フランスから―環境とアートのブログ

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2012年、大統領選挙の大きな焦点

政治の焦点、「原子力発電」- 2012年大統領選挙に向けて、社会党とヨーロップ・エコロジー・レ・ヴェール(EELV)が、野党連合が勝利したときの原子力発電の将来について、現在フランスにある58の原子炉のうち24を廃炉にすることでようやく合意に達した。EELVが原子力発電を完全に廃止する意向を示したのに対し、社会党候補のフランソワ・オーランドが原子力の抑制に明確な態度を示さなかったことで、両党のあいだに大きな溝ができていた。 ル・モンド紙の別冊特集11月号は、福島原発事故を大きな契機として、2012年大統領選挙が原発政策の行方に大きく左右されることになるだろうとして、原子力エネルギーの行方を追っている。 サルコジ大統領はこの11月25日、ドローム県のトリスカスタン原子力発電所で、エネルギー政策について長い演説をした。「蝋燭の時代に誰が戻れますか?発展することに背を向けた国になれますか?・・・われわれの次の世代により近代的な社会を残すのが私の意志です」と、サルコジ大統領は、いまだに「安い原発」、「雇用を生む原発」、「清潔なエネルギー」を盾に、原発推進政策への姿勢を変えるつもりはない。 EELVヨーロップ・エコロジーのセシル・デュフロは、「原発をやめると雇用がなくなるなんていうのは、愚論です。閉鎖される原発周辺の雇用が減るのは当たり前ですが、新しい自然エネルギー開発のために雇用が格段に増加することが予想されており、その数は現在の原発雇用を上回る計算です」、と雇用減少に大反論。「安い原発」については、「核廃棄物処理代、原発管理代、そして何十年も掛かる原発解体作業などの、膨大な費用はまったく計算に入れておられず、原発が安いというのは大嘘です」と理路整然だ。 福島原発事故で原子力発電の世界的な見直しがなされる中、フランスの2012年の大統領選挙は、サルコジ大統領を代表とするUMP与党の親原発派と、原発全面廃止へむけて国政の流れを変えたい野党連合との対決となることは明らかだ。 ドイツ最後の核廃棄物を運ぶ貨物車に押し寄せる核反対派 - ドイツが出した核廃棄物がフランスのラ・アーグ核廃棄物処理場で処理され、そのうち処理できない究極の廃棄物がドイツに返される。ドイツは2022年までに、全ドイツの原子力発電所を廃炉にする。ドイツ「最後」の廃棄物運送列車と名づけられたこの列車は2011年11月18日、ラ・アーグからドイツの核廃棄物貯蔵所のあるゴルレーベンへ向けて出発したが、現在もグリンピースや核反対派のデモに阻まれ、ゴルレーベンにはまだ程遠いドイツ国境あたりの線路で滞留している。 今回列車運送される核廃棄物は、ドイツが1年半の核処理で出したもので、アレバの工場で301本のガラスの円柱筒に詰め込まれ、その量総計14トン。高濃度のきわめて危険な放射物質といわれる。長さ7m直径3mのワゴン数両にふり分けて収納され、核廃棄物を積んだ列車は通常の電車が走るレールを利用してドイツまで行く。現在ドイツ国内をゆっくりゴルレーベンに向かっているが、ゴルレーベンまで一万人以上の核反対派が線路脇で待ち受けているもよう。 My opinion: 廃棄物や危険物は、それを出した国が責任を持たなければならないことになっている。だからドイツが出した核廃棄物は、処理できなければドイツへ戻ることになっている。ドイツの原子力発電の炉数は19基といわれている。19基の原子炉が1年半に出す処理できない核廃棄物が14トンとすれば、単純計算でフランスの58基は43トン、日本の53基は39トンという処理不可能な高レベルの放射性廃棄物を出す計算である。フランスの1年半分の43トン、日本の39トンは、いったいどこへ格納されているのだろうか。ドイツとフランスの共同TVチャンネルであるアルテが、こうした核廃棄物の貯蔵について大きなルポルタージュをしたが、フランスは、広大なシベリアの土地まで持って行き野外に廃棄物のコンテナをむき出しで並べて放置して知らん顔をしているらしい。それでは日本はいったいどこへ貯蔵をしているのだろうか。誰も不思議に思わないとすれば、それこそ、これほど不思議なことはない。福島原発は1968年に基礎を置いた。日本の原発の歴史は長い。廃棄物の量は原発の歴史とその量に比例して多いはずなのだ。(S.H.)

アクチュアリティ、エヴァ・ジョリィ

政治、話題の人、エヴァ・ジョリィが大統領選出馬- 2012年のフランスの大統領選挙に向けて、ユーロップ・エコロジー・レ・ヴェール(EELV フランスの緑の党の各派閥を統合した呼称)が立候補者をきのう選出。58%の支持を受けたエヴァ・ジョリィ(Eva Joly、67歳。欧州議員)に決定した。エヴァ・ジョリィは、ユーロップ・エコロジーで真っ先に立候補の意思表明をしていたが、公の討論会などで外国人訛が批判されたりもし、世界を探検して回るテレビ番組『Ushuaïa/ ウシュアイア』で有名なニコラ・ユロがかつぎだされて、実質、エヴァ・ジョリとニコラ・ユロの一騎打ちとなっていたもの。 エヴァ・ジョリィは、1943年ノルウエー、オスロ生まれ。20歳のときにフランスにきて結婚の際にフランス国籍を取得した。ノルウエーとフランスの二つの国籍保持者。フランスで政治学を学び、司法官職を経て、38歳のときにフランス共和国検事となる。のち、産業再構成に関する省間委員会 Comité interministériel de restructuration industrielle (CIRI)書記長となった(初のENAを出ていない書記長)。 1990年、パリ最高裁判所の予審判事となり、エルフ事件、フランス国鉄事件、ベルナール・タピ事件、ローラン・デュマなどの事件を担当するなどして機構の悪をついた。その後、仕返しを恐れてノルウエーに戻リ、2002年収賄や違法な金銭のやりとりなどの国際犯罪撲滅を目的にノルウエー政府の顧問となる。2005年、悪徳な国際的犯罪撲滅のためのネットワーク「Le Network」を設立。2008年、ユーロップ・エコロジーに合流。2009年、欧州議員に選ばれた。 http://fr.wikipedia.org/wiki/Eva_Joly エヴァ・ジョリィ、オフィシャルサイト My opinion: 青天の霹靂、とはこのことだ。執拗にに「血統」にこだわってきたフランスが、フランスのDNAを持たない数人の女性閣僚(フランス国籍はもちろん所有)を、共和国政府の歴史上はじめて、フランスの内閣に入れてからまだ4年も経たっていない。2011年の今日、外国生まれの二重国籍保有者が、フランスの政党の大統領候補者として選ばれることになった。エヴァ・ジョリィの専門は司法で、主に収賄や裏金、脱税などの国際犯罪を手がけ、撲滅運動をヨーロッパに広めることにその仕事の核があった。「経済に仕える人間の姿を根本から変えなければならない」という本人の発言の裏には、大企業と政治家の癒着にからむ政治の歪みやそれに伴う国際犯罪、犯罪をみのがす政治、信頼を失った政治が引き起こす社会問題、そして、もろもろのしわ寄せを食らうわれわれ庶民のすがたが強く暗示されている。エコロジーとエコノミーは表裏一体。CO²が金に換算される社会の未来には、うってつけの人なのかもしれない。有名人のニコラ・ユロと、堅実なエヴァ・ジョリィ。花より実を取ったユーロップ・エコロジーだ。(S.H)