テロを断ち切る?

2015年9月27日、フランスはシリア北東部に位置する町デリゾールを爆撃。同日午前中に仏当局は、イスラム国兵士たちの訓練キャンプを全滅させたと発表した。(フランス2TV、27日夜のニュース)

早朝6時30分、ヨルダンからフランス戦闘機ミラージュ6機、またアラブ・エミレイツから爆撃機ラファル6機が発進。各ラファルは4発のレーザー誘導ミサイルを搭載しており、うち5機がシリア北東部のデリゾールにあるイスラム国兵士ジハディストの訓練キャンプを爆撃し、これを全滅させたもよう。午前中に、マニュエル・ヴァルス首相が記者会見し、攻撃が成功したことをメディアに通達。ヴァルス首相は、「昨年から、フランスはイスラム国のテロ攻撃の脅威に晒され続けており、今回はフランスの防御のための軍事行動」と位置づけ、爆撃を正当化した。…

ユーフラテス川の中流に位置し30万人が住んでいたデリゾール(Deir ez-Zor)は、石油供給の重要地でもあるが、この数ヶ月戦闘地域と化し軍事キャンプが出現している。シリアのアサド政府筋によると、ここにはフランスからやってきたジハディストたちがイスラム国兵士たちと合流していたといい、フランス当局はこれらフランスのジハディストを攻撃目標としていたのではないかという推測がある。

フランスのシリア攻撃はこれが初めて。一方、フランスの記録によるとイラクのイスラム国に対してフランスは、1136回上空を監視飛行し、爆撃215回。破壊に成功した目標物は314を数える。

シリアのバシャール・アル=アサドは4年半前までは、ヨーロッパにとっては脅威であり打倒すべき政権であったが、今日のイスラム国台頭で状況が変化しつつある。ロシアのプーチン大統領は、「シリアの混乱を食い止めるには、アサド政権に協力する以外に方法はない」として、すでに軍事行動をとり、ラタキアとタルススに軍艦やタンクなどのロシア軍隊を送り込んだ。一方、国連で各国首脳は、ロシアの意向に少なからず難色を示しており、アメリカは現在のところ意志を明らかにせず、イギリス、ドイツ首脳は「何事も決定の前にそれぞれコンフリクトの中心にいる主導者たちと話し合いを進めるべき」と慎重姿勢を強調している。フランスはこれからどういう姿勢で臨むのか。アメリカ、イギリス、ドイツ、イスラエルなどの軍事連携を背景に、今回のシリア攻撃はこれからの攻撃の始まりでしかないと見るほうが現実的なようである。(フランス2TV)

デリゾールの今:http://www.liberation.fr/monde/2013/04/13/syrie-deir-ezzor-champ-de-ruines_895742

Le 7 avril. Beaucoup de civils sont pris au piège dans la ville, qui manque de tout.

デリゾール(Photo: La Libération)

My opinion: 「蝶番を断ち切る」。フランスがフランスからシリアに来たジハディストを攻撃し全滅させた(もよう)、というニュース。もしこれがほんとなら、今年1月にフランス国内で起きたテロを思い出せば、フランスとイスラム国をつなげる役割の「蝶番」を殲滅させたということだろう。攻撃目標の達成度や爆弾の数の発表はあっても、殺された兵士や犠牲者の数は発表されない。

「フランスはこれからどういう姿勢で臨むのか?」 フランス2TVの疑問は意味深だ。今回の爆撃はフランスから来たジハディストを殲滅することであったらしいが、フランスのジハディストのアジトに関する情報はアサド政権側から出ており、フランスがこの地の爆撃を確定した経緯はフランスとアサド政権が何らかの形でつながっていることを示唆する。果たしてフランスは、アサド政権を支持するロシアにつくのか、あるいは欧州の脅威であったアサド政権ではなく、ほかの主導者たちと話し合いをすべきとする国連の首脳たちの側につくのか。オランド大統領の身の振り方はいかに。(S.H.)

 

戦闘地域と化したシリアの町デリゾールの「平和な時期の写真」をウィキペディアで。
・デリゾール、戦争前:https://ja.wikipedia.org/wiki/デリゾール

http://news.yahoo.com/shuts-playgrounds-east-syria-city-monitor-155929670.html