「悲惨」、「苦渋」、「前代未聞」… 実りのない二週間の交渉の後のCOP25は失敗
マドリッドにおける二週間にわたる首脳間交渉の後、COP25は終了した。
国連事務総長アントニオ・グテーレスは12月15日日曜日のプレスリリースで、 「COP25の結果に失望した。国際社会は、気候危機に対応す積極的な覇気を示す重要な機会を逸したのです」と苦言した。実際、この国際会議は失敗で終わったと言わなければならない。
主要な汚染大国からの具体的なコミットメントなし
会議の本題では、地球温暖化を食い止めるというパリ協定(2015年締結)で定めた目的と現状のギャップを縮めるために、「緊急行動」を求めていたのであるが、主要なCO2排出国のほとんどが具体的な方策を出しておらず、 「進歩が期待された主要な国は期待に応えられなかった」とパリ協定締結に関わったローレンス・トゥビアナは評価した。
アメリカは、ドナルド・トランプの意向で2020年に協定を離脱する方針で、中国とインドは協定を保持しつつも実行策を持たず、発展途上国へ財政支援をするはずの先進国の動向を伺っているような状況だ。
フランスの大臣、参画せず
環境問題の主導的な立場にあると自認するフランスは、なんと、COP25会議中フランスの大臣は不在だった。「フランスは、首相と環境連帯移行大臣がちょっと顔を出しただけだで、期待されていた強力な役割を果たさなかった」と非難の声が上がっている。 ある活動家は、「エマニュエル・マクロン大統領は気候が私たちの未来の重要課題であると言い続けている一方で、今年の最も重要な国際交渉が行われているというのに政府から誰も参画しないというのは二枚舌もいいところ」と強烈に批判した。
それでも環境連帯移行省は日曜のコミュニケで、COP25の結果を憂いてみせた。「協定を前進させる合意を少しは得られたが、気候変動へ野心的な覇気が欠如していた。気候緊急事態と市民の期待を鑑みるに、フランスは他の国がそれぞれのコミットメントを十分に施行していないことを残念に思う」と環境連帯移行省は、「交渉期間中、フランスは前進を呼びかけ決して後戻りをしないよう働きかけていた」ことを強調しながら表明している、という。
落胆する市民社会
しかし、環境問題が重要である証拠のこのCOP25はまた、交渉者の後押しを目的に、特に多数の市民代表の強大な存在によっても特徴付けられた。 エコロジスト、科学者、先住民、NGOなどの存在がそうである。チャドのムボロロを代表するヒンズー人のイマル・イブラヒムは、「私は本当にがっかりしました。私たちはここで私たちの社会の問題を議論して解決策を得、国に持って帰る、という希望を持ってここにきたのに。サヘル全域の人々はすでに気候変動の影響を受けています。雨季は洪水や干ばつで安定せず、人々は食べるものがありません」と、マドリッド支局フランスインター特派員のマイクの前で嘆いた。
「野心的なCOPのはずだったが、何の野心も見られなかった」と、特に海面上昇の危機にさらされている44の島国を代表するグループのチーフであるカルロス・フュラーが慨嘆した。「これは実に悲惨、かつ恐ろしい結果です。私が今まで見た最悪のものだ」と、パワー・シフト・アフリカのディレクター、モハメド・アドー。
AFPの環境ジャーナリストであるパトリック・ギャレイは、「COP25に設定されていた目的はかなり控えめで、4年前の約束(パリ協定)を各国に確認させることだった。しかし、彼らはその約束の結果を検証をすることすらできず、さらに野心的に前進するなど及びもしなかった。これを見ると、パリ協定は必要ではないということではなくて、何か有効なことを実行できるより良い指導者を選ぶべく投票しなければならないということだ」とツィートしている。
若い活動家のグレタ・トゥンベリも土曜日から日曜日の夜にかけて次のように表明した。「COP25はどうやら崩壊している様子。科学は明快なのに無視されています。何が起こっても私たちはあきらめません。始まったばかりですから」。
国々は次のCOPに向けた目標修正が必要
気候緊急事態である証はもうすでに枚挙にいとまがない。増加する気候災害(ベネチア「アクアアルタ」がその一例la spectaculaire ‘acqua alta’ de Venise)、温暖化に見る気候変動(la décennie la plus chaude de tous les temps)、我々の地球の危機状態を警告する科学者たちの膨大な報告書(lire ce dernier rapport du GIEC)など。路上ではグレタ・トゥンべリによって開始された#FridaysForFuture運動のもと、数千人の若者たちが集結した。
しかしながらこの市民や科学者たちの圧力はこのCOP25に集まったパリ協定の調印国200カ国へ何の理念も与えていない。緊急の行動が望まれているのに、である。現在のCO2排出率では、気温は21世紀の終わりに4℃から5℃上昇する可能性がある。たとえ協定の約束が守られたにせよ、気温上昇が3℃を超えるという。国々は今後一年で目標を修正しなければならない。来年のグラスゴーにおけるCOP26に向けた温暖化ガス削減の新しい計画を提出してもらわなければならないのである。
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・参照記事:フランス・アンテール(ラジオ)電子版
・COPとは:https://ja.wikipedia.org/wiki/気候変動枠組条約#締約国会議(COP)
・京都議定書とは:地球温暖化防止京都会議、COP3 https://ja.wikipedia.org/wiki/京都議定書
・OPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、COP24(2018年クラクフ)で世紀末の目標である気温上昇を1.5℃に抑えることが難しくなっていると報告。https://ja.wikipedia.org/wiki/気候変動に関する政府間パネル
・パリ協定から脱退あるいは参加しない4か国:アメリカ合衆国、ロシア、クエート、サウジ・アラビア
・「ラップランドでは気温上昇で野生のトナカイが食料を見つけられなくなった」
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COP25と日本:
・COP25で、小泉演説はなぜ批判されたのか? 「化石賞」獲得! http://ieei.or.jp/2019/12/takeuchi191213_01/
・COP25 小泉環境相が演説 各国から落胆の声も https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191212/k10012211791000.html
・COP25閉幕 正念場迎えた日本の環境政策 https://www.worldtimes.co.jp/politics/100985.html
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My opinion: トランプ氏が大統領に選ばれた2016年から2017年にかけて世界のリーダー国(G7)の半数以上が首脳が代替わりし、気候変動へ真っ先に背を向けたトランプ氏がパリ協定を一挙に消極的なものにしたのはこのブログでもその年に言及した。フランスの、手の裏を返す政府の無関心は、パリ協定へこぎつけた背景を持つ国として実に恥ずかしい。実際、マクロン政権は国内でも問題だらけ。黄色いベスト運動も1年以上続き、この数週間は、やる必要のない年金制度改革へ反対する市民のゼネストでパリが混乱したまま、クリスマスは少し休戦はあるものの、混乱した新年を迎えそうだ。COPで、世界が一丸となって地球を救うという目標があっという間に見失われたいま、本物のリーダーシップが求められる、とこの記事を出したフランス・アンテールもいう。市民運動がこれだけ大きいのに、政府は厚い壁の向こうで権力に乗っかって安穏としている、という構図が世界に蔓延しているのは、一体どういうことか。(S.H.)