先のブログを書き終わって数時間も経たない22日、The LANCETから、クロロキンとヒドロキシクロロキンの実用について数カ国レベルで大々的に検証したという報告書が発表され、フランスのみならず、アメリカを驚かせた。マルセイユの伝染病大学病院で数千ケースに処方し良好な結果を出したというのと、アメリカのトランプ大統領が服用しているという以外に、統計的な検証はまだなされていない、という報道直後のこの報告書は、「クロロキンとヒドロキシクロロキンは病院の患者に服用させても効果はなく、それどころか死亡率を高めた。… よって、私たちは、これらの薬品は何の効用もないと宣言する」というものだ。当然、論争の嵐に火を注いで、フランスのメディアは数日これ一色になった。

時間をおかず即座に、また、その症例も有無を言わせないような世界的スケールの集計で出された世界有数の医学書の中の報告書。ランセットによると、Mandeep Mehraチームが、6大陸の671の病院で構成される国際レジストリからの検証済みデータを使用して、96032人の入院患者(平均年齢53・8歳、女性46・3%)の、クロロキンまたはヒドロキシクロロキンの影響について言及した最大の研究報告となるという。投与は、クロロキンのみ、クロロキンと抗生物質を併用、ヒドロキシクロロキンのみ、ヒドロキシクロロキンと抗生剤を併用、という4つの処方をした患者と、投与しなかった患者群とを比較したところ、投与した患者たちは多くが心臓疾患を招き、院内死亡率を増加させたという。

死亡率増加については、アメリカのCNNは同日、「ランセットの報告書では、15000人の入院患者を対象にして検証したところ、投薬された患者は、⑴ 33 から45%が死亡したもよう ⑵ 2.4倍から5倍の患者が不整脈を訴えた。病院内での検証に限られてはいるが、この薬は死ぬリスクが大きいようだ」と報道している。(ビデオ)

投薬の集計は、世界中のこれらの医療施設が同じ状況で、同じ薬の割合を服用させて初めてほぼ精密な結果が出るというものだが、果たしてそうした基本的なことが守られた統計なのだろうか。果たしてこれは事実なのだろうか。

報告書に反応してフランスのTV BFMは、元文化大臣で医師のフィリップ・ドゥスト=ブラズィ氏を招いてインタビューをした。

Q: この報告書、だれが信じるか、ということなんですけど。

PDB: クロロキンの利用がどうも明らかではないところでの検証ですね。問題はもっと深くて、ランセットがこの報告書を出したというところにあるでしょう。… 現代の製薬産業はとてつもなく大きくなり、20年前には想像できなかったようなことが起こっています。製薬会社の専門家たちが集まって秘密会議をして世界の薬品を牛耳っている。例えば、ランセットのような著名な医学雑誌に、報告書を載せることに圧力をかけています。効く薬がこれだというようなことを発表すると翌日にはその製薬会社の株が跳ね上がって40億になったり、反対に急落したりする現実があって、ランセットの責任者は、これは犯罪だ、と言っているくらいです。この間も、ワクチンがもうすぐできるという報告書がランセットに出ただけで、30%も株が上がった。こういう強大な圧力には政府が厳重に判断し対処していかなければなりません。

もう一回フランスのcovid 19に関する死亡統計を見てみると、全国の病院での死亡率は 17.6%ですが、マルセイユのIHU伝染病大学病院では、2.5%でしかありません。

Q: でも、マルセイユは入院患者だけにクロロキン投薬したわけではないですね。

PDB: そうです。伝染病への対処そのものが大きな効力を発揮しています。まず、大量に検査をする。そして陽性の人がいたらすぐに隔離することで感染拡大を防ぐ。薬の投与は、入院以前に開始しています。ほかでは、陽性が見つかっても家に閉じこもっているように言ったので、家族に感染した。これは、これからの新しい伝染病への対処として見習わなければならないでしょう。

Q: この報告書のすぐ後、フランス健康相がクロロキンについて再考するように省内に通達していますが。

PDB: (3月に健康省が出した)政令は、まさに病院で重篤になった患者にしかクロロキンやヒドロキシクロロキンを投与してはいけない、他は使用してはいけない、という政令でした。呼吸困難の人に投与したら死ぬのは当然とも言えます。こうした薬の作用は昔からわかっていたこと…。

 (注記:クロロキン、ヒドロキシクロロキンは格安な薬で世界で広範に利用されている。)

・論争 フィリップ・ドゥスト=ブラズィ インタビューBFMTV


・BFMTV 部分

・マルセイユ、ディディエ・ラウト医師

・マルセイユ伝染病大学病院

・CNN 2020/5/22

参考:
LANCET 2020年5月22日、「ヒドロキシクロロキン、covid 19には無効…」https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)31174-0/fulltext

WHO、ヒドロキシクロロキンの実験を一時停止するよう要請。 http://www.leparisien.fr/amp/societe/coronavirus-l-oms-suspend-temporairement-tous-ses-essais-avec-l-hydroxychloroquine-25-05-2020-8323215.php?fbclid=IwAR2AND3ogMgNJ_87qyrbaN7z0sSILGYdXVwo1VnzeZCgVWbJpxl1Plid4Zs

LANCET、「コロナウィルスに対するクロロキンの効用、2003」https://www.thelancet.com/journals/laninf/article/PIIS1473-3099(03)00806-5/fulltext?fbclid=IwAR06_vvW7EVGvhTBTbaWSfAd-hRDqqz9SQ_KdBu6PJJdttOCaniIAduMNSk