2015年4月8日の夜、フランステレビ5モンド(5国際放送)が大規模なサイバーアタックを受け、放送中の200カ国11チャンネルが同時に中断し画面が真っ黒になった。同局は、局使用のツィッター、フェイスブック、オフィシャルサイトも同時にハッキングされ、各ページにはジハードのシンボルが現れ、またイスラム国のプロパガンダ記事が掲載されるなどして、一斉に制御不能に陥った。全体が回復するのに20時間を要したが、セキュリティ機能の修理などにはさらに数週間かかるという。翌9日の朝、フランステレビ5に内務大臣、文化大臣、外務大臣の3人が集まりディレクターと会議。サイバー・アタックはイスラム国による犯行声明があり、この事件を組織的かつ深刻なサイバー・テロとみなして国を挙げて対処していく旨、内務相が記者会見で発表した。…
過去の深刻なハッキング
これまでにもいくつか深刻なサイバーテロが おきている。
たとえば、
- 2014年ル・モンド紙がシリアからハッキングされ公式サイトがジハードにのっとられた。
- 2015年1月12日、中近東駐屯中の米軍が使用していたツィッターがハッキングされ、テロリストのロゴCyber Caliphatoが出現してネットワークが破られたことが知れた。
- 2014年、アメリカのソニー・エンターティメントのメールが漏洩。
- 2010年9月、イランの原子力発電所で、コンピュータにビールスが侵入。外からコンピュータが制御され始めたが、危うく当局のエンジニアがこれを阻止して、最悪の事態を免れた。しかしこのサイバー・アタックのせいでイランの原子力開発が大きく遅れた。
- 一方フランスで、電話局オランジュで登録客130万人のID(名前、住所、メールアドレス、電話番号)が盗まれたが、ハッカーは見つからずじまい。
- 2012年5月大統領選の真っ最中、エリゼ宮(大統領官邸)でハッキングがみつかる。
危険は高まる一方
今回のフランステレビ5モンドのサイバーアタックでは、内部にパスワードを漏洩したものがいた可能性もあるが、コンピュータシステムのスペシャリストを外部から呼んで仕事をする場合も多いため、構造上、比較的簡単にパスワードが漏れたことも考えられる。こうしたサイバーアタックはコンピュータが一台あればできてしまうため、デジタル化とともにセキュリティの強化が強く望まれるのであるが、各方面での予算削減のせいでセキュリティの最新化が遅れていることも危険を招いた要因の一つかもしれない。
武力戦争と並行してこれからは、社会の機能を麻痺させたりめちゃくちゃにしてしまうことのできるサイバーテロがますます増えると考えられる。
予想のつく危険な場所、例えば原子力発電所、空港などの重要機関のコンピュータなどはサイバーアタックから防御する十全な対策が必要である。(フランス2TV)
おまけ
さて、ル・フィガロ電子版によれば、サイバーアタックのあったテレビ5でインタビューを撮影し、それを放映したフランス2TVがあることに気がついたという。それは、オフィスでインタビューをしている人のバックに、なんと、テレビ5使用のYoutubeやツィッターのパスワードが大きく印刷されて貼り付けてあったのである。ニュースでパスワードまで放映してしまったことがまたまたニュースに。冗談のようなほんとの話だ。
(下はパスワードを前にインタビューに答えるテレビ5の職員のビデオ)