負債をかかえるフランスは、2014年度に向けて30億ユーロの節約を強いられている。
2013年7月15日付で、財務省が発表した報告書によると、2012年度の大統領の出費は、1770万ユーロから、1430万ユーロとなり、差し引き600万ユーロ(約8億円)が節約されたことが明らかになった。うち減少率が最も大きいのは、大統領の移動の費用で、3百万ユーロ(4億円)減。サルコジ前大統領は、大統領専用飛行機を利用した外遊、のみならず国内移動が多く、出費が多いことで知られていたが、オーランド大統領は節約第一を掲げて、一般の交通機関を利用。ブラッセルのEU会議に電車で出向し、ほかの国から賛辞が送られたほどだ。
報告書は、2012年はサルコジ政権が5月15日でオーランド政権に交代し、二つの政権を混ぜたかたちとなっているが、ほかにも例えば、クリスマスの費用は2011年31万ユーロだったのが2012年は17万ユーロ。晩餐代、花代の節約に加え、オーランド政権になってからは、サルコジ政権時代に7万7千ユーロ使っていた政府の世論調査も、必要なしとして行っていない。
7月16日、ジャン=マルク・エロー首相は、あらゆる行政事務を「簡素化」することで、節約を促進する旨、国民へ通達した。身分証明書の更新を、10年毎から15年毎に。会社が発行するレストランの食券(市街のレストランで利用可能)を紙からカード式に。車の書類取得をオンラインで可能に。会社が公の機関に提出しなければならない事務手続きの山を削減することで、各企業は年間5000から10万ユーロの節約ができるようになる。
また一方で、支援や控除などが根本的に見直されることになり、農業経営者、建築業者、商工会議所、国立映画センターへの支援金が削除される方向だ。
My opinion: 政府の「犠牲的精神」ともいうべき節約は、すでにオーランド大統領の選挙公約にもあり、政権樹立早々、大統領の給料、ならびに閣僚の給料を30%減らし、各省の予算を平均7%も削減する方向で経済政策が続いている。ともかく毎年増える国の借金を少しでも減らさなければならないという、身を切る政策だ。つい先だって、7%の賞予算削減へ、環境大臣が鋭く反対して、離職を言い渡された。国の借金というのはそれくらい大変なものらしいが、もっと大きな借金を抱えている日本は国債を増やすだけでどうして何もしないのだろうか。戦争でもすればいろんなつけが帳消しになるとでも思っているのだろうか。
さてフランスは、「書類の国」といわれるほど、普通の生活をするには書類手続きが多い。こうした煩瑣に輪をかけて煩わしい手続きが、「節約」路線で、オンライン化されたり、カード化されたり、削減され、日常の負担が減るのは大歓迎だ。
身分証明といえば、サルコジ政権時代が滞在許可証の更新の際の扱いはひどかった。書類を持っていっても、その場で更新してくれず、新しい身分証明ができるまで半年も待たされた。フランスの身分証を持たないでいるこの期間は、フランスを出るな、ともいわれた。まかり間違えば、二度とフランスに入れないこともあるからだ。こうした厳しい書類の制約は、フランスにいる限りあちこちにある。「日本が嫌なら、外国に行きなさい」といった日本の某市長。外国に住むということの困難を、ぜんぜん知らない人の無責任な発言である。(S.H.)