小学校から中学を出るまで「共感を体得する授業」があるというデンマークは、世界で二番目に幸福感を感じている国民だそうだ。他の国の大半(特に日本)が教科を教え記憶させ間違いを直すことばかりに重きを置いている一方で、自分の環境やクラスメートと共感して自分を積極的に社会の一員であることに目覚めさせる授業が存在するとは、これこそ目からウロコ。その授業の効用が幸福の国となって現れているという、その内容に迫ってみることにした。
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https://www.thealternative.org.uk/dailyalternative/2019/10/13/denmarks-empathy-classes
どうやってデンマークが世界に名だたる幸福の国になったか? 学校が支える「共感授業」
実を言うとデンマークだけではなく、北欧のすべての国に通じて、低学年から学童に「共感」を教える授業が教育過程の中に組み込まれている。この教育の現場で行われる授業がデンマーク人の幸福を育むの秘訣なのだという。
1993年から、デンマークの教育システムに、生徒へ「共感」を教える必修クラスが「Klassens tid クラス・タイム」という名で組み込まれ、毎週1時間の割合で、6歳から16歳までの生徒に行われている。子供の成長過程において、「共感」は集団の中で生きるときに、「衝動(反射的に行動を起こすもの)」として非常に重要であると考えられ、共感を習得することによって、子供相互の関係が深まり、仕事がスムーズに行われ、いじめを防ぐのに役立つと考えられている。
共感は概して、リーダーや起業家などの管理者能力を促進するので、共感することのできるティーンエイジャーは、自己陶酔型の子供と比較して、目標に正面から挑み、より成功もしている。このことはまた、成功する人は一人で行動しているわけではなく、私たちは皆、人生のうちに何かしらいい結果を生もうとするならば、他の人たちのサポートが必要であるということも物語っている。
授業では、生徒たちは自分らの個人的な問題や、学校に関する問題など、身近な問題について話し合いをする。その後、教師が加わって同じ問題を話し合い、解決策を見つける努力をする。この課程で一番重要なことは、教員も子供たちも、問題について善し悪しの判断をする立場にならないことだ。つまり、大事なことは、彼らが問題から生じる感情を認識し、尊重することなのである。
「クラスは、一つの問題に関して、話し合いで出てきたすべての側面をあらゆる角度から丁寧に観察し、みんなで解決策を見つけようと努力する。努力をすることによって、ひとりの子供の問題が、より大きなコミュニティの問題として、みんなに認識されるのです。そうやってみんなが認めた時に、自分は独りではなく、みんなの中の自分であるという重要な意識を生むのです。」(Iben Sandahl)
子どもたちはまた、相互尊重の重要性も学ぶ。子供達は「自分は一人ではなくコミュニティーの一員だ」と感じているので、みんなの前で話すことを恐れない。話し合うことをためらわない子どもたちは、リラックスして hygge(居心地の良さ)を享受している。このHyggeとは、デンマークの文化に密接に関連した現象であるため、正確に翻訳できない言葉でもあるが、心理的平穏、親しみ、温かい雰囲気などを総称したもので、デンマークの幸福感の基本的な概念でもある。#hygge
いじめ対策プログラムは全国で実施されており、3〜8歳の子供たちのいじめやからかいについて話し合いをし、お互いに配慮し合うことを学ぶ。このプログラムにはプラス効果があり、98%を超える教師が他の教育機関に推薦している。
「デンマーク人が共感を教えるには2つの方法があります。最初の方法は、チームワークを教えることです。子供たちはそれぞれ違った能力を持っているので、個人の持つスキルと才能の向上を目指しており、競争意識を高めるのは目的ではありません。優劣をつける賞などはなく、教師は子供達が自分たちのリレーションシップの中で自己向上するように力を添えているのです。」(Sandahl and Alexander)
デンマーク人は共感とお互いのコミュニケーション技術を発達させるために、遊びに多くのスペースを設けている。 1871年以来、この国では「遊び・プレー」は教育ツールと見なされてきた経緯からだ。
「二番目は、子供たちが仲間との共同作業の重要性を学ぶことです。共同作業を学習することは、子供の間のコミュニケーションを促進し、他の人がどのように情報を収拾しているか、その方法に注意を向け、自分もそうやってみることで仕事の仕組みを理解したりしながら、共感スキルを作り上げていくことに役立ちます。」(Alexander)
「構造化されていないゼロからの遊びは、すべての子供の人生に必要な自然な要素として認められるべきです。デンマークでは、遊びは贅沢とは見なされません。反対に、発展の礎石と見なされます。遊びの中で子供は、自由にまた最大限に能力を発揮し、成人の制約なしに個々の才能を伸ばすことができます。
外で遊ぶことは危険に思えるかもしれません。…。しかし、事故を恐れて過保護になり、彼らから自然の中のあそびで想像力を発揮することを取り上げてしまったら、麻痺したように気の回らない臆病な子供を作り出す危険性があります。人生とは、ひざの皮を擦りむくことでもあり、転んで立ち上がることでもあります。長期的に見れば、子供の「回復力(失敗しても再起する能力)」を形成するのに役立ちます。そして、この回復力こそ、より多くの幸福を育む最大の要因の一つなのです。」
子どもたちを保護し過ぎると、自分の想像力を駆使したり探求したりできず、やってみる前から不安を抱えて躊躇してしまう子どもが育つ危険性がある。子供たちが物事を試したり自由に遊ぶことを妨げるのは、いつも私たち大人であることを認識しておく必要がある。
参考:
引用 https://www.thealternative.org.uk/dailyalternative/2019/10/13/denmarks-empathy-classes
The book The Danish Way of Parenting, by Iben Sandahl, a Danish psychotherapist, educator, and Jessica Alexander, an American author, and psychologist.
My opinion: オタクやいじめの多い日本には耳の痛いことばかり。教員の養成も改めて問われる「共感授業」。通念的な「善し悪し」判断の押し付けや「空気を読む(読むだけで話し合いをしない)」と言うのも一切教育から廃棄してはどうか。共感は、相手を認め尊重するということであって、同じ考え以外の人間を排他することではない。これが国民全体の幸福につながると言う。教育基本法に確か「社会人としての資質を育む」というような意味のことがあったと思うが、ズバリこの「共感教育」がその科目ではないだろうか。遠いなあ、日本。(S.H.)