ルーブル美術館、作品の緊急退避
「Le musée du Louvre sera fermé demain vendredi 3 juin afin de procéder à titre préventif à l’évacuation des œuvres situées en zone inondable. (ルーブル美術館は6月3日金曜、洪水の被害を未然に防ぐために浸水危険域にある作品を退避するので、休館いたします)」。きのう2016年6月2日、ルーブル美術館がだした緊急のプレス・コミュニケの内容である。
現在セーヌの増水は止まらず、一時間に1cm程度の増水をしており、6月3日金曜の夜には、6m50cmにまで達する予想だ。
セーヌ川沿岸に位置するルーブル美術館の地下には2万点以上の作品があり、セーヌの氾濫あるいは増水による浸水を恐れ、危険地域に指定されている箇所の作品を退避させざるをえない。セーヌ対岸にあるオルセー美術館は、普段の木曜の夜の開館を急遽取りやめ。木曜の夜から閉館している。ちなみに、記録的な1910年の洪水ではセーヌの増水が8mで、この10年前に建てられたオルセー駅は完全に浸水した。
多くの歴史建造物、美術館がセーヌ川沿いにあるが、一番最近建てられたケ・ブランリー美術館は洪水対策を建築に取り入れ、7mまでの増水には耐えられるとしている。パリ市のイダルゴ市長の発表で、水が引くには1週間から2週間ほどかかるといい、美術館はいつ通常開館へもどれるのかわからない。
中央フランスの洪水からパリ近郊の浸水へ、水の移動の恐ろしさ
セーヌは、パリ南東のコート・ドールにあるスルス・セーヌ(Source-Seine まさに「セーヌ水源」の意)を水源にし、西北へ向かってフォンテーヌブロー、パリ、ルーアンを通り、ノルマンディーのル・アーブルから海へ注ぎ込む。フランスの中央で降った水が集められ、たとえばコート・ドールからの水は半日から一日(水流、水量、その他環境の条件に左右されつつ)をかけてパリへたどり着く。
フランスの4月から5月にかけての長雨が土の中にたまって土を飽和状態にし、流れてきた水や雨を吸い込む力を奪ってしまったため、ある時点から急激な増水が始まったものと見られる。
町の浸水はしたがって、水源に近いモンタルジス (Montargis) とヌムール (Nemours) から始まった。当地では数千人の人々が退避。水道、ガス、電気が切られて、家の中での生活はまったくできないため、救助隊が一戸一戸門を叩いて住民を避難させている。
セーヌ川だけではなく、アルデッシュを水源にフランス中央をくの字に大きく横切るロワール川も同じように増水し、オルレアンを通過する高速道路A10号が浸水した。前から来た水と後ろから来た水にはさまれて、自動車やトラック数百台が高速道路に閉じ込められ、一夜を明かした人も。車は30cmの深さの水で浮いてしまうという。水が出たときの走行に強い陸軍のトラックが、「難破」した車の運転者たちを救助に向かった。
迫るセーヌの増水
水は下流へ向かって流れ、したがって昨日のネムールの災禍は今日のパリの災禍。ヌムールの水は引き始めたが、昨日からパリ南のエソンヌ県で浸水が始まった。パリ市内のセーヌ川増水はまだ油断がならない。
セーヌ沿いを走る郊外電車RERのC線も、数箇所の駅が閉鎖していて、C線の運航は休止された。
(フランス2TV、iteleなどから)
各地の状況、高速道路の状況の詳細はこちらのフランス・ブルーで・・・(仏語)