住宅問題と移民問題:…

7月5日、大統領選挙でオーランドが公約したうち二つの事項を政府が発表した。一つは住宅問題で、フランス全国の住宅費の高騰に歯止めをかけるため、地域平等・住宅大臣に就任したセシル・デュフロ(EELV/エコロジー党、写真AFP/ALEXANDER KLEIN)は、家屋やアパートなどの新規貸借に関し、国が算出した国民物価指数以上の家賃の値上げを許さない方針を提示した。昨今新規にアパートなどを借りる際、家主が家賃を跳ね上げ住宅難に拍車をかける状況になっていたため、条例を作り値上げに規制を作る。これで、家賃の値上げの上限は政府が示す本年度物価指数の2.24%にとどまることになる。

また移民問題について、サンパピエと呼ばれる正規の滞在許可証の発行を許されていない人たちの処理に関し、これまで旧政権は警察による大量捕縛と拘留、ついでこうして監視下に置かれた人たちを国外追放するなどの強硬措置を続けてきたが、オーランド政権に至り、警察のサンパピエ捕縛拘留を打ち切ることにした。高等司法官はきのう、「サンパピエは(警察に拘留されるような)犯罪者ではないことを認識し、社会の見識を変えていかなければならない」と発表。サンパピエの人権擁護を訴え続けてきた団体は「これまで犯罪者のように扱われてきたのは本当に遺憾でした。これで社会が大きく変わります」と賞賛した。右派の旧政権下では、サンパピエの捕獲拘留に続く毎年6万人の国外追放を行ってきており、追放する数を増やすなどの目標を定めていたが、今回の決定ですべては出発点に戻ったということができる。フランスの外国人への対応、また警察の移民への対応へ、新しい規約が生み出されなければならないことになる。

しかしながら、警察が捕縛拘留しなくなることでサンパピエが正規滞在を認められたことにはならない。極左政党は、サンパピエの大量一括正規受け入れを要求していたが、現政府は、「外国人受け入れに関する書類その他の内容を全国一律にして明解にし、それに基づいて一人ひとりケースを吟味し滞在許可証を発行できるかどうか決める」として正規化については公明正大、かつ慎重な態度を示している。

今回最高司法当局が示したサンパピエに関する警察の執務内容の大きな変更について保守派は、「警察が違法滞在者や不審な外国人を捕まえなくなると、どうやって移民の不法滞在に歯止めをかけられるんですか」と激しく批判した。(フランス2TV、フランスTVブログ)

地域平等・住宅大臣、セシル・デュフロ AFP/ALEXANDER KLEIN

My opinion: 家賃高騰への歯止め条例を制定する感覚は、やはり社会主義的? すでにオーランド政権は、フランスの大会社のトップと会社の一番下で働く人間の給料格差が開きすぎることに注目し、大会社のトップの給料は一番安月給で働く人間の給料の「20倍」どまりにするという提示をしている。たとえばEDF(フランス電気会社)の社長の給料は、鉄塔に登って電気ケーブルをつけたりして働く人の給料の20倍どまりとする、ということで、もちろん大会社の社長の中には30倍40倍、100倍以上という給料取得者もいて大きな波紋を呼んだ。こうした提示がどうやって守られるのか、一般市民の私には見当もつかない。

注目すべきはこれまで幾度と無く問題になったサンパピエの問題解消である。この改革は歴史的な改革でもある。サンパピエについては何度かブログでも述べたが、「パピエ」は「書類」のことで「サン」は「持たない」ことを意味し、フランス当局に正規の滞在許可証を申請しているが当局が発行しないでいるため長いあいだ警察の監視下で生活をしている外国人のことをさしている。大概のサンパピエはアフリカの旧植民地から来ている場合が多く、やみで仕事をしてフランスの税務署に税金を払っている人も少なくはない。普通言う「不(違)法滞在者」とはだいぶ状況が違う。「一人ひとり吟味して正規化していく」という政府の言うとおり、彼らの生活状況が一刻も早く改善されていくことが望ましい。(S.H.)