ニコラ・サルコジ大統領、TV演説、1月29日(日曜20時) - 多方面から期待されていたサルコジ大統領のTV演説がこの日曜の20時のニュースの時間帯で、1時間以上にわたり行われた。5月上旬の大統領選挙を目前に、野党第一党社会党候補のフランソワ・オーランドが一万人以上を集めた会場で選挙公約演説をしたばかりだが、与党UMPの大統領出馬最有力候補と目されているニコラ・サルコジ大統領はまだ次期大統領への立候補宣言をしていない。…したがって、この日の演説は選挙公約の発表と見るべきか、大統領選挙の有無にかかわらず現与党UMP指導の政策継続と推進と受け取るか反応はさまざまである。

この日のサルコジ大統領の提案は、①フランスの企業の競争力増進策(企業税負担額の減税)、②中小企業に対応する銀行を作る、③株式市場の各オペレーションに新課税、④VAT(TVA:消費税に類似した税金) を1.6%値上げし、現在の19.6%から21.2%にする、⑤一般の社会保障負担額のうち一部(CSG)を2%値上げ、⑥失業対策として各企業は5%の雇用を若年齢者にあてる、⑦不動産にかんし規定の建築率を30%増加を許可する、などである。うち、VAT(TVA:消費税に類似した税金)とCSGの値上げは10月、中小企業対応の銀行は8月に敷設というスケジュールだ。

ちなみに、近隣諸国のVAT(TVA:消費間接税)は、ドイツ19%、イギリス20%など。イギリスが17.5%から20%に値上げした時は4.5%のインフレを招き、ドイツの16%から19%への値上げはシュロイダー首相の失脚へと結びついた。消費間接税の値上げは、企業の納税負担額を減らす分を一般消費者に負担させるというもので、1.6%の値上げは一般家庭の消費で年間約300ユーロの出費増となる計算だ。

数字 - この数日間に公表された数字。

  1. ニコラ・サルコジ大統領とその政府の出費は、シラク時代の数倍。サルコジ大統領は一週間のうち24時間専用飛行機による移動を行っている。その移動費、60万ユーロ。移動につきものの大統領の警備は毎回警察官1000人の出動を必要とし、費用は45万ユーロでシラク大統領の二倍。パリで開かれた緊急サミットの費用、1分間につき58000ユーロ。マティニョンの花代、15600ユーロ。会議の顧問の費用1700万ユーロ。一般人の給与据え置きに対し、顧問の給料は20%から50%昇給しているという。「削減、節約、縮小で財布を締めさせておきながら、当の政府は湯水のような出費。一般市民は割を食ってます」とは経済評論家。
  2. 2011年12月だけで失業者15万人。
  3. 「原子力発電は今後さらに高くつく」。フランス財務省がざっと計算したところによると、原子力発電が始まってから今日までの関係企業の出費は、総額2280億ユーロ(23兆円)に上るという。2012年から2025年にかけて、原発のメンテナンスは一年間につき37億ユーロ、つまり2025年までに481億ユーロ(5兆円)がかかり、今までの二倍のコストが見込まれている。その上さらに、政府の要請で原子力安全委員が決めた安全規約に沿うための原子炉設備の強化や再建費用、核廃棄物の処理経費が増大して加算されるだけではなく、この10年以内に、フランスの58の原子炉のうち22の原子炉が40年の耐用期限を迎え、それらの膨大な解体作業が待ち構えており、今後原子力にかける将来の経費は計り知れない。耐用年数が過ぎても原発を稼動させるべく再建しながら現状維持を続けていくか、エコ発電への切り替えに踏み切るか、フランスのエネルギー政策は大きな転換期を迎えているということができる。
  4. 2011年、届けがあった盗難車の数、116232台(警察調べ)。一日318台が盗難されている計算。それでも2010年より5000台減。
  5. この10年で、フランス全土の果物の木の量が平均して20%減少。桃の木40%減、梨の木45%減、りんごの木20%減。原因は外国からの安い果物の輸入による価格割れとビールス。
  6. 2012年度(秋)の教員削減予定は、全国で14750人。中学教師6550人削減、小学校教員5700人、また落ちこぼれ対策特殊教員2500人の削減が予定されており、全国で教育の現場の教員たちが反対デモを行っている。「教員削減は子供たちの将来の削減でもあります」地域の深刻な状況を反映させた表情を満面に、デモに臨む教員たち。
  7. フランスのダッソー社が作る戦闘機「Rafale ラファル」(訳して「突風」)を126機、インドが発注。外国からの発注は初めて。80年代に戦闘機として最高の機能を備えて作られたもので、世界でも値段が高いことで有名。注文のうち108機は現地インドで製造される予定。売り上げは110億ユーロに上る。
  8. フランスの360万人(人口の約5%)が住むところがないか、住む場所があっても普通の生活ができるような状態の所に住んでいないことがアベ・ピエール財団から提出された報告書で分かった。財団はこうした住宅難の窮状を鑑み、次期大統領はその公約に、50万軒の住宅建設と60万軒にのぼる非人間的な住宅の見直しと再建を「社会契約」として盛り込むべき、と提案した。この住宅難の一番の犠牲者は子供たち。70万の子供が住むところを持たない。一方で、住宅はあっても家賃やクレジットの支払い困難をきたしている家庭は、1000万人にのぼるという。
  9. フランス、史上最悪の住宅難。フランスの家庭は平均、住宅費に収入の25.5%を払っており、家計のバランスに大きな影響を及ぼしている。原因は、2008年以来の雇用制度改定による収入の不安定化と不動産の高騰によるところが多く、家賃は2000年から2010年のあいだに一般で107%から49%値上がり、また公団住宅は29%の値上がりを記録。アベ・ピエール財団によると1954年の活動開始以来最悪の住宅難という。
  10. 寒波襲来。フランス32の県で、積雪注意報発令。今週金曜まで気温が下がり続ける。マイエンヌで-20℃、リヨンで-18℃に。

(フランス2TV)