科学者の警告
人間の破壊による野生生物の「壊滅的な衰退」
… BBC Sciences & Nature – September 10, 2020
WWF(世界自然保護基金 World Wide Fund for Nature、略称 WWF)の報告によると、野生生物の個体数がこの50年で3分の2以上減少したと言う。報告書は、この「壊滅的な衰退」が減速する兆候がないとし、自然が今までにない速度で人間によって破壊されていると警告する。
WWFのチーフ、タニア・スティール氏は、私たちが森林を焼き、海を乱獲し、いたるところで自然破壊をしている現在、「野生生物は歯止めなく壊滅へ向かっている」と言う。「私たちは、自分自身の健康や安全とともに、自分らが生存していく家である地球を破壊しているのです。自然は今、私たちに最後のSOSを送っていて、もういくらも時間がない。」
数字は何を示しているか?
WWFの報告書は、世界中の何千もの多種にわたる野生生物の生息地保護に関する科学者たちの観測を投影したものだ。
集計によると、1970年以来、哺乳類、鳥類、両生類、爬虫類、魚類の 2万種が、平均して 68%減少した。
BBCグラフィック(1970年を「1」とした場合のグラフによれば、2016年は、「0.3」)
データを提供しているロンドン動物園協会(ZSL)の保護担当責任者であるアンドリュー・テリー博士は、「この大幅な減少は、明らかに人間活動が自然界に被害をもたらし続けている証拠です。今何もしなければ、間違いなく自然界の動物は減少し続け、絶滅へ追い込まれて、私たちがそれに依って生きている生態系そのものを脅かすことになるでしょう。」
報告書はまた、パンデミックCovid-19が、自然と人間がどのように絡み合っているかを明解に浮き彫りにした、とも言う。生息地を喪失した動物やそれらの商業的利用などを含め、野生動物の減少の背景にあるファクターが、伝染病の出現を導いたと考えられるからだ。
もし今、私たちが緊急に保護対策を取って食料生産や消費の方法を変えれば、私たちは自然動物の生息地破壊や森林破壊を食い止めることができる、という新しい提唱が示唆された。
英国テレビの司会者であり自然主義者のデイビッド・アッテンボロー卿は、「人間活動が前面に出てきた地質時代である人新世は、私たちが自然界とのバランスを取り、私たちの惑星の管理人になる時期かもしれない」と語った。「そうするためには、私たちが食物を生産し、エネルギーを作り出し、海洋を管理し、材料を使用する方法に体系的な転換が必要になるでしょう」。
「しかしそこでは、何よりも展望を変える必要があります。自然はそこにあってくれれば素晴らしいというような単純な考え方から、自然こそが私たちが世界の均衡を回復する上で最大の味方なのだ、という変換ですね。」
… デイビッド卿は、9月13日日曜日の20:00 BSTに英国のBBC Oneで放映される絶滅に関する新しいドキュメンタリーを発表…
自然の喪失を測る方法とは?
地球上の多様な生物の測定は複雑で、その方法も様々だ。しかし、その観測を総合したことによって、生態系が人類の歴史上前例のない速度で破壊されているということが証明された。
報告書には、地域による破壊の度合いについて種の減少や消滅に関する数字で示されている。最大の減少を見たのは熱帯地域である。ラテンアメリカとカリブ海諸国は、実に 94%減少して世界最悪で、爬虫類、両生類、鳥が主に消滅していった。
「報告書は、現状の全体像把握によって、この傾向を逆転する行動をすぐにも始める必要性を示唆していいます」と、ZSLのルイーズ・マクレー氏。
「流れを変えるには、食品の生産と消費の方法を変革し、食品廃棄物の削減や環境への影響の少ない食品の摂取の必要」を示唆する報告書もある(雑誌 Natures)。UCLのジョージナ・メイス教授は、「自然保護行動だけでは生物多様性損失の下降曲線を食い止めるのに不十分。供給側の農業経営と需要側の消費者間の食料供給システムが特に重要であり、それらをひっくるめたセクターの変革行動が必要。」
自然消滅について、他の対策があるのだろうか?
生物絶滅のデータは、国際自然保護連合(International Union for Conservation of Nature; IUCN)によって編集され、10万種以上の動植物が検証され、うち 3万2千種以上が絶滅の危機に瀕していることがわかった。
科学者の政府間パネルは2019年、100万種(動植物 50万種、及び、昆虫 50万種)が数十年以内に絶滅の危機に瀕しているとも結論付けている。
… WWFレポートは、来年の首脳会談の準備のために今後数週間および数か月に公開される自然の状態に関する多くの検証資料の一つ。国連は来週火曜日、世界の自然の状態に関する最新の評価をする予定。
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【参考】
https://livingplanet.panda.org WWF official
Humans ‘threaten 1m species with extinction’
https://www.cnn.com/2020/09/09/world/wwf-report-species-decline-climate-scn-intl-scli/index.html
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My opinion: 例えば、ここでいう食料供給の大改革は、それがなされたとしたら、日本の食文化をどのように変化させるだろうか? 夏になれば絶滅危惧種と言われるうなぎを食べる。自分は食べもしないのに鯨漁がなくなるのはおかしい、などという。赤身のマグロも、実は1990年代から激減していてヨーロッパでは狩漁を禁止したほどだったが、未だに日本人はマグロの刺身を食べ続けている。食は文化、文化は温存すべき? 本当に? 絶滅危惧種を食べ続ける日本人の多くは、日本の伝統へ言及してやまないが、自然の恵みを軸に生まれた伝統や文化が自然の壊滅の中で壊滅していって当然ではないか。文化が人によって引き継がれていく中で、文化は変容せずにはおかないということを忘れてはいないか。伝統(習慣、というべきか)を意志で変えればまた新しい文化が生まれる。人間は創造せずにはおかないのだから。それも生きるべき家である地球があってのことだ。(S.H.)