[ヴィム・デルヴォワ(Wim Delvoye)展:2012年5月13日から9月17日まで]
展示は、ルーブルのピラミッド、チュイルリー公園、ルーブル、リシュリュー翼ナポレオン3世の居室、装飾品部門ゴシック室。
ルーブル美術館で、現代アート展企画が比較的定期的に行われるようになった。1953年にジョルジュ・ブラックの天井画が国から発注されてルーブル入りをしたのを区切りに、現代美術から縁が切れていたルーブル美術館であったが、21世紀に入り、フランスのミニマリズムの代表とも言うべきフランソワ・モルレのステンドグラスや、アンゼルム・キーファーの壁画やオブジェをコミッションしたほか、現代美術のテンポラリーな企画展をルーブルの展示室を惜しみなく利用して行うようになった。2008年に招待されたヤン・ファーブルが、オランダ絵画やベルギー絵画などの陳列室を利用した大々的な展示を行い、鮮烈な記憶を残している。
2012年は、ベルギーのアーティスト、ヴィム・デルヴォワ(Wim Delvoye、47歳) がルーブルにタイアップした彫刻群約30点をまとめあげ、やはりデルヴォワの出自国であるベルギーやフランドル地域のオブジェ室を中心に展示を展開した。
古い時代の装飾感覚へ、自己同定すれすれの危うさを盛り込み、ゴシックの建造物が時間のスパイラルの中でねじれて化石に似た形を持ち、あるいはまた、コルテン鋼のねじれたキリストがナポレオン3世の食卓の上に並び、豚がサロンでくつろいで会話を交わすありさまなど、作家の持つポップ・アート感覚や歴史芸術にまとわりつく宗教や習慣の中で固守されてきたものたちが、鉄の中に溶解してかたちになり、ルーブルのむせかえるほどの歴史の厚みのなかで時間を超越した対話をかもしだしている。
トニー・クラッグがピラミッドの真下に彫刻を置いて以来、ここに彫刻を置く二人目のアーティストとなったヴィム・デルヴォワ。ねじれて細い竜巻のようになったカテドラル(コルテン鋼、高さ13m)は、題して《Suppo》(モン・サン・ミッシェルの7代目修道士の名前)。
ドクメンタに出品した刺青をした生きた豚を思い出す。
日本のトラックを題材にして、木でトラックを作り車体満面に唐草模様のような複雑かつ装飾的な浮き彫りを彫り付け、すっかり家具のようになってしまった異様なトラックが作品となったものがあった(ベニス・ビエンナーレ出品)。ここでは、本物のタイヤがレースのように透かし彫りにされている。
[ゲルハルト・リヒター展、2012年6月7日から9月17日まで]
同じくルーブル美術館、ドノン翼の絵画部門の一室で、ゲルハルト・リヒター(Gerhard Richter)の水彩、デッサン展が行われている。1932年ドレスデン生まれのリヒターは、今年80歳。テート・モダン (6 oct. 2011-8 janv. 2012)、ベルリンナショナルギャラリー、ポンピドーセンター国立近代美術館(2012年9月24日まで)と合わせた、ルーブルでの企画はアトリエでの地道な作業の部分だ。
[フランソワ・モルレ(François Morellet)のステンドグラス]
ルーブル美術館リシュリュー翼のオブジェ室をつなぐ踊り場の円形窓に創作したステンドグラスが、念の入った(ごてごてした?)装飾家具などを見た後はすがすがしい。