フランスの美術教育に関わった経験 (その2)
フランスの美術教育に関わった経験 -その2(日本美術家連盟、連盟ニュース2011年11月号掲載) (リンク: 連載その1) 国が違えば政治も違い、社会構造も違い、教育も生活のあり方も違う。フランスは、学年度の開始は9月、翌年の6月が学年末というシステムで、7月8月の2ヵ月の夏休みは年度切り替え時期と重なる。これは大人の社会のシステムに協調したもので、社会人は一般的に、年間11ヵ月仕事をして1ヵ月間の有給休暇があり、休みのピークとなる7月8月は、グランド・バカンスと呼ばれ多くの中小企業が1ヵ月の休みに入る。こうした社会の動きの中の年度の端境で、夏休みの宿題のない子供たちは、1年の6分の1を学校から解放されて生活をする。…
フランスの美術教育にかかわった経験 (その1)
フランスの美術教育にかかわった経験 -その1 (日本美術家連盟、連盟ニュース2012年7月号掲載) フランスでの作家活動は今年で28年になる。教育関係では、高等教育の美術専攻の学生の5年制卒業試験官(D.N.S.E.P.)や特別講義などに招聘されることはあったが、大学より年少の子供たちを相手に、教室に自分の仕事を教材として持ち込んで実際に美術教育を行う機会が訪れるのは、実に2008年以降のごく最近のことである。フランスの小中高校の美術教育もしたがってこのころからようやく身近で見ることができるようになった。この稿では、学校で行われる美術教育の内容に言及するまえに、まず作家活動をする私がこうした教育の現場へ徐々に引き出されていった経緯からはなしをはじめようと思う。芸術家と教育者の出会いの中に、日本の状況とは異なるより豊富な情報が含まれていると思うからである。…