先月3月25日から26日ころ、福島原発事故にかんし、日本がフランスへ技術救済を求めてきたことをだいぶラジオやTVが報道している。「とうとう日本が、フランスの原子力技術で助けてほしいといってきた」とフランス・アンフォ・ラジオは一日中繰り返し、日本の窮状にフランスが関与するかどうかEDFが検討開始した、といったことを報道し続けた。協力をするにしてもまだ人材を送るわけには行かない、などといった話だったのが、24時間も経つと、「EDFフランス電気、AREVAアレヴァ株式会社、Commissariat de l’énergie atomique(CEA)フランス原子力庁の三箇所が協議し日本へ協力する方向へ」ということで、フランスの三つの機構が協力体制を組んで援助をすることが決定した旨、国内で大きく報道されることになった。
そうこうしているうちに、どういうわけか急にサルコジ大統領が日本へ行くという報が伝えられ、3月29日、AREVA社のディレクター、アンヌ・ロベルジョンと来日し、サルコジ大統領が日本で救済に向け演説をした。

さて、それからだ。よく分からないことに、日本の一部の報道で、日本が頼んだからというよりは、フランスが率先して技術援助を申し出て、突然サルコジ大統領が来日した、というはなしが聞こえてきたから耳を傾けないわけにはいかなくなった。これにさらに輪をかけ、フランスの大統領がわざわざ来日までして援助を申し出たのは、「原発事故の構造が知りたいのではないか(技術的好奇心?)」とか、「フランスの原子力開発にほかの国のような原発反対運動でストップがかからないための国策保護」、といったような勘繰りともつかない憶測を民放のTV局がして、提供される援助をありがたがる雰囲気でもないのに少々驚いた。前の週、フランスでは日本が援助を求めてきたのでフランスはそれに快く回答したことになっているのに、このメディアの食い違いはいったいどういうことだろう。

それより少し前、フランスが援助物資を送る段階で、核燃料の冷却水を100トン送るとTVで専門家が言ったとき、「100トンとは少なすぎませんか?」とアナウンサーが質問したが、これに対し専門家は、「この数量は、日本側からの要請に従ったものです」と答えて会話が閉じた。あれやこれや思い出しても、 事実と周辺の憶測の入り乱れは、話や行動の一番最初のきっかけとなるものが第三者にきちんと知らされていないと、自然に見方が歪曲されていってしまうことを指してやまない。

原発そのものがすでに大きな見えない部分をかかえている。情報のありようが大きく問われる震災でもある。(S.H.)