【ケンブリッジ・アナリティカ、アメリカのフェイスブック利用の有権者5千万人の個人情報を無断利用、大統領選挙で心理誘導を行う】

2016年トランプ陣営が大統領選のキャンペーン活動に利用したケンブリッジ・アナリティカ(トランプは600万ドルを費やしたという)が内部告発され、一気にその中身が暴露されはじめている。

告発したのはケンブリッジ・アナリティカ(以後CA)で現場の仕事をしていたクリストファー・ワイリー。「FBで一人の人を拾えばその人の数百人の友達の情報へも一挙に到達できる。そうして手っ取り早く何百万人もの個人情報が入手できる。一人一人の個人情報を分析して好き嫌いなどの傾向を見分け、こちらから異なる情報を作ってあちこちにばらまくと、その人たちがどういう風に反応するか行動様式がつかめる。FB上では一つの情報が見える人と見えない人がいるから、ありえないニュースを作って適宜な方向へ流せばいい…。人々は自分にされていることを知らないから、抑圧や押しつけより質が悪い。人間の資質を尊重しない情報戦争は(情報が多い方が勝つわけで)、基本的に民主主義には結びつかない」とワイリー。

告発により、選挙戦に利用されたマインド・トリック(心理操作)の裏の、膨大な個人情報漏洩と無断使用。そうして分析され作り出された人心誘導のための過剰情報、フェイク・ニュース、ダート・トリックが犯罪の形として浮かび上がっている。

*ケンブリッジ・アナリティカ(CA):

CAは、データマイニング(情報システムに蓄積した膨大なデータの集合をコンピュータで解析し、これまで知られていなかった規則性や傾向などの有用な知見を得ること)、データブローカレッジ(データの仲介や斡旋)、及びデータ分析をし、戦略的コミュニケーションを組み立て、あちこちの選挙戦略に組み込むことを目的とした私企業。大元は英国のSCLグループ(軍事戦略機構)が2013年、アメリカの政治参画を目指して創設し、翌2014年には、米国の44の選挙に働きかけた。同社は、米国保守派のヘッジファンドマネージャーのロバート・マーサーによる支援を受け、オフィスは、ロンドン、ニューヨーク、ワシントンDCにある。

2015年当初は、テッド・クルーズの大統領選挙のために活動していたデータ分析会社だったが、 2016年、ドナルド・トランプの大統領選挙運動と英国の欧州連合(EU)離脱運動「Leave.EU」に参画。これらのキャンペーンにおけるCAの役割は物議を醸し出し、両国の刑事捜査の対象となっている。

トランプ政権の前政治戦略顧問スティーブ・バノンはトランプ・キャンペーン中、CAの副社長をしていた。

2018年3月17日、The New York Times紙とThe Observer紙は、外部の研究者(ケンブリッジ大学心理・神経科学アレクザンドル・コガン)が学術目的で収集しているFacebookの個人情報を、情報所持者の許可なしにCAが使用したと発表した。これに対応してFacebookは、CAにFB上の広告を禁止したが、The Guardian紙は、この個人情報セキュリティ違反について、FBは2年前から知っていたにもかかわらずユーザーを保護するために何もしなかったと報告し、FBの責任に言及している。

 

ケンブリッジ・アナリティカCEOのニックス、「Brexitとアメリカ大統領選に影響を及ぼした後、オーストラリアとインドの選挙へ関わる方針か。解析へ。」 Le Pointの電子版から

 

 フェイスブックユーザー個人情報のハイジャックの手口

もともとは、ケンブリッジの研究者コズィンスキの同僚アレクサンドル・コガン(Aleksandr Kogan)が、研究目的でフェイスブックユーザーの情報を集めるためにFacebookアプリとしてパーソナリティ・クイズ(性格テスト)を開発したものを、2014年ごろケンブリッジ・アナリティカの代表アレクサンダー・ニックスが私的なビジネスに転用できると直感して契約をし、アマゾンなどに広告を掲載していったものだった。

アプリは、性格テストの結果を記録し、FBアカウントからデータを収拾、さらに重要なのはテストを実行したユーザーの友達のデータも抽出したことだ。ユーザーの個人情報とテストの結果はセットで記録され、そのパターンを分析、他のユーザーがどういう結果を出すか予測するアルゴリズムを構築するために利用された。彼らの友人たちのプロフィールは、パターンから導き出した型をテストするフィールドとなり、アルゴリズムを政治的に利用可能なものにするリソースとなった。

 

個人情報のハイジャック法 The Gardianから

 

 1. 約3万2千人のアメリカ人有権者(シーダー/種を播く人)がパーソナリティ・クイズ(性格テスト)/「政治テスト」のために2ドルから5ドルを支払われるが、それには自分のフェイスブック・アカウントにログインしなければならない。

2. アプリは、FBでテストを実行するユーザーの通常の「いいね」も記録し、同時に個人情報を収拾する。そればかりではなく、友達のデータも集め、こうして5000万人に及ぶFBデータを吸い出した。

3. パーソナリティ・クイズ(性格テスト)の結果は、「いいね」などのユーザーのFB上の情報と一緒に記録され、心理パターンを分析するのに利用される。

4. 投票者記録などの他の情報とともにデータを組み込んだアルゴリズムは、一人につき数百の異なる分析角度を持った優秀な記録の総体を作り出す。(*最初は11の州の200万人が対象だった)これによって、一人一人が自らのデータを基に周到に作り出された広告のターゲットとなる

*「最初は11の州の200万人が対象だった」:The Gardianはここでは、2016年アメリカ大統領選挙の際のCAの活動に言及。アーカンサス、コロラド、フロリダ、アイオワ、ノース・キャロライナ、オレゴンなど、保革拮抗の州を標的としたらしい。問題は、CAがアメリカの選挙以外に、イギリスの脱EU国民投票、スリランカの選挙など世界に関与しているとみられることだ。

 

1000人の「シーダー」の最初のテストから、研究者はこうして16万人のプロフィール、つまり1人のテストから約160人の情報を獲得した。 結局、2ドルを払われた数十万人が、膨大な数の米国の有権者のデータ収拾の鍵となったのだ。

当初CAのデータ収集の規模が大きすぎたため、FBはアプリが個人情報を収集する機能を自動的に停止させるほどだったが、コガンは技術者に話をして制限を解除し、1日、2日で作業を再開したと友人に語っている。数ヶ月でコガンとCAは、何百万人もの米国の有権者のデータベースを保持し、それらの人々の政治的見識と性格的特徴を特定することで情報を検閲する独自のアルゴリズムを形成していた。彼らはそこから、誰を標的にしてそれらの人たちにアピールするメッセージを作り上げるかを決めた。これが「マイクロターゲティング」と呼ばれる政治的なアプローチである。

当初FBは、FBの中だけのインターアクションを増幅する目的で、アプリを許可していたが、データを売買したり他の目的に利用することは基本的にCAのビジネスも含めて禁止していた。FBがユーザーの個人情報保護を怠ったとすれば、深刻な問題である。FBは先週金曜日、CAとコガンの活動をペンディングした。

 

マイクロターゲティング、「いいね」と情報捏造

こうして、FB上の何百万人ものデータの海の中で使用されているアルゴリズムは、性的指向、人種、性別、さらには知性や幼児期のトラウマに関する個人データを標的にしている。現実離れした内容が多いのが特徴で、その中から閲覧中のユーザーが「いいね」をするものを拾い上げる。数十人が「いいね」をすると、すでに、どの党に投票するか強力な示唆となるという。投票者の性別やそのパートナーが男性か女性か、子供時代に両親と一緒に過ごしたかどうか、虐待された脆弱な子供だったかまで明らかにできるというが、こうした内容は、個人的なメッセージや投稿、ステータスの更新や写真などといったFBが保持する他の情報を掘り下げる必要もなく行うことができるそうだ。

子供時代の経験をもとにした性格構造のほか、作られる情報は多義にわたり、人種やジェンダー、銃を持つ権利、白人至上主義や同性愛など、社会問題をテーマにしているものが多い。心理的な性質を把握されたユーザーに「囁いて」、その見方を変え行動を誘導してしまうプロパガンダは、事実を捻じ曲げて行われた。

チャンネル4が収録したCA代表のインタビューは、トランプ選挙戦で対立候補のヒラリー・クリントンを汚す広告や標語を自分らが作って大量に流したことを伝えている。標語のように繰り返された「国の安全を危険に陥れるクリントン」、ヒラリー・クリントンの顔に大きなバツを黒い墨で入れたポスター写真、「Defeat Crooked Hillary(不正のヒラリーを打ち破れ)」、不正 Crookedのooは、手錠の形にしたイメージを送り込む、などなど。流した情報は二時間後には消滅させてしまい、CA代表たちは、「証拠は残っていない」と笑った。

また一方、ロシアの石油会社ルクオイルがCAの活動に目をつけ、アメリカの選挙へ関心を広げていた。

「なぜロシアの会社がアメリカ選挙戦に関心があるのか不思議だったので、ニックス(CAのCEO)に問いただした。 […]
ロシア、Facebook、トランプ、マーサー、バノン、イギリスのBrexit。 これらの糸はすべて、ケンブリッジ・アナリティカを介している。 ミューラー(2016年大統領選挙にロシアが関与したため任命された特別捜査官)が起訴したものはその一部だが、CAのプロセスの一部について初めて研究報告を発表したスイスのデータ専門家ポール=オリビエ・ドエイ(Paul Olivier Dehaye)が、Facebookは設計上侵害されやすいことがますます明らかになってきていると述べている。トランプ陣営とロシアの間に結託の証拠があるとすれば、それはFB上のデータの流れにある」とワイリーは言う。

CAの情報担当チーフ、アレックス・テイラー(Alex Tayler)は別の取材で、トランプ選挙戦のエレクトラル・カレッジの動向を決定的にした責任はCAの心理分析にある、と述べた。国民全体の投票でトランプはクリントンより300万票も少なかったが、結果を左右するエレクトラク・カレッジの投票は圧倒的にトランプ側だったのを思い出そう。CAの分析はそこまで標的を絞ることができるということだろう。

イギリスではCAが2016年春にナイジェル・ファラジ(極右)のLeave.EUキャンペーンとチームを組みソイシャル・ネットワーク上で手を貸したことを疑われ、現在ニックス社長の事情聴取が行われている。イギリス議会はCAの海外での活動についても十分な説明を求めているという。

選挙から選挙へわたりあるくケンブリッジ・アナリティカは一つの選挙に行った自分の活動記録となるメールや広告の類を一切消滅させた。したがって2016年の選挙戦の証拠は何もないと主張するが、そうしたCAに反し、どうやらすべてのコピーを持っているらしいワイリーの反駁のみが、捜査を動かしてくれるもののようだ。

(ニュース・ソース:The Gardian、The Observer、Channel 4、CNN News、MSNBCなどの取りまとめ)

 

My opinion: アメリカの情報の理解は難しいがあえてヨーロッパ、特にイギリスの脱EUの国民投票に関与したというケンブリッジ・アナリティカの話が浮上したので追求する気になった。ケンブリッジの名の通り、ケンブリッジ大学心理学の研究を流用したイギリス発の会社だ。FBユーザーの人口の多さとその構造の弱さへつけ込んだ個人情報の流用(違法)で、心理分析をし(学術利用を口実に)、それに即して人の認識を左右する情報を大量に流し(これも違法か)、人心を誘導する(これが怖い)というこの機関は、成立して間もないが、選挙から選挙へ、2016年以前からスリランカの選挙やアメリカの地方選挙への関与の話が引用されている。

FBで似たようなテストが沢山出現し、自分のFBアカウントにログインさせられる体験を持っている人は少なくない。自分のアカウントにはどっちみち大した情報など入れていない、と思っている人も大半だろう。しかし現実にはいいねくらいのわずかな反応の集積がアルゴリズムを作り、大量データの中で分析や誘導に利用されていることが実は重要だという、おそらく大統領選などの重要な選挙戦への関与だからこそ明らかにされたという今日の話。

ネットで同じ広告ばかりを見せられる、一回見た同じ記事の方向ばかりのサイトやツィートが出てくるなどは日常茶飯事になっていて、おそらくこうしたことはすでに過去たくさん行われている(CA代表やスティーブ・バノンがそう言っているように)に違いない。投票しても変わらない、どっちみち同じ、棄権が一番、などのネガティブな煽りニュースは「誰」が流しているのか、日本の選挙もいつからかCAのような会社に乗っ取られているかもしれない。(S.H.)

CAは5000万人の個人情報取得に100万ドルを費やした

 

ケンブリッジ・アナリティカ、トランプのデータ会社、極秘中の極秘


Channel 4 News
le 20 mars 2018
An investigation by Channel 4 News has revealed how Cambridge Analytica claims it ran ‘all’ of President Trump’s digital campaign – and may have broken election law. Executives were secretly filmed saying they leave ‘no paper trail’.

 

Cambridge Analytica Uncovered: Secret filming reveals election tricks

https://www.youtube.com/c/channel4news

https://www.theguardian.com/news/2018/mar/17/data-war-whistleblower-christopher-wylie-faceook-nix-bannon-trump?CMP=share_btn_link

https://www.theguardian.com/technology/2018/mar/17/facebook-cambridge-analytica-kogan-data-algorithm

https://edition.cnn.com/2018/03/20/politics/alexander-nix-cambridge-analytica/index.html

http://www.businessinsider.fr/us/cambridge-analytica-has-contradicted-itself-on-its-work-for-leaveeu-2018-3