フランスから―環境とアートのブログ

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論争、エヴァ・ジョリィ対フランソワ・フィヨン

論争沸騰、軍事パレードから二重国籍へ- 7月14日、キャトルズ・ジュイエ。シャンゼリゼ通りで行われる恒例の軍事パレードについて、EELV(ユーロップ・エコロジー・レ・ヴェール)に選出された大統領候補エヴァ・ジョリィの発言が、論争を巻き起こした。この日エヴァ・ジョリィが、「軍事パレードを廃止して、市民のパレードに切りかえてはどうか」と発言したところ、フランソワ・フィヨン首相がこれを受け、「なんとも悲しい発言だ。この’婦人’はフランスの伝統や、古い文化や価値、またフランスの歴史がまるで分かっておられない」と、メディアに向けて正式発表するかたちをとってやり返した。エヴァ・ジョリィはこれに反駁し、「私はフランスで50年も生活してきたれっきとしたフランス人です。私の愛国心に対し疑いを投げかけるような言い方は許せません」。引き続き『Le Point』誌上で、「こうした(首相の)言い過ぎは、ナショナル・アイデンティティをたてに虚勢を張るところからでている。首相は、ああしたことを言ったことで、公ですべき意見討論の意味を貶めたばかりではなく、共和制政体のあり方そのものが退廃へ向かっていることを露にした」と述べた。 EELVの創始者、ダニエル・カン=ベンディット(欧州議員)は、「エヴァは正しい。フィヨンの脱線だ」。ユーロップ・エコロジー書記長セシル・デュフロは、「こうした発言をする首相は恥だ」。また社会党のフランソワ・オーランドは、「(軍事パレードをうんぬんというのはひとつのアイデアとして出ただけ)出てくるアイデアのもろもろを公の場で検討していくのは当たり前のことなのだが、そうした討論の場すら拒否してしまうような政府は言語道断です。フィヨン発言は許せません」。社会党のマルチーヌ・オーブリィはさらに輪をかけて、「フランスで生まれたフランス人も、フランスの外で生まれたフランス人もフランス人として同等の立場にあります。同等の権利を再び外と内とで引き裂くようなフィヨン首相の発言は、大問題です。フロン・ナショナル(極右政党)と同じラインではないですか。今回、心底からショックを受けました」。 軍事パレードの問題を飛び越え、フィヨン発言は革新左派を逆撫でする結果となり、「ナショナル・アイデンティティ」にかんする保守右派政府と革新左派全体の対立を、再び浮上させることとなった。 (フランス2TV、TF1TV、F2blog、Le Point) 〈注記: キャトルズ・ジュイエの軍事パレードについて - 大本はナポレオン一世時代に始まったもので、そののち1880年から毎年国民の日7月14日に行われるようになったパレード。シャンゼリゼ通りで行われるようになったのは第一次世界大戦後の1919年。現在のパレードは約4000人の軍隊(兵学校、海軍、陸軍など)、および消防、警察などで構成されている。キャトルズ・ジュイエの軍事パレードは、ロシアの赤の広場の軍事パレードに次ぐ大きなパレードといわれている。〉 My opinion: エヴァ・ジョリィの立候補と今回の発言、またフィヨン首相の発言にはさまざまな大問題が含まれている。キャトルズ・ジュイエの軍事パレードについていえば、現在軍事パレードが定期的にこれだけの規模で行われている国はロシア、北朝鮮など、ある種の政治色が濃い国ばかりであること。伝統的かつ著名な風習を廃止するという「ひとつの」提案を無下にし、フランス・ノルウエーの二重国籍を持つエヴァ・ジョリィに対し、「このご婦人はフランスの歴史も価値も知らない」といったフィヨン首相の表現には、エヴァ・ジョリィを外国人とみなしてフランスという国の概念の外へ押し出そうという意味合いがありありとしていたことだった。出るべくして出たこの二重国籍を保持する大統領候補の「出自」の問題。このことで、保守現政府が政府樹立当初、省まで設けた「ナショナル・アイデンティティの概念」を思い起こす国粋主義的な保守の根本志向が再浮上し、従来の保革の思想的対立へ立ち返ることになった。 フランスは植民地が多かった。北アフリカ、仏領インドネシア、ポリネシアなど、旧植民地関係でもフランス国籍を持つ有色人種がたくさんいる。フランス自体、イタリア、スペイン、ロシアなどの少数ながら民族移動と居留が歴史的に頻繁に繰り返されており、国民の混血を免れてはいない。また、サルコジ大統領も父親はハンガリー人でブタペスト生まれ、母親はフランスで生まれているが、家系はユダヤ系ギリシャ人。フランス人のアイデンティティを再考して、フランス人として不釣合いあるいは疑わしい人間の国籍を没収する、などという政策をとるなどしている現政府の「シェフ」ですら、フランス国籍取得は一代前のことでしかない。 こうした国で考えることは、自分のアイデンティティもしかることながら、「人間の権利」とは何かということだ。生まれたときから授けられた権利、剥奪される権利、獲得していく権利。いろいろあるが、現在生活をしている現場の国の人間たちと同じ権利を保障する国籍に関していうならば、日本は本来、二重国籍保持を許してはいない。したがって日本国籍を持つ限りは、日本人が外国で大統領候補になる可能性などは皆無である。したがって、フランスに50年いてもエヴァ・ジョリィにはなれない。すでにその50年あるいは1年ですらも、エヴァ・ジョリィと同じ生き方はできない。国の外で見えてくる人間の「権利の対等」。対等の権利を持つ。人一人の運命にとどまらず国の運命まで変えるキー概念のひとつがここにある。(S.H.)

もう一度現代文化、サルコジの文化嫌い 

いつの間にかサルコジ攻撃をするほうに回って、アクチュアリティなどもサルコジ批判に関連するニュースを多く取り上げるようになった。思い出すのは、ニコラ・サルコジが大統領に選出された2007年の初夏、フランスの全国紙『リベラシオン』の第一面は、ほぼ毎日がサルコジ批判だったことだ。『リベラシオン』はどちらかというと革新系の新聞だが一般庶民的な新聞でもあり、たとえばサルコジが「ナショナル・アイデンティティ」を提起しはじめ、世間が大騒ぎをし始めたころ、新聞の第一面に北アフリカ系の顔をした「フランス人」が、レントゲンの機械の向こうに立ち、こちらから医者が虫眼鏡で映し出されている白黒のレントゲン写真を「骨の髄まで」フランス人かどうか検査している風刺漫画が描かれたりしていて面白がって読んでいたが、記事の内容はというといかにも深刻で、ユダヤ系フランス人が身分証明の更新のときに、役所で「宗教証明」なるものを提出するように命令されたとか、十年以上フランスで出稼ぎをしてお金をためた外国人が家族を故郷から呼び寄せようとしたところ、法律改定でそれが不可能になり、家族は別れ別れのまま一緒に住めないとかいった、フランス人や外国人の扱いに関する細則がじわじわと締め付けるように改定されていくというものだった。…

アクチュアリティ

USBドライバー - エロー県セト市で、中学校一年生(フランス流には6学年目)を対象に、教科書の代わりにUSBドライバーを持って通学する試みが始まった。日によっては8キロから10キロの重さの教科書を入れたかばんを持って毎日通学しなくてはならない生徒の肉体的な負担を軽減する目的も含めて、コンピュータを利用できる日は、分厚い教科書の代わりにUSBドライバーを持参。国語(フランス語)、英語、数学などはこの方法で十分だし、授業もコンピュータ指導でまったく問題ないと先生方も奨励。早速、小学校6年生から実行してほしいという要望が出ている。 沿岸漁業 - 農業と同様、沿岸漁業の衰退が問題化している。後継者がおらずまた後継者養成もできず、魚も獲れなくなり、離職が急増。海岸線は漁業が消滅して観光業に入れ替わる日も間近といわれはじめている。 ブルカ - 司法的な根拠がまったくないとして国務院が反対する「公共の場で顔を隠すことを禁止する法案」が通過する見込み。このニュースで一気に、イスラム系のブティックではブルカやニカブが飛ぶように売れて、売り切れ。ブルカ禁止法に対するレジスタンスかと見られている。ブルカやニカブを日々着用する女性たちは、家に閉じこもるか着用を止めるか選択を迫られているとおもいきや、実際は、そのほとんどが罰則を受けても「このまま着続ける」と主張しているらしい。 これに対し当局側は、民主主義とはみんなが顔を出して歩ける社会のことだということを女性たちに教育する必要がある、と 表明した。 すでにブルカ禁止法案を持ち出した当初、野党議員から、「サルコジ大統領は、ほかにいくらも大事な問題があるときに限って、ポンと関係のない問題を投げかけては、論争を引き起こして問題をごちゃごちゃにする。あれは性格ですかね」と手厳しい非難を受けている。実際ほかにも「ごちゃごちゃ」と問題を提起して、むやみに国会で論争を戦わせ時間を浪費している。たとえば、大統領就任早々、「ナショナル・アイデンティティ – Identité nationale」なる問題を持ち出した。これは、今までフランス人と認められていたフランス人に対して、身分証明やパスポートの更新の際に、あらためて「フランス人であることを証明」するよう要求するもので、更新手続きが複雑になり、やたら多くのフランス人が迷惑をこうむっている。この問題に関しては、また新しいページで追求しなければならないだろう。