2020年3月29日。夏時間を迎えたというのに気温が低く、マイナス4℃の朝を迎えた地域でぶどう畑が被害を被り、今夏の収穫の80%を失ったという。コロナウィルスによる人間の活動の休止に加え、経済への追い打ちもあちこちで厳しい。
新型肺炎コロナウイルスによる死亡率は、先年大流行をしたインフルエンザの10倍という話だ。

この新型肺炎の特徴は、感染者の重篤状態にあり、肺をやられて息ができなくなって喉に管を通す人工呼吸器をつけなければならなくなり、そういった患者はほとんどが意識を失っているのだとか。3月中旬、ムールーズの病院でたくさんの重篤患者が出てしまい、手に負えなくなって軍用ヘリでそのうち6人をパリの病院へ運んだことから、病気の異常さに驚いた政府がフランス国民の外出規制に踏み切った、という経緯がある。

重篤患者の治療のできるこうした人工呼吸器を病院はたくさん配備しているわけではないので、病院へ受け入れる患者を選別しなければならなくなっているというが、感染しているとわかっていて症状の重い患者を自宅に返さざるを得ない状況が続いているイタリアの死亡者数の高さは実に悲劇的だ。昨日、この国の総死亡者数は1万人を超えた。

フランスはパリを含むイル・ド・フランスが人口が多いこともあって感染者が多い。医療関係は緊急以外の手術や治療を一切延期し、コロナ感染患者の治療を集中的に行っているが、溢れかえる重篤患者でイタリアのように入院する患者の選別をし始めている(ハフポスト 2020.3.27)という。限られたベッドと資材。高齢者や持病のある人は後回しになり、若い人がそれらにありつくという。フランスが発表する死者数も、病院で数えあげる数値であって、病院に収容できない高齢者のいる養老院やその他の施設で亡くなった人たちは数に入れられていない(政府発表)。

3月16日にマクロン大統領がTV演説で、医療関係に不足しているマスクや防護服に言及し、数千、数億枚のマスクを用意すると言ったが、ミシンやお針子のいるオートクーチュールがマスク製造に乗り出したというニュースが流れても、まだ現物は一箱も医療現場に届いていない。それから二週間が経過した来週、ようやく上海から政府発注のマスク500万枚を乗せた第一便がフランスに到着するという。しかし、医療に利用されるマスクは感染を防ぐために4時間ごとに取り替えなければならず、患者が満杯の全国の病院には雀の涙でしかない。対策の遅れ、政府の見通しの甘さとはこのことだ。
外出規制は、食料や日常品の調達、薬局や医者の予約などが許されているが、内務省が作成した外出許可証に自分で目的を書き込んで署名をしたものを携帯していないと、不要の外出をしたとみなされ、1万5千円ほどの罰金が科せられることになっている。日用品を仕入れるスーパーにはほぼきちんと商品が並び、これはTVで首相が「食料や日用品流通の確保」をコミュニケで約束しているため、買占めのようなパニックは起こっていないのが救われる部分ではある。
フランスの数字。1日で病院で死亡した感染者、292人。感染が始まってから今まで合計、2606人が死亡。
入院患者数、19354人。うち、4632人が重篤。感染者総数は40174人となった。
3月17日から二週間のロックダウンは、また二週間の延長をしいられ、名目4月15日まで。
一方、ドイツは、早期発見、早期隔離、早期治療を主眼に一月初頭からコロナ検査(フランスの5倍)をやっていて、一番死亡率が低い(総計で300人強)。
生きるも死ぬも国(政治)とその体制に大きく依っている。
(S.H.)