マリーヌ・ルペンは、「新エネルギー開発に向けてフランスの企業発展を大々的に促進する。原子力を保持し、安全と近代化を図る。動物保護を国の最優先にする。規制を無視したグローバリゼーションに根ざして近代化された経済交易は摘発する」。

【移民】

マリーヌ・ルペンは、「年間受け入れを1万人に止め、合法的な移民のモラトリアムを認める」とした一方で、「亡命者受け入れを規制し、家族の呼び寄せを規制、違法滞在者の法的手続きを不可能にする。フランス国籍を自動的に取得できる出生地主義を撤廃。国の医療援助も撤廃し、払い戻しがある場合には2年をかける。また、(ムスリム女性の)ベールやブルキニの公共の場での着用を禁止する」という。

マクロンは、ルペンとは反対に、ブルキニやベールの着用を今のままとし、亡命手続きは6か月で可能、としている。

【社会制度】

メリーヌ・ルペンは、年金開始を60歳に引き戻し、社会党が決めた労働法を撤廃へ(マクロンと反対)。二人とも35時間制を保持する。

マクロンは、公務員12万人のポストを削減し、その代わりに警察1万人、教員4から5千人を増加。ルペンは、公務員と病院の人員を増加し、警察2万1000人増強を望んでいる。

【税金】

ルペンは、海外に工場を作り生産したフランス企業に対し、製品に35%を課税。低収入者の税金を10%引き下げ、銀行口座からの徴収(社会党が今年決めた)をやめる。

マクロンはルペンとは反対に、銀行からの直接徴収を一年試験。三年後に住宅税の80%を免除。・・・。

【エネルギーと農業】

マクロンは2025をめどに、 エネルギー生産のうち原発の占める割合を50 %に。ルペンは、原発を維持し、風車エネルギー開発を停止するという。

ルペンは、フランスの畜産にかかる税金TVAを引き下げたい意向だが、マクロンは農業経営者に対するフランスやEUのノルマについては公約をしていない。

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【教育と家族】

ルペンは、一部中学校の廃止と学校に制服を義務付ける。一方マクロンは、教育機関の自治を認め、優先すべき教育範囲に対する教員手当を出し、クラスの数を減らし、生徒の携帯電話の利用を禁止する。

ルペンは、同性の結婚を同伴とし、人工生殖は子供を産めない女性だけに限るとしているが、マクロンは全ての女性に開かれた手段だとしている。

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【インスティチューション】

マクロンは、議員の資格として司法追求をされていないことを条件づけ、議員選出の継続は3回までとする限度を設ける。ルペンは、 憲法に「国を優先(フランスの人や物を優先する)」の条項を付け加えるための国民投票を行う。など。

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My opinion:

マリーヌ・ルペンは、父親のジャン=マリー・ルペンが作った極右政党の党首で、その恐るべき国粋主義的思想をしっかり受け継いでいる。ヨーロッパ離脱派でありながら、ヨーロッパ議員になったマリーヌ・ルペンが、いもしない秘書をでっち上げ(?)その給料や経費を請求してヨーロッパ議会から多額の金額を受け取っていたことが明るみに出たうえ、累積したその金額の大きさがフランス市民を驚かせたのは昨年のことだ。欧州議会は返済を要求し、これを拒否したルペンの欧州議員としての免責特権を取り上げたが、ルペンはそのうちに訴追の運びになることも考えられるという渦中の大統領選である。

そのマリーヌ・ルペンは、今年の3月、ロシアに出向いてプーチンと会談した。ロシアといえば、2016年のアメリカ大統領選のハッキングとトランプ氏の側近4人の多額の金のやり取りに支えられたロシアとの密着関係である。マリーヌ・ルペン自身も2014年、9百万ユーロをロシアの私立銀行から借り出しているのに、その返済については何も伝えられていない(返済したのかどうかもわからないらしい)という、裏が大きく気になるフロンナショナルだ。

http://www.lemonde.fr/election-presidentielle-2017/article/2017/03/24/marine-le-pen-recue-par-vladimir-poutine-a-moscou_5100247_4854003.html

ウクライナ問題でロシアがEUから制裁を受けていることは過去に何度か述べた。ロシア訪問は4回目というマリーヌ・ルペンはウクライナについてはロシアと視点を共にし、ロシアが受けている制裁を取り除きたいと表明している。

イギリスといい、アメリカといい、そしてフランスの極右といい、あっという間に世界の形が崩れていくのをこんな風に目の当たりにするとは思わなかった。得票率8百万人(21%)に近づき、フロンナショナルの党始まって以来という票数を稼いだマリーヌ・ルペンは、これ以上の世界の雪崩現象を食い止めるためにもストップされなければならない。それには、マクロンのみならずフランス国民の全体が、ゴールまで走り通さなければならないのである。(S.H.)