政治不安定が生物多様性の危機を増大させる
科学雑誌『Nature』(12月20日、水)は、生物多様性に関する広範な研究結果を発表した。「動物の第6期大量絶滅が加速しているという悲しい現実は、今や周知の事実だ。人間活動の結果として、地球上のいたるところで脊椎動物と無脊椎動物の種や類例、および生息域が後退している。政治不安定や政策運営がうまくいかない国々が、経済成長や人口急増ならびに気候変動に対峙するのと同様、生物多様性の侵食をも促しているという点については、あまり言及されていない。… 法的社会的に堅固な比較的安定した法治国家において、自然保護地区が野生生物の多様性を保全していくことができるようだ」。
ケンブリッジ大学が率いる国際研究者チームは、水鳥の種(アヒル、サギ、フラミンゴなど)を生物多様性の状態を計る指標として利用。陸地を含む海岸線の約13億ヘクタールに広がるそれらの生息地である湿地帯は、最も豊かな多様性を見せるところでもあり、地球上で最も危機に瀕しているところでもある。科学者たちは25年間、世界中の2万6千の観測地で、240万羽以上にものぼる461種の水鳥を調査し、地域に応じてこれらの動物の数量変化を導き出した。導き出された原因を理解する指標を、農業拡大、経済および人口の増加、気候変動、保護努力、政策運営能力(規則を効率的に適応しているかどうか)、および、種の生物学的特性(個体群の大きさと地理的領域)としたもの。
ニュースソース、ル・モンド LE MONDE | | Par Audrey Garric
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生物多様性の保全に、保護法の強化が必要
By Martha Harrison December 21, 2017
生物多様性に関する悪いニュースは毎日のように聞かれる。植物や鳥類、昆虫や魚が、それらの生息地の喪失や水不足、過剰な狩猟(狩漁)のために危機的に減少している。国連の報告では、地球の種の豊かさが失われる現状にブレーキをかけるため各国政府は、1990年以来 1800万平方キロメートル以上の保護区を加えたという。しかし、『Nature』誌に1月に掲載される予定の研究には、聖域を指定するだけでは不十分であり、それ以上の努力が望まれると示されている。調査結果は、生物多様性の損失にブレーキをかける最大の要素は、堅牢な保護法が常に強化されていくことにあるというのだ。
ケンブリッジ大学動物学部および絶滅危惧研究センターの研究員でこの論文の主著者である天野達也氏は、どの地域が一番種を獲得し、あるいは喪失しているか、またそれはなぜか、という基本的な疑問をもとに、世界中の湿地から収集したデータを用いた。氏は、人間による土地利用の影響、種のサイズやわたりなどに見る生物学的特性、また土地の保護について保護法の制定や施行の有無、法の効力など要因を比較したのである。
天野氏は答えを得るために、世界の25,769の観測地点で、湿地に住む461種の水鳥240万羽以上の記録を採取した。特に湿地の鳥類を選んだのは、世界的にそれらの生息地が脅かされているからであり、すでに何十年にもわたり湿地の水鳥の減少を調査してきたからである。(そのデータは、Wetlands InternationalおよびAudubonのChristmas Bird Count音頭をとって、International Waterbird Censusから得られたもの。)
「政策が生物多様性と密接に関連していることに驚いた」と天野氏。最も生物多様性の損失が進行した現場と政策の役割の両方を計算したデータに誤りがあると思い、彼は自分の分析を繰り返しチェックしたのだという。氏は、一般的によく知られている急激な経済成長や、農業開発による圧力のある東アジアやオセアニアの熱帯雨林などの湿地帯で最も酷い生物多様性の損失が発生するだろうと考えていたのだ。しかしそれとは反対に、中央アジア、西アジア、南アメリカ、アフリカの一部が最も打撃を受けていることを発見した。氏は、十分な湿地の保護地区を確保したイランの例を挙げた。法的には保護されているはずの水鳥類が大幅に減少したことに言及し、狩猟規制がゆるすぎ乱獲が行われていることが原因であるとした。一方で、湿地の水鳥類の生息状況は、欧州連合(EU)や北米の一部など、環境保護政策の強い地域では良好であるとしている。 (氏はまた、北アメリカで保護政策が弱まると、将来私たちは自分の海岸で生物多様性の多大な損失を経験することになる、と指摘した)。
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