フランスから―環境とアートのブログ

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アクチュアリティ、フランス国籍

フランス国籍剥奪に関する法律、批准 - 7月のグルノーブルでの大統領演説が発端の、外国人のフランス国籍剥奪案に政府結論。 外国人でフランス国籍を取得しているものがある種の犯罪を犯した場合にフランス国籍を剥奪するという提案をした大統領の演説から2ヵ月半経った今日、細則を決めた国籍抹消法案が過半数可決で国会を通過した。「与党議員が100%国籍抹消法案に賛成投票しなかったのは多少心外だが、法案は多数決で通った。当たり前だ」と移民大臣のエリック・ベソンの言。一方、これに対立する野党側は早速、国務院に再審を求める方針を決めた。 またフランスは、外国人、ヨーロッパ人に限らず、フランス滞在が違法か否かはフランス当局が判断することであり、他国の関与は認められないとし、現在の強制国外追放政策は緩めず続ける態度を明らかにしたという。 ブラッセルのヨーロッパ議会は、ヨーロッパ連合の規約で自由通行が許されるヨーロッパ人がフランスで国外強制追放になること(ここではロムの問題)に遺憾の意を強め、フランスを攻撃する姿勢をみせている。こうしたヨーロッパとフランスとの溝が深まる中で、「こんな国にいるのが恥ずかしい」と発言したのはフランス系ヨーロッパ議員。 国籍剥奪に関する法律の批准、国外追放の強化によって、フランスはヨーロッパの中でも外国人政策が一番厳しい国の一つとなった。 (フランスTV、アルジャズィラTV、スカイ・ニューズ)

もう一つの射殺事件、無罪判決

きのうドラギニャンの控訴院で、ジプシーを射殺した機動隊員に無罪判決が下った。 2008年5月23日、盗みの疑いで捕縛された27歳のジプシーの男が、手錠と右足に足かせをかけられたまま、機動隊の連隊所の高さ4メーター60の窓から跳び降りて逃走しようとしたところを、機動隊員が7発発砲して射殺した事件で、射殺した機動隊員についての判決がきのう下った。 控訴院は、5日にわたる諮問のすえ、ジプシーを殺した機動隊員に無罪判決を下した。この判決で、殺されたジプシーの家族の怒りが爆発。家族関係者20名あまりのジプシー集団が不満を表明して騒ぎ、控訴院から退場させられた。 殺されたジプシーの家族の弁護側は、手かせ足かせで無抵抗の男を射殺した機動隊員の行き過ぎが無罪になったことにより、「殺しのライセンスが認められたことになり、警察権力が法を越えたということになる。まったく司法自体が危ぶまれる判決だ」と発言。一方、大勢の機動隊員が仲間を支援するために控訴院に訪れており、機動隊の上層部は、危険な人物に対峙して自衛をするのは当たり前と、この日控訴院で発言している。(フランスTV)

アクチュアリティ

ブラッセルで欧州議会サミット始まる - 欧州議会サミット第一日目から、中心の話題はフランスのロム強制追放。欧州議会議長のジョゼ=マニュエル・バロゾがフランスを名指して、少数民族虐待を即刻止めるように勧告して演説。サルコジ大統領は、これを欧州議会の関与のしすぎとして受け付けず、ロムの追放は止めない方針を明言した。バロゾ議長とサルコジ大統領の衝突が激化。フランスと欧州連合の亀裂深まる。 サルコジ大統領はまた、国外追放はロムを集中的にしているわけではなく、他の民族、たとえばベトナム人、アフリカ人、イラン人など人種別に国外追放に関する数字を発表したりもし、許可を持たずに滞在している外国人の国外追放がフランスの政策として満遍なく行われていることも強調した。 後日談: -9月19日ルーマニアで、フランスの差別にあい強制追放などで苦しい立場に追いやられているロムを支援するデモが行われた。確かにロムはヨーロッパ人で、ヨーロッパの自由交通からいえばフランス滞在は不法滞在にはならない。「ロム国外追放は、かれらの貧困を嫌って行われている」と、デモ隊がフランスに対して批判。 -9月20日、パリ近郊都市ボビニーの警察署での外国人の滞在許可証などの書類申請窓口の様子が、フランスTV で紹介された。フランスの滞在許可書類書き換え申請や獲得に、肌寒い明け方2時から行列。窓口が処理できる人数は一日500人が平均だが、ボビニーではその3倍の1500人が訪れるという。朝8時、窓口が開くころにはすでに500人が行列を作り、すでに限界人数。また、大勢の人間が待っていても昼休みには窓口は全部閉まってしまい、機能しない。住所変更などの簡単な手続きも、同じ行列に並ばなくてはならないという。外国人にとっては書類獲得は困難を極めるすさまじさだ。 「処理をなるべくスムーズにまた内容によって窓口を分けるなども考えているが、今は許容いっぱい」と警察署。無国境教育協会のボランティアたちは、「とんでもない、こんな状況で書類を処理するなんて、外国人の人権を無視しています」と受け入れのひどさを糾弾した。

アクチュアリティ、国外追放

ロム(ロマ)国外追放と人権侵害 - きょうのTVニュース。この夏8月5日付でフランス内務省が、全国の警察署長宛、違法野営者たちの処置にかんする通達を発行していたことがわかった。通達は一週間に一度、違法野営を強制撤去し追放することとし、「特にロムを」という但し書きで締めくくられている。この通達は、ロムという一つの民族を集中的に差別しており、フランス憲法ならびに人権憲章に謳われる人間の平等に抵触するものとして、早速問題視されている。 移民大臣エリック・ベソンは、「通達はまったく知らなかった。内務省がだした通達は内務省の問題だ」と発言。人権同盟の代表者は、「欧州議会が先週指摘したように、明らかに人種差別をかかげる政府通達です。この通達にしたがってロムを強制追放した地方警察は、人権侵害をしたことになります。国務院にかけて通達は無効にしなくてはなりません」。 エリック・ベソンの言を受けて、社会党議員は、「移民大臣がこの通達を知らないわけはない。政府の人種差別は言語道断」。 サルコジ政府の外国人嫌いと外国人政策への国民の批判はまだまだ続きそうだ。 無国境教育協会サイトに載せられた8月5日付の内務省通達: http://www.educationsansfrontieres.org/article31525.html

アクチュアリティ、ロム

ストラスブール - 欧州議会が、フランス政府のロム(日本語ではロマと訳されている)の強制追放に反対する議員投票を行った。大多数のヨーロッパ議員がフランスの人種差別による強硬手段に怒りを表明。強制追放の即刻中止をフランスに要求して、満場の議員から大拍手が巻き起こった。しかしこれに対し、ルーマニアを訪問中のフランスの移民大臣、エリック・ベソンは「欧州議会のおしつけがましい決断には従わない。追放は続行する」と発言。 議員投票の重大性を認識する欧州議会記者は、「無謀な強制追放の敢行で、欧州のなかのフランスの信頼が大きく揺らいでいる。フランスは欧州議会の意向を尊重すべき」、と述べている。 医療費 - 医療費の払い戻しが目減りし、フランス人の16.5%が歯科や長期の医療など、高価な治療費が必要な病気治療を先送りにしているという事実が判明した。この数字は30年前の4倍にのぼるという。 UMP党会議室捜索 - ロレアルの後継者で億万長者のリリアンヌ・ベタンクールに、レジオン・ドヌール勲章を贈るよう裏工作をした疑いで、UMP党会議室が当局の捜索を受けた。UMP(現在の与党)は、リリアンヌ・ベタンクールから2007年、サルコジの大統領選挙の政治献金を受けたり、ベタンクールの数億に上る脱税に関与したりスイス銀行の預金を見逃したり、この春以来、億万長者と政府のあきれた関係が次々と暴露され疑惑が拡大し続けている。なかでも現労働大臣エリック・ヴァートとその妻が、闇の金銭関係に大きく関与している疑いがもたれている。 ベルサイユ宮殿で村上隆展 -2010年9月14日から、ベルサイユ宮殿で村上隆展が開催される。漫画を主題にキッチュな立体や絵画やビデオなど、作品22点が荘厳なベルサイユ宮殿に展示されるが、この展覧会に際し、フランスでは、インターネットで反対署名運動が展開した。反対署名者の数はなんと10万人にのぼったという。 「クラシック音楽の中でロックを聴いて何が面白いか、ってことですよね。展覧会はナンセンスです」という批評家の意見。元文化大臣のジャン=ジャック・アヤゴンは、「マリー・アントワネットの当時も、新しいものを追い求め続けていたんです。そうした空間に、いまの時代の新しいものを持って来てもまったくおかしくはない」。当の村上隆は、「漫画は現代の風潮です。セザンヌがサント・ヴィクトワール山を描いたように、私も現代を描いています。・・・。今までベルサイユで行われたジェフ・クーンズなどの作品からイメージを得て、作品を展示しました」。フランス人が「カルチャー・ショック」と形容するベルサイユ宮殿を現場にした村上隆の展覧会は、開催前からすでに大きな論争を呼んでいる。

政府の「安全対策」に反対する、全国デモ

国家の安全を口実に、政府が行う外国人追放、特にロム(ヨーロッパを放浪して歩くルーマニア人など)の強制追放や集中的な迫害に対し、きょう9月4日、ジェーン・バーキンなどの歌手、俳優、野党政治家たち、人種差別やサンパピエに関連する何十という協会や市民が全国で集い、反対デモを行った。 ルーマニアの放浪者たちロムが、フランスでの滞在を不法とみなされ、警察にキャンピングカーや私物を没収されて、ショワズィ・ル・ロワ市の体育館に数週間収容されていたが、いよいよ着の身着のままで強制追放となったのを契機に、外国人を嫌って阻害したり一つの民族を集中して迫害しつづける政府の態度を糾弾するデモが、全国規模で大々的に行われた。パリではその数、5万人(当局の発表では1万2千人)、トゥールーズでは1500人から3000人、全国で総勢10万人が反対デモに参加したといわれる。 「ロムといってもルーマニア人に変わりはなく、ルーマニアは欧州連合の一員で、フランス人と同じ立派なヨーロッパ人です。それをフランスから追い出すなんて、とんでもない。人道に悖る」とジョゼ・ボーべがテレビカメラの前で発言。 フランスの外国人嫌いとロム追放は国連が批難するまでになっているが、今回パリに連動してイタリアでも、イタリア人やフランス関係者をまじえたデモ隊がローマのフランス大使館を取り巻き、フランス政府の外国人政策を批難した。(S.H.)

二つの射殺事件(6)、ロムの強制送還

フランスの毎日のニュースから、「放浪者」たち -「ロム」の国外追放、「旅行をする人々」ボルドーで権利主張: 7月中旬、「旅行をする人々」の1人がバリケードを破ったところを機動隊員が射殺するという事件が起き、一気にクローズアップされたこれらの放浪者たちが、事件以来問題視されはじめたことを8月1日のポストに書いた。これら定住を拒否し、流れ歩く放浪者には、「旅行をする人々」とフランス語で規定されている人たち、また「ロム」や「ツィガンヌ」と呼ばれる主にルーマニアやブルガリアなどの旧東欧の人たちが多くを占める放浪者の群れがいる。この事件以来、彼らの権利をめぐって論議が戦わされているが、通称ロムといわれるルーマニアからの放浪者たちが全国各地の一時逗留地から徐々に機動隊によって強制撤去されはじめ、きのうからルーマニアへの強制送還が始まった。大人には300ユーロ、子供には100ユーロがフランス政府から渡され、またフランスに戻ってきても良いという条件付で、着の身着のままでチャーター機に乗せられて第一便がブカレストへ直行した。今月末までに、850人が同様に本国送還されることになっている。ロムは、ヨーロッパを流れ歩いて生活をつないでいるが、本国へ帰っても家も職もなく、またフランスへ戻ることを希望するものも少なくない。 ルーマニアは欧州連合加盟国でもあり、欧州連合の規約にのっとれば加盟国の国民はヨーロッパ内を自由に行き来し、また職業活動をしてもよいことになっているが、こうした自由通行に反した強制送還という今回のフランスの措置は、欧州連合とのあいだに亀裂を起こす恐れがあるといわれている。また、強制送還される人々が再びフランスへ戻ることができることで、政府の強行措置を疑問視する向きも少なくない。 一方、「旅行をする人々」と規定されている人々がボルドーで市長を相手に一時滞在の権利を主張している。放浪者としてフランスの法規定を受けている彼らは、フランス国籍を有し、定住していないが自分たちは浮浪者でも物乞いでもないとメディアに発表して自分らの生き方を誇示した。フランスには「旅行をする人々」のためにキャンピング・カーを泊める土地を用意する都市もあるが、ボルドー市は今回これらの人々に電気もなく水もない不便な土地を提案したため、「人間扱い」を要求する訴えを起こした。 My opinion: 二つの射殺事件から、フランス政府が外国人をどう扱うかに固執し政府はそれを中心にものごとを展開させている事実へ、フランスのニュース自体が切込みを入れていることを知らせたいと思っている。 他から: 欧州連合議員のダニエル・カン=ベンディット(Daniel Cohn-Bendit)は、こうした政府のイロジックかつその場しのぎの方策へ、「現政府は、ドイツなどと比較しても失業状況も説明できないし、例の国籍剥奪も、フランス人が外国人と同じ罪を犯したら、フランス人のフランス国籍も没収ですか?大体、サルコジ政策はここ8年*ものあいだ何もできないどころか国が退廃し続けている。サルコジの責任だ」と怒りを表明している。 翌日の野党社会党のリアクション: 夏休みの社会党集会で議員の一人が、「すべての悪は外からやってくるという、フランス中心主義を超えて極右のフロンナショナル党化してしまった論理を掲げるサルコジ政権を、改めて糾弾する」と表明した。「フランスが退廃しているのは外国人のせいだということを誰もが知っているじゃあないか」と切り返すのは保守党UMPの議員。いずれにしても、2012年の大統領選挙は、社会党が勝ってほしいという世論が8月22日付で大多数の55%を占めるという統計がでており、社会党に限らず野党勢力全体が早くもつぎの大統領選にむけて活気づき始めているというのが現状だ。 強制送還後のロム: チャーター機でブカレストへ着いたロムたちは、ルーマニアでも歓迎されていない。23日付のフランスTV のルポルタージュは、ルーマニアでも差別視されるロムの姿を追った。「彼らがルーマニアの名前を利用して庇護を請うのは、まったく好ましくないわねえ。イメージ悪いわよ」とはルーマニアの首都での通りすがりの女性の意見。「商売をする脇でほったて小屋を建てられたらたまったものじゃない」とは新聞を売るキオスクの男性の意見。現代における「放浪・Nomade」とは、何なのだろう。24日現在もマルセイユ、ヴィルヌーヴダスクなどの町でロムの強制撤去が進んでいる。 ・ダニエル・カン=ベンディットのビデオ(2010年8月18日オンライン) サルコジ、無責任! ・ロム Rom ・旅行をする人々 Gens du voyage ・8年* 2002年、ニコラ・サルコジが、シラク大統領ラファラン内閣のもとで内務大臣に就任。国家警察力を掌握した。

二つの射殺事件(5)、警察襲撃が続く

8月4日に特別機動隊100人を投入する大掛かりな突撃で逮捕された4人は、翌5日、事件に直接関係のないことがわかって釈放された。当局は、彼らの事情聴取で殺された犯人の共犯を突き止めることができたと発表。すぐに解放されたものの、捕まえられた4人の若者の弁護側は、「何も大げさに武装して突撃して連行するほどのことではなく、召喚状で警察に出頭させて証言させることで十分だったはず」と怒りを示している。 同4日の夜から5日の夜にかけて、ほかの3つの町でまた警官へ向けて実弾による発砲事件が発生した。 ブルゴーニュのオーセール市で、警察の車に小銃で発砲する事件が発生。また、パリ近郊のバル・ド・ワーズのビリエ・ル・ベル町で、車を検査していた警察に15人ほどが発砲。もう一箇所はリヨンの近郊、ビルフォンテーヌ町で、警官の自宅に向けて拳銃で発砲。警官の自宅には家族が寝ていたが、三つの発砲事件でいずれもけが人はなかった。 サルコジ演説とそれに引き続くこれ見よがしの内務大臣の指揮による捕り物が、かえって相手の暴力に油を注いだかたちで、即日警察に対する発砲事件があちこちで起き、こんどは自分たちが標的になるのではないかという懸念が警察や機動隊のあいだに広がりつつある。 サルコジ大統領の、ときに非論理的な言動に、一部の国民がたてをついて状況が泥沼化していくのは今に始まったことではない。 政府の刑法修正に絡んだ国籍剥奪に反対する国民が、インターネットで署名運動を始め、多くの反響を集めている。国籍没収に反対の署名数2日で2000人(バカンスで国民の50%が不在のあいだの数字としては大きい)。 一方で、きょうの日刊新聞ル・フィガロの世論調査では、以外に同調者が多く、1. 女性の割礼や重婚(アフリカに多い一夫多妻制)罪に対する刑罰として80%が賛成、2. 警察や機動隊への攻撃に関し70%が国籍剥奪に賛成している。野党社会党書記長はこれについては沈黙状態。のみならず、社会党の中でも50%が賛成しているという。「フランス国籍を簡単に認めて大量の外国人をフランス人にすること自体がおかしいことをむかしから提唱しています」とは、極右フロン・ナショナルのマリー・ルペンの発言だ。国籍没収とともに国籍授与条件も再考されるのか。刑罰枠内での国籍没収案はこの秋、移民大臣から提出されるもようだ。

二つの射殺事件(4)、サルコジ派の巻き返し

8月最後の閣僚総会 - 8月3日、憲法に反するとして非難轟々のサルコジ演説を受けて、移民大臣のエリック・ベソンが、外国人のフランス国籍の没収に関する修正案を提出するむねを発表した。「憲法を変えなくても、国籍関係は条例で修正することができる」とはエリック・ベソンの言。犯罪に対する刑罰に絡んだ国籍没収に関する法律は、与党の思い通りに改定へ法案化する気配だ。 ある社会党野党議員は、「政府は国の安全にかんするサルコジ政策の失敗を、(外国人の事件にふりむけてることで)カモフラージュしようとしている」と糾弾。 実際、グルノーブルに限らず、街中で車が一度に数百台燃やされるといった破壊事件は、クリスマスから正月にかけて、キャトルズジュイエなどといった際にも頻繁に各地で発生しているのだが、そうしたフランス全土にわたる破壊行為や非行の暴走傾向については、サルコジ政府は何ら根本的な対策を示してはいない。 この閣僚総会を最後に、閣僚たちは3週間の夏休みに入る。すべては秋に議論再開。(S.H.) 8月4日明け方、グルノーブルのカジノを襲った強盗団逮捕 - サルコジ大統領の外国人の犯罪に対するフランス国籍没収演説の引き金を引いたグルノーブルの事件で、カジノを襲って仲間の一人が警察に撃ち殺されたのをうらみに、三日連夜市内の60台の車に放火したり機動隊に発砲するなどの危険な行動に出た強盗の一味が、きょう早朝、100人という大人数の武装した機動隊、地域特別警察、刑事警察の混合部隊をによってビルヌーブの自宅アパートに潜伏していたところを逮捕された。逮捕されたのは4人で、うち2人は未成年。残りは19歳。この特別厳重な武装刑事警官隊による突撃逮捕は、サルコジ大統領の意思を受けた内務省の命令によるもので、政府の態度を国民に見せつけようというもの。朝6時の逮捕はテレビカメラの前で行われている。(フランス2TV発表)

二つの射殺事件(3)、サルコジ大統領暴走

8月2日、サルコジ大統領と右派政府の、国家の安全の名の下にエスカレートした犯罪にたいする刑罰の「提案」内容について、早速、憲法をつかさどる国務院や憲法学者から「違憲」の声が上がった。 1. フランス国籍を有している外国人が犯罪を犯した場合、犯罪者のフランス国籍を剥奪するという刑罰は、「フランス憲法は、フランス国籍を有するものはその出自や宗教を問わず、法の名に置いて平等に処せられる」という基本法を無視するするものとして、違憲である。出自が外国人だということでフランス国籍を剥奪することは、フランス市民を二つのカテゴリーに分類してしまうことになる。(差別の元となる。) - 平等である法の前では、フランス人が同じ犯罪を犯した場合、フランス人の国籍も剥奪する(無国籍にする?)ことになるのか。あるいはサルコジ大統領は、憲法改正を要求することになるのか。 2. 未成年が犯罪を犯した場合、その両親が禁固刑の実刑を受けるというサルコジ派の提案に対し、「フランス憲法は罪を犯した当事者のみがその罪の償いをする」ことを明記しているので、これも「違憲」。 - それでは、やはりサルコジ大統領は憲法改正を要求することになるのか。 我田引水的に刑罰を国籍剥奪や移民問題に結びつけ、憲法を飛び越えて法案化へ先走るサルコジ大統領と右派政府には、野党を含めあちこちから「吐き気がする」、「嫌悪すべき大統領演説」といった意見が投げかけられている。 My opinion: すでにほかで、2007年サルコジ大統領は就任早々ナショナル・アイデンティティーを問題に取り上げ、フランス人であることを改めて証明しない限りは、パスポートや身分証明書の更新(双方とも10年ごとに更新をするのが決まり)をしないという通達を出し、このために多くのフランス人が迷惑をこうむっていることを述べた。 両親も祖父母もフランス人で家族もみなフランス人なのに、ただイギリスで生まれたという事実だけでパスポートの更新ができない、という人のブログがあった。母親が妊娠しているときにイギリスにいて、現地で出産したというだけのことらしい。フランスからのパスポートが出ないので困窮したその人は、一度も住んだことがなくまた税金も払ったことのないイギリスへ思い立ってパスポート申請をしたところ、すぐに郵便で送られてきたという。ヨーロッパでは生まれた土地の権利が発生する。その権利に訴えたというわけだが、フランスで税金を支払っていても、生まれた土地ほどの権利の補償にならない、ということを証明するような話しだ。この事例は一つの事例に過ぎないが、サルコジのナショナル・アイデンティティー条例のせいで、更新がややこしくなり、必要書類の捏造が増えたというもっぱらのうわさだ。 フランスは植民地などの歴史的な因果関係で多くの外国人がフランス国籍を有する。また国籍取得権利と国の独立がかみ合わず、フランスで働いて納税していながら、滞在許可証さえ発行されず、国外にも身分証明がないので出られないという人々もいる。人間の不平等を抱えたまま、それを解消するどころかますます激化するサルコジ政権である。(S.H.)

二つの射殺事件(2)

7月30日金曜、ニコラ・サルコジ大統領がグルノーブルに出向して、国家の安全の名の下に、「フランス国籍を持つ外国人が国を守る警察や機動隊、軍隊などに命にかかわる危害を加えた場合、犯罪者のフランス国籍を剥奪する」という演説をし、即日大きな波紋を及ぼしたことを昨日のアクチュアリティで述べた。大統領演説に応えて、8月1日の今日、オルトフー内務大臣は、フランス国籍剥奪が適応される場合を広げるむね提案をした。内務大臣の提案によれば、現行法に加えて、アフリカに多い女性の割礼や人身売買、重大な非行や犯罪を犯した場合も、フランス国籍剥奪の対象とするという。これをさらにUMPの国会議員が敷衍し、「外国人の未成年が重大な罪を犯した場合、その両親を禁固刑処分にする」法案を提出することを決めた。子供の犯罪による両親の拘置は2年未満という。これらの法案は9月早々に国民議会にかけられるもようだ。未成年の非行が学校で問題化した場合も、この法案が適用され、国籍剥奪の対象となるという。 このニュースをきょうのフランス2のTVアナウンサーは、「突発的な災厄がまた一回り大きくなった」と形容した。国務院が管理する現行法が大統領の意思にそぐわないならば法律を変えてしまおうという現政府の強行な態度のみならず、未成年の犯罪責任を両親にとらせ、犯罪を犯してはいない人間を禁固刑にするなどという法案を発表したからだ。野党社会党書記長のマルチーヌ・オーブリィは、「右派政府、狂気の沙汰!フランスを破滅に追い込むことになる」と糾弾。グランド・バカンスがこの論議で一気に熱湯のように沸騰し始めた。(S.H.)

二つの射殺事件

7月17日と18日にフランスの二つの町で二つの事件が起きた。7月17日はグルノーブルの近郊都市ビルヌーヴで、カジノを襲った数人の若い強盗団が警官隊とぶつかり、27歳の強盗の1人が撃ち殺された。逃走した仲間のグループは翌日夜、仕返しに市内に停められていた車60台に火をかけて燃やし、警察と保安機動隊をめがけて拳銃で発砲した。これら若者グループを制圧すべく、機動隊は150人を投入。追撃は明け方5時まで続き、若者5、6人が検挙された。過去、研究文化の都市といわれてきたグルノーブルであるが、近年その周辺都市が犯罪の巣窟化した現状がこの事件でクローズアップされることになった。 もうひとつの事件は、 ロワール・エ・シェール県(県庁所在地はブロワ)のサン・テニャン市で起きた。7月18日、保安機動隊のバリケードを破ろうとした22歳の若者がその場で機動隊員に射殺された。やはり翌日、殺された若者の仲間が仕返しに車5台に火をつけ、公共の建物の入り口を壊したり並木を切り倒したりするなどの暴動に近い行動に出た。事件後事情徴集を受けた殺された若者の兄は、「機動隊のバリケードを破ろうとなどしなかった。私たちはそばを通りかかっただけなのに、発砲されて弟が犠牲になった」と、機動隊の届出とはまったく食い違う陳述をした。この兄弟はいわゆる「旅行を専門とする人々」と呼ばれる放浪者たちで、強盗をしたわけでもなくまた銃器などもまったく所持していなかった。この事件で、ヨーロッパをキャンピングカーで渡り歩く「旅行を専門とする人々」のあり方が問われ始めることになった。…