・ヨーロッパ、財政緊縮政策に反対する数カ国連動デモ:

2012年11月14日、経済危機にあるEUの厳しい緊縮政策へ反発して、マドリッド(スペイン)、リスボン(ポルトガル)、ローマ(イタリア)、アテネ(ギリシャ)の4大都市で大々的なデモが行われた。

スペインは、カディックス、ヴィゴ、ビルバオなどでも大きな集会が開かれ、首都マドリッドでは数万人のデモ隊たちが警官隊と衝突し、催涙弾や石などが飛び交って30人が負傷、80人あまりが逮捕された。スペインは4人に一人が失業。政治に満足しているというのは国民の7%のみ。「銀行が搾取しているんだ」という人々。アパートを銀行に借金のかたに取られ、自宅を没収される直前に思い余って自殺をする人が今年になって4人続出した。現実に、同じような状況で銀行の手に渡った一般市民の宅地の数は50000軒に上るという。…

ギリシャのアテネでは、3ヶ月前にEUの緊縮政策をギリシャ政府が承諾したことへ市民の怒りが爆発し、やはり警官隊と衝突。ギリシャの国民総生産は2008年から比較すると17.7%減。そのあいだに負債は43%の増加をしている。

ポルトガルでは町中ほぼゼネスト状態で、メトロは動かず、国会前を囲んだデモ隊と警察官が激しく衝突した。「数年前は19%だった消費税が今は23%ですからね。国民の購買意欲がめっきり激減しています」。国の経済が低迷しているあいだに、ポルトガルの旧植民地であるブラジルやアンゴラが日進月歩の発達をし、今や国民生産高が10倍に跳ね上がりポルトガル企業を買い取り始めた。「アンゴラは昔の植民地でしたし、その話をするのはほとんどタブーです」。ポルトガル航空がアンゴラに買収されるのだ。

一方ベルギーのブラッセルでもEU議会の前をデモ隊が囲んだが、こちらはほかの国に比べむしろ平和的。(フランス2TV)

欧州緊縮財政政策へ反対集会の様子: http://fr.euronews.com/2012/11/14/journee-europeenne-contre-les-politiques-d-austerite/

・マニュエル・ヴァルス内務大臣、キレル

数日前の国民議会で、野党UMP議員の質疑があり、マニュエル・ヴァルス内務相がいきり立って答弁をし、総立ちになった野党議員たちの野次を浴びた。

新内閣が発足して6か月、事実上の統治は夏休みのあけた9月からで、たった3か月という浅い就任のあいだに、暴動や殺人、シンジケートなど悪の組織拡大は止むことを知らず、この週明け、国会でUMP議員が「この6ヶ月のあいだに、国が安全になるどころか、犯罪数がどんどん増加しているというのは、いったいどういうわけですか」と質疑をした。これに応えたヴァルス内務相は、「人殺しが増えたのは、あんたたちのせいだ! 犯罪が増えたのもあんたたちのせい! 暴動が増えたのもあんたたちのせい! 警察官を減らして安全対策を怠ったのもあんたたち! しかるに、この国にテロが戻ってきたのもあんたたちのせいなんだ!」と大声でやり返した。即刻、UMPは、マニュエル・ヴァルス大臣の罷免を要求。オーランド大統領は罷免のはなしをすぐさま退け、「犯罪や暴力の前で、国が分断してしまってはいけない。犯罪撲滅には、われわれが一丸となって立ち向かうことが必要」と演説。ヴァルス大臣本人も、TVで「テロの話はいきすぎでした」と釈明して、一応事なきを得た。

しかるに、この前日、内務省は、一番犯罪の多いマルセイユに205人の警官を増員して投入し、配備される警官への訓示をしたばかりだった。実際は、ニコラ・サルコジの統治時代に、国が保障をすべき「安全」と「教育」の現場にある警官と教員を、毎年数万人削減し続けた。悪化の一途のフランス財政の紐を締めるという理由からの、公務員削減の一端ということだった。マルセイユはそうして、警察の人員不足に陥り、殺人などの重犯罪が一番多い町になってしまった。つまりは、過去の政権の政策のツケが、今の政府の肩にそのままのしかかっているということができるのである。それをUMP(サルコジの党)議員が、現政府を糾弾するなど、新政府にしてみればもってのほか。

就任早々のマニュエル・ヴァルス大臣が「前政府の犯罪統計の数値は、計算のやり方がおかしく、一部をはしょったり、数字を次の月に先送りして計算したりしており、われわれが行っている犯罪統計の出し方とは違う」と発表して、現在はじき出されている犯罪率の数値が多くなった理由を説明をしたことがあった。

思い返せば、サルコジ時代のオルトフー内務相は、犯罪統計を出さなければならない時期になぜか発表を中止したことがあって、報道が騒ぎ立てたことがあった。サルコジのあとのオーランド、また、ブッシュのあとのオバマにしろ、「前政府のツケ」を払わなければならないほうは、ときどきキレてしまっても仕方がないと思ったりする。(S.H.)