世界…

今週、アメリカのブレがますます酷さを増し展開が加速しているらしい。そんなこんなの話。

フランスのジレ・ジョーヌ(黄色いベスト)の抵抗運動の底には金持ち優先の政治とその過半数以上が億万長者である閣僚への強い抵抗があるらしい。政権が成立した時にマクロンは、給料体系の話題の際に「月給 8000ユーロ(約 100万円)」を一般例としてあげてひんしゅくを買ったという話をこのブログでも引いた。そのマクロンは先日全国放送でジレ・ジョーヌたちへ、オイルの値上げを見合わせ最低賃金で働く人々に毎月 100ユーロを支給するという暫定策を提示して火消しを試みた。閣僚の多くが初めて政界入りし国政を摂っていることから「シロウト集団」と揶揄されながら2年目を迎える政府は、支持率も20%代と最低で混迷を極めている。

さてアメリカ。トランプ氏の気まぐれ(計算づくかもしれない滅茶苦茶さ)による責任者の移動が激しい。この水曜、トランプ氏は米軍のシリア撤退を決めたが、翌日それに抗議してマティス国防長官が辞任し、ISIS特任大使が国防長官に呼応するように辞任した。シリア撤退はペンタゴンや共和党を始め国中が一斉に反対している上、同盟国を危機に陥れる懸念が強い。国防長官の抗議辞任は、前代未聞というし、トランプ氏の命令通りアメリカが撤退して一番得をするのは誰かといえば、ロシアだそうだ。

すでに二週間前、ホワイトハウス・チーフのケリー大統領首席顧問が年内に辞めさせられることが公になり、また財務長官は公金の使い込みが原因で辞任する運びとなった。一方、司法長官は「辞めたらどうか」というWHの意見を受けて11月に辞任し、代わりにトランプ氏のいいなりになる人間が暫定的に長官席を埋めている。WHのチーフ、国防、司法、財務が空席と交代の混沌状態にあるのがこの年末のアメリカだ。

その上土曜、民主党の強い反対にもかかわらずトランプ氏は無理矢理政府の一部をシャットダウンした。トランプ氏の選挙公約だったメキシコとのボーダーに壁を建設するその費用捻出を議会が承認しないからだ。「メキシコのボーダー・ウォールは誰が払う?」「メキシコ!」というトランプ氏とサポーターとの掛け合いから2年。メキシコに払わせるつもりでいたトランプ氏は、メキシコ側からの強固な拒否に遭い、結局国民の税金で作ろうという結論になった。しかし建設費用は57億ドル。議会はそう簡単には承認しない。「認めないなら政府を閉める」、という談判が大統領の権限で実現してしまった。嘘の公約が実現しなければならない難題になってトランプ氏自身に跳ね返ってきているというわけだ。

トランプ就任時に「ワールド・オーダーの転覆」という言葉が流行った。今週のアメリカは混迷をはるかに超えて破壊的だ。パリ協定から脱退し、気候変動への働きかけどころか化石燃料を再び開発させる(開発に伴う環境汚染などどうでもいいらしい)というトランプの代弁をするスピーカーは先日、聴衆から激しいブーイングを受けた。こうした聞く耳を持たず命の将来を顧みない愚劣な政治への強い抵抗は、COP24でグレタが行った演説に見事に反映しているように思う。

トランプ氏の加速する錯綜の一週間の裏には、自分の大統領キャンペーンチームと選挙へのロシア介入の調査をしてきた特別捜査委員会が2年の捜査を2019年2月に終える、と発表したことも原因の一つとしてあるかもしれない。はじめからトランプ氏とロシアの関係は煙モクモクのスモーキング・ガンだらけと言われてきたが、とうとうその結論が2月に発表されるらしい。特別捜査委員会の調査によりアメリカ司法局がロシア軍人13人を起訴したが、その後もトランプを優位に置こうと試みているらしいロシアのハッキングは続いているという。

政府がシャットダウン(今回は一部)をしても機能しなければならないところで働く数万人の人たちはシャットダウンの間は給料をもらえない無償労働だそうだ。トランプ氏本人はこの間、フロリダの自分のゴルフ場で年末のホリデーを過ごす予定だったが、行きがかり上、政府一部シャットダウンでホワイトハウスに居残りという始末だという。

2016年の国民投票以来揺れ続けるイギリスの動きも混沌だ。Brexitまで100日以下となり、ヨーロッパもイギリスも「no deal」を覚悟しているらしい。no dealとはつまり、欧州連合内にいれば、連合国間の輸出入関税はゼロだし、どこへ行っても自由に職を選べるし、移動も居住も自由であるが、一切欧州連合とネゴシエーションをせず、交流に有利な権利を全て投げ出して欧州連合からスポンと出てしまうことを指している。no dealでイギリスが欧州連合から孤立を余儀なくされるとすれば、ヨーロッパ圏のオーダーも大きく変化するだろう。ヨーロッパのリーダー列国からイギリスが出る一方で、アメリカはすでにNATOやNAFTAから手を引いてリーダーシップを捨てた。

さてフランスは、196カ国が出席したポーランドのCOP24にマクロン大統領が出向かなかったことで、「パリ協定の守護国」が不在だったと批判を受けた。ジレ・ジョーヌの抵抗運動が口実の欠席だったが、こうした首脳たちの姿勢が、地球と人間のためのグローバルなヴィションの推進を阻んでいる。政治が介入しないエネルギー・トランジッションを推し進めるのは誰か。経済界のロビーがすでに主導を取り始めているらしいのは、まったく残念なことである。

メリー・クリスマス。

(S.H.)

 

米TV局、NBCのニュース、2018年12月17日の週の出来事

月曜、上院、ロシアのハッカーがムラー調査の信用失墜を目的にネットにフェイク・ニュースを流している。

火曜、マイケル・フリンは、服役をしない代わりにムラー特別委員会に重要情報を提供していたが、情報に嘘があることが発覚。裁判官が憤慨して「国を裏切った」フリンの採決を延期。波紋を投げかける。(司法のパワーが話題になる)

水曜、トランプが米軍のシリア撤退を発表。

木曜、マティス国防長官、辞任。

土曜、政府、一部シャットダウン。

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