展覧会、サン・プリヴァ現代アートフェスティヴァル 「星の原野」展…
展覧会、2012年6月16日から9月末日まで。St Privat d’Allier, Haute Loire, France
http://www.contemporaines-stprivat.fr/
作品「大熊座ベンチ」Grande Ourse Banc, 20 M long, 2012
オート・ロワールの小さな町、サン・プリヴァ・ダリエで現代アートと現代音楽の活動を営む協会の招待で、作品を現地制作した。展覧会テーマである「星の原野」は、この地域が11世紀あたりから巡礼路として有名になり、以来ながいあいだ巡礼者が通った道は1000年後の今日、毎年リュックをしょったハイカーが何万人も通るハイキングコースとなっている。ハイキングといっても、巡礼路の到着地は1000年前と同じスペインのサンチアゴで、この地域の出発点からはなんと1600kmという道のりとなる。普通に歩くと2ヶ月から3ヶ月かかる大変な距離である。
サンチアゴが聖地となったきっかけは、一人の僧のもとに突然星が現れ、僧はその星の導くままにサンチアゴまでたどりつき、かの地で聖人の墓を発見したという逸話である。その墓が聖地となり、あちこちから巡礼者が訪れるようになった。したがってこの僧が星のまねくままにサンチアゴまで歩いた道のことをシュマン・ド・コンポステル、つまり星の道と呼ぶ。展覧会は、「星の道」にちなんで「星の原野」展。協会の初めての野外企画となった。
現地制作期限は6日ばかり。資金も少々。アシスタンスも少々。ということでこういった条件をもとに、いつものようにリサーチをしながら悩んだ挙句に、大熊座のかたちを地面につくることにした。「星の原野」に「大熊座」は凡庸に見えるかもしれないが、かたちばかりではなくベンチにしてハイカーに利用してもらう目的を盛りいれた。そればかりではない。大熊座には小熊座があり、小熊座は北極星を含む。「熊」「北極」と来れば、地球温暖化でこの15年で北極の氷が半分になった事実を思い起こす。また、北極の氷のことをフランス語では「Banquise」といい、「Banc」つまり「ベンチ」と同語源なのである。「大熊座(ホッキョクグマ)」、「ベンチ(アイスバーグ)」、そうして北方向を確実に知ることのできる星座でもある。
こともあろうに、このコンセプトをたてたときにはフランス語で考えていたから気がつかなかったが、フランス語の「Constellation」を日本語にすると、「星座」であることに気がついて大笑いをした。「星」が「座る」とはまさにこの作品のかくれたコンセプト。ハイカーが座るベンチにすることを思いついたのは、フランス語のBanquiseや氷の上に座る白熊もさることながら、ひょっとしたら日本語の「星座」の「座」も創作の無意識のなかにあったかもしれない。(S.H.)