6月14日からルーアン植物公園で私のプロジェクトの本格的な準備が始まる。今週はアトリエでこまごまとした整理をしつつ、いろいろなことが頭に浮かんでいる。

ルーアンには6グループのアーティストが仕事に来るが、みなその内容は独自のもので、設立形態もまたそれぞれ違う。蜂のサイロを持ち込むオリビエ・ダルネは協会を作ってグループ活動をしているし、エシェル・アンコニュは社会問題を扱って町中でインタビューをして回るアーティスト集団で、アルヌ・クィーンズは専用の建築アシスタント・グループを持って仕事をしている。誰一人、アート・マーケットのシステムの中に飲み込まれているアーティストはいない。それぞれにもちろん仕事の一部として画廊と仕事をしているアーティストもいるにしても、それが仕事のメインではないことは確かだ。また、アート・マーケットから自由になることで仕事の内容も自由を勝ち得るということができると思う。

いまさらの話になるけれど、ヨーロッパの国際展にみるようなアートの自由な動向は、アーティストの自由を発展させるほどにしっかりした土台を持つ地方団体の活動が大きな役割を担っていることに気がつかなければならないだろう。ヨーロッパのアート・マーケット、特にフランス近辺諸国のマーケットはアメリカなどと比べものにならないほど規模が小さい。また経済危機にも脆弱でもある。そうした狭いマーケットのそとには活動の可能性を広げることのできるまた別の現場がひろがっている。アーティストがそのことに気づけば、自分の活動のかたちも現場もまたその聴衆も自分で作り上げていくことが可能なのだ。私は1993年の経済危機でいっしょに仕事をしていた画廊がことごとく消えていったときに、周りを見回してようやくこのことに気がついた。このときの覚醒は、今の私の活動形態を作る大本となり、今にいたってもどこかこの観点につながったかたちで世界のアーティストのアートの自由を観察しているような気がする・・・。

今週10日、来年一月の新しいプロジェクトのミーティングをし、13日の日曜にルーアンに戻る。(S.H.)