[フランス2TVが、2014年ヨーロッパ議会選挙結果を解析]
・先週末行われた欧州28カ国、751議員を選出する欧州議会選挙の結果、大津波のようなフランスの極右政党国民戦線(Front National、略してFN)の台頭のニュースは世界各国を駆け巡った。つい最近まで政党とみなされていなかったFNは二代目のマリーヌ・ルペンがその概観を大きく塗り替えたらしい。イタリアの新聞という新聞にはマリーヌ・ルペンの写真が大々的に入り、アメリカでもCNNが「大地震」と形容するなど、ヨーロッパ建設の主役となったフランスとドイツの二人三脚が危ぶまれる結果をかんがみ、ドイツはフランスの極右政党の台頭に不安げだ。ドイツ市民は「ヨーロッパを支える力が削げるのが非常に心配だ」。またアンゲラ・メルケルは記者会見で、「欧州各地で右翼政党が優位に立ったが、有権者を親欧州派へ取り戻すために一層の努力をしなければならない。今後フランスにもその努力を期待する」と語った。FNやほかの国の極右政党は、反ヨーロッパ、ユーロ圏脱退、移民をシャットアウトするというほぼ同様のスローガンを持っており、ヨーロッパ建設の基礎を築いた延長線上で体制の維持へ尽力するフランスの現政府とまったく対立する立場にある。選挙明けの今週の月曜、早速FN党首、マリーヌ・ルペンは、フランス国民議会の解散と、選挙区改正を要求した。
・今回フランスの投票率は、43.09%。棄権率、ほぼ57%。
下の図:欧州議会選挙、棄権率(欧州議会まとめ)
FNが台頭した結果を受けて、棄権した市民へのトゥールーズでのインタビューでは、「(FNが台頭しても)別にどうってことはありません」、「あんまりほかの政党と変わらない」、「政治が良くなればどこでもかまわない」と、ほとんど危機感や反省などは見られない。
FNはこの結果、ヨーロッパ議会で24議席を獲得する。フランスの議席は総計74議席。現政府社会党は13議席。もっとも議席を失ったのは、保守党UMP。
下図はフランスの議席の変遷(Francetvinfo)
(赤=極左政党・共産党。ピンク=社会党。緑=エコロジスト。ブルー=UMPとその他保守政党。濃紺=国民戦線FN極右政党)
オーランド政権はどの政権に比べても人気最低。支持率は20%を割っており、社会党離れは政権離れと考える人も多いが、実際数値的には、社会党は2004年から緩やかに下降の一途をたどっており、今回が取り立てて大きな敗北とはいえない。それに反して、保守UMPの下落は激しく、2009年に支持を受けた地域のうち大半の94県までを国民戦線FNに奪われており大変厳しい敗退の様子が伺える。
下図は、野党第一党保守UMPの支持地域の変遷、2009年と2014年比較。
薄いブルー=UMP。ピンク=社会党。濃紺=国民戦線FN
・24%の首位を奪ったFN支持層の内訳
年齢層の解析では、18歳から35歳までの30%、35歳から59歳までの27%、60歳以上は21%が、FNに投票した。若い層の支持が圧倒的に多いという結果。
また、社会階層では、労働者階級の43%が支持。ホワイトカラーの中産階級以上は9%のみ。
FNを支持した理由は、第一にヨーロッパに反対する(87%)、第二に経済恐慌への懸念(83%)、第三にユーロ圏から脱却しフラン(ユーロ以前のフランス貨幣) にもどす(66%)、第四位に移民対策(外国人が多すぎ)、第五位に市民の購買力向上、があがった。
フランス、ピカルディー地域はFN支持率が38%。一般市民に訊いてみると、「今の経済政策では市民の購買力が低下するばかり」、「ヨーロッパへの援助に金がかかりすぎる」、「移民が多すぎる」などの理由があげられ、共産党から極右政党へ180度転換する極端な動きを見せた。
・ヨーロッパのほかの国で顕著な極右政党の台頭の結果、ヨーロッパ議会に、創設以来始めてヨーロッパへの反対派議員が多数参画することになる。
- 「イギリス」はヨーロッパ連合への反対派、かつ移民受け入れ反対を党のスローガンに掲げるUKIPがのし上がり、これもイギリスで首位の27.5%を獲得した。労働党は2位。デーヴィッド・キャメロンの党は第三位と辛酸をなめる。
- 「ポーランド」極右政党は32.3%。左派政府と並ぶ勢い。
- 「デンマーク」右翼政党は26.6%をとってやはり首位に。移民対策、反ヨーロッパを掲げる。
- 「ハンガリー」はJOBBIKが14.7%。反ユダヤ。
- 「ギリシャ」はネオナチAube Doreeが9.4%をとって3位に。
- かく言う「ドイツ」にもネオナチの影が。ほんのわずかながら、フランスのFNの創始者ジャン=マリー・ルペンがお手本、というネオナチ党首が一人当選。「選挙区改正でのし上がった党で、本当に残念です。ドイツのイメージががた落ち」とドイツ市民の意見。
・反対に、親ヨーロッパ、革新社会党が台頭する国、イタリア。イタリアでは39歳という若さの社会党党首、マテオ・レンジ(Matteo Renzi)が41%を獲得して、保守を20%以上も大きく引き離す快挙。「この選挙はヨーロッパにとって大事な選挙です。彼はヨーロッパにとってなくてはならない人になりますよね」一般市民の期待は大きい。
・今週早々、ブラッセルでヨーロッパ首脳会議開催。欧州議会選挙結果を受けて、各国首脳、大慌てでアセスメント。
http://uk.reuters.com/article/2014/05/27/uk-eu-election-summit-idUKKBN0E70ZN20140527