David Spriggs デーヴィッド・スプリッグス、1978年イギリス生まれ。
カナダ在住。1992年、父親の仕事を契機に新しい境地を開くために、家族でカナダに移住した。
「現在の私の仕事は、これまでの人生でやってきたことの集積のすべてです。透明な媒体を利用することを考えた1999年に、私の最初の<レイヤー・ワーク>ができた。私が知る限りそれまで誰もやったことの無い仕事で、大きな仕事をやり遂げたという手ごたえがありました。ジェームス・タレルの様なアーティストのメディウムに光が使われるように、透明さそのものが媒体に十分なりうると思っている。パースペクティブへの私の興味や絵画の空間を考えると、透明な支持体を何層も重ねたレイヤーを利用し、絵を描くことを表面を越えたさらなる空間に持ち出すことは、私にとって非常に論理にかなっているようだ。こうしたコンセプトとテクニックの可能性をこれからも追求していくつもりだ」と筆者に語ったデーヴィッド・スプリッグス。
アクリルで描画した透明フィルムを何層にも重ね、描きこんだ部分が空中で重なり合うとき、ボリュームを持った不思議な有機体がたち現れる。周りを動く者たちを、いやおう無しに引きずり込んでいく半透明の視覚空間というレイヤーの「塊」。彼が言うように表面を越えまた普通の3次元空間をも超えた新しい絵画の可能性を示して止まない。(S.H.)
RED: 2012