フランス大統領選挙は2012年4月22日(日)に行われ、79.47%の高い投票率を記録して首位に社会党候補フランソワ・オーランド、二番目に保守現職大統領ニコラ・サルコジが占め、17.9%を獲得した極右政党フロンナショナルのマリーヌ・ルペンが第三位につけるという結果がでた。

フランソワ・オーランドとニコラ・サルコジの決選投票は、5月6日(日)に予定されている。…

すでに開票発表直後、ユーロップ・エコロジーのエヴァ・ジョリィおよび、極左の元社会党ジャン=リュック・メランションは、それぞれのシンパに対して、サルコジ打倒にむけた社会党候補への投票を積極的に促した。

決戦投票にかんする予想はさまざまだ。ちなみに4月22日以前の世論調査CSAでは、オーランドが52から56%、サルコジが46から43%でオーランド優勢という予想であったが、第一期選22日の結果を鑑み単純計算をして予想を立てると、社会党フランソワ・オーランドの28.63%に、左派4候補の獲得票を加えたポイントは43.75%。一方、ニコラ・サルコジの27.18%に、極右フロンナショナルとデュポン=エニャンおよびシュミナードの票を加えると46.87%となるのだが、9.13%を獲得してまだオーランドにつくかサルコジにつくか表明をしていないバイルーの票、ならびにフロンナショナルの中での反サルコジ派の票の動きで、右にも左にも転ぶ可能性が十分にある。

極右政党フロンナショナルのマリーヌ・ルペンはフロンナショナルの歴史上最高の票を獲得したが、ヨーロッパ諸国はフランスの極右傾倒へ大きな懸念を示した。ドイツのアンゲラ・メルケルは「非常に気がかりな形勢」とし、またベルリンの一般市民も「国粋主義がはびこるのは怖いですよね」。リュクサンブールの欧州議員は、「シェンゲン条約から脱退するといってみたり、移民を独自の政策で締め出すと言ってみたり、ヨーロッパ連合との足並みを無視するのは困りますよ」と、極右政党の選挙公約を痛烈批判した。一方イタリアの一般市民の反応は、「こうした経済恐慌で国が危うい時期にプロテクショニズムが蔓延していくのは当たり前だと思いますね」。

フランソワ・オーランドとニコラ・サルコジの一騎打ちテレビ討論は、5月4日に行われる。(フランス2TV)

My opinion: 今回の大統領選挙の特色は大まかにいうと保守中道サルコジと革新中道オーランドが中心の大きな塊と、次の勢力として極右政党のルペンと極左政党のメランションの対決が際立った。極右政党のルペンと極左政党のメランションという第二勢力の二極対立は、双方同じフランスの中流階級を対象とし経済恐慌で翻弄されやすい社会層にどれだけ訴えしっかりと心をつかんでいくかがキャンペーンの中軸におかれ、歯に布を着せないメランションがルペンの票を突き崩して追い上げ、投票日直前には双方が拮抗するところまでになっていた。つまり、メランションの健闘によって、脆弱な社会層には「極右」「極左」の思想の天秤などよりも、自らの政治への信頼をどう回復するかが問題であることをよく示す票の戦いが繰り広げられたのだった。

リュクサンブールの欧州議員が言う「シェンゲン条約から脱退するといってみたり、移民を独自の政策で締め出すと言ってみたり、ヨーロッパ連合との足並みを無視…」しているのはマリーヌ・ルペンばかりではない。これは、ニコラ・サルコジの選挙公約でもある。シェンゲン条約とは、ヨーロッパ連合が成ったとき、ヨーロッパ加盟国の国民は自由にヨーロッパを行き来し、ほかの国で自由に職業につくことができることを約束した条約で、すでに多くのヨーロッパ人がパスポートなしで国境をまたぎ生活をしている。そうした状況で「シェンゲン条約から脱退する」としたニコラ・サルコジの選挙公約は、フランスはフランス人以外のヨーロッパ人は要らないという意味を含み、ひいては「ヨーロッパ連合からのフランスの脱退」の可能性を穿つことになった。マリーヌ・ルペンはサルコジのこの公言を聞いて腹を立てた。「サルコジは、私の思想を横取りばかりしている」と。(S.H.)