いつの間にかサルコジ攻撃をするほうに回って、アクチュアリティなどもサルコジ批判に関連するニュースを多く取り上げるようになった。思い出すのは、ニコラ・サルコジが大統領に選出された2007年の初夏、フランスの全国紙『リベラシオン』の第一面は、ほぼ毎日がサルコジ批判だったことだ。『リベラシオン』はどちらかというと革新系の新聞だが一般庶民的な新聞でもあり、たとえばサルコジが「ナショナル・アイデンティティ」を提起しはじめ、世間が大騒ぎをし始めたころ、新聞の第一面に北アフリカ系の顔をした「フランス人」が、レントゲンの機械の向こうに立ち、こちらから医者が虫眼鏡で映し出されている白黒のレントゲン写真を「骨の髄まで」フランス人かどうか検査している風刺漫画が描かれたりしていて面白がって読んでいたが、記事の内容はというといかにも深刻で、ユダヤ系フランス人が身分証明の更新のときに、役所で「宗教証明」なるものを提出するように命令されたとか、十年以上フランスで出稼ぎをしてお金をためた外国人が家族を故郷から呼び寄せようとしたところ、法律改定でそれが不可能になり、家族は別れ別れのまま一緒に住めないとかいった、フランス人や外国人の扱いに関する細則がじわじわと締め付けるように改定されていくというものだった。…

今日は文化が、じわじわとどころか、大鉈を振られて潰され始めている。先ごろ、サルコジ政府による大幅縮小をした新しい文化省(芸術文学など各専門の庁が10庁あったのをこじんまり4つの局にまとめてしまった)が今年一月に発効した話を書いた。29年前、フランソワ・ミッテランによって再興したフランス文化省は、地域に現代文化活動が浸透し、地方財政が自立して文化を推進していくようになるまでのあいだ重要な文化のバックボーンとして大きな役割を果たした。現今、素晴らしいことにフランスは、市町村が何か催事をしようというときに真っ先に「現代アート」が候補に挙がるのである。それほどにフランスは現代アートが満ち満ちている。そんな国が出来上がったのもつかの間。植物がのびのびと空へ向かってのびているところを、まさかりで足元から伐採していくようなものだ。現代アートの庁「造形芸術庁」は、「縮小」の一言で消滅した。こんなふうに長い年月をかけて作った現代文化のインフラストラクチャーをあっけなくなぎ倒しにかかっているのが、今日のサルコジ政権なのである。

フランスの現代文化の敷衍とその政策についてまとまったものを書きたいと思っているうちに、サルコジのネガティブな時代を迎えてしまった。 文化省という国の文化のバックボーンが弱体化「させられた」ときに、各地の地方財政でまかなわれている現代アートは続いていくのだろうか。次に消滅させられるのは、文化省が国全体にかけたネットワーク、文化振興局だ。文化振興局という地域と地域を結ぶ横のつながりがなくなると、網の目の一環だった地方は孤立した点になってしまう。

せっかく積み上げてきた現代文化が崩壊していく危機。そんな時期だからこそ、悔しがってばかりおらず却って文化の話を蒸し返さなければならないとも思う。こうした雰囲気の中で現代文化について、フランスの論理をこれからわたしなりにセレクションして載せていきたいと考えている。(S.H.)