アクチュアリティ、ニコラ・サルコジ、大統領選へ正式立候補宣言 - J67、つまり大統領選挙第一期戦まで67日。TF1テレビの20時のニュースに招待されたニコラ・サルコジ現職大統領がようやく今日、「強いフランス」というスローガンを打ち出し、次期大統領選への出馬表明をした。大統領選挙第一期投票日までのカウントダウンが始まって残す日数が2ヶ月強となり、ニコラ・サルコジのUMP党にすれば待ちに待った立候補宣言であるが、このところ数週間にわたり、選挙公約ともとれる今後の失業対策や消費関税の値上げによる経済恐慌緩和策の提案、倒産しかかった会社への遊説を足しげくするなどして、すでに予想されていた立候補である。5年前の初戦2007年当時は、選挙の前年の11月に立候補し、半年近い長い選挙運動をしたのに対し、今回は野党の立候補者ならびに与党UMPからの立候補者も出揃って、一番最後の立候補となった。…

ニコラ・サルコジの出馬は誰もが予想していたことで驚きこそないが、この正式発表で、対立する立候補者が明確化して転機を迎え、本格的な大統領選挙戦へ最後の直線コースに入ったことになる。

サルコジ現職大統領の立候補宣言には、数多くの人々が批判を投げかける。「まずは、過去5年の在職期間の収支を見ないといけないですね」とは社会学者。2月15日フランス2TVで発表された数字は以下の通り(他にも重要な数字があるが、今日発表のものの列挙にとどめる)。

  1. 5年間で失業者100万人増。現在、一日1000人が失業している計算だ。
  2. 教員8万人削減。
  3. 国の負債、この3年で5000億ユーロ(50兆円以上)増大。
  4. 2011年の経済成長は+1.7%と、予想していた景気後退はなし。
  5. ガソリン代の値上がり20.4%。原油の値上がりが原因といわれているが、どういうわけか石油会社「Total」は120億ユーロという莫大な収益をあげた。
  6. フランスの企業ランキングでトップ三社の社長の収益は2010年度平均34%増を記録し、年収1000万ユーロ前後(10億円強)。経済危機をどこ吹く風。1位はロレアル、2位はLVMH、3位はルノー=ニッサン。昇給の理由が不透明として、問題視されている。
  7. EUの危機で、「フランスの銀行も危ない」といわれていたが、大手銀行BNPも何故か60億ユーロの収益を上げて欧州の銀行のトップランキングに。
  8. 一般市民の昇給は、平均2.1%。トップ企業の社長の昇給率とは雲泥の差。
  9. フィヨン首相の発表(INSEE調べ)によると、消費者の購買力は、0.6%伸びたが、その内訳は?
    特にPC 、液晶などハイテク類値下げ(平均35.3%値下げ)が大きな要因となり物価全体を引き下げているが、PCを毎日買う人間などおらず、日常の必需品や野菜果物など生鮮食品が平均5.5%の値上がりをしめしており、現実には全体に購買力が低下しているという見方が強い。「購買率は上昇していますか?」という街中インタビューで、「しっかり減ってます。私失業中ですから」と答える人も。
  10. 食料品やレストランの消費関税5.5%を7%に引き上げたばかり。この秋は他の物品およびサービス業の消費関税19.6%を21.2%へあげる予定。産業投資の財源形成のためで、消費者はその負担をこうむる。

サルコジ大統領の2007年当時の選挙公約、「もっと仕事をすればもっと稼げる」、「社会の安全」、「消費者の購買力を上げる」、「税制改革」、「移民政策」などなど、ほとんどが中途のまま。現実は、物価上昇、暴力がはびこり、失業者増大、貧富の差がいよいよ激しい社会となった。

「まだまだ仕事の途中。船の船長が、経済の荒波の中で危機に陥っている船を見捨てるわけには行きません」とサルコジ大統領。

サルコジ大統領の選挙戦のスポークスマンにナタリー・コシウスコ=モリゼ(Nathalie KOSCIUSKO-MORIZET フランス環境大臣、38歳)が抜擢され、来週中にも大臣を辞職して新しい役割に専念する。

さて、ニコラ・サルコジはツィッターに自分のページをつくり約40万人がこれに登録をしている。今回、サルコジ大統領自身がツイッターを利用して立候補宣言を予告しており、フランス2TVなどはここから情報を得た。大統領がインターネットによるソイシャル・ネットワークをこうした機会に利用することについて、「元首職の人間にはあるまじき行為」として戒めた文書を一部の高官が提出している。

一方、同日夜、野党社会党の大統領候補フランソワ・オーランドは、生まれ育った故郷のルーアン市でシンパ1万人を集め、サルコジ出馬に鼻息を荒くした演説をして会場を沸かせた。(フランス2TV)

My opinion: それにしても厳しい批判だ。「立候補して受からなかったら、政治界から身を引いて皆から忘れ去られるつもりだ」と数週間前にニコラ・サルコジが言っていたが、本当に戦う気があるのかどうも疑わしい言動が続いている。現況のアンケートでは、一選でサルコジとオーランドが選ばれた場合、オーランドが60%サルコジが40%で、オーランドが勝つ、という予想が出ている。(S.H.)

サルコジ大統領 © Jonathan Rebboah

フランソワ・オーランド PATRICK-KOVARIK/ AFP