海水の酸化が海の生物全てに影響を及ぼすことに

Roger Harrabin BBC環境アナリスト

「現代社会が排出する二酸化炭素が海洋をより酸性にすることによって、すべての海洋生物が影響を受けるだろう」という報告書が、250人以上の科学者の8年に及ぶ調査研究で発表された。それによると、海洋生物のうち特に生体の初期段階が被害を受けるという。成長してオトナになる数が、今日の4分の1から12分の1にまで減少する可能性があると研究者は警告している。

この調査集計はドイツの BIOACID projectのもので、今年11月にボンで開催される年次総会で、主要な成果をまとめた報告書が気候変動交渉担当者に渡される予定だ。

『海洋酸性化の生物学的影響に関する報告書』の著者らは、一部の生物は化学変化から直接利益を受ける可能性もあるとしながらも、むしろ、食物連鎖体系の変化によって間接的に悪影響を受ける可能性の方が強いという。海洋の酸性化は、化石燃料からCO2が海水に溶ける込むことによって炭酸を生成し、これが水のpHを低下させる原因となる。さらにこの研究で、気候変動、汚染、沿岸開発、過剰漁獲、農業の化学肥料使用などが、酸性化がもたす変化へ悪影響を及ぼすことも明らかになった。

産業革命の黎明以来、世界の海洋表層水の平均pHはpH8.2から8.1に低下している。これは同時に約26%の酸性化を示している。

この研究の筆頭著者であるキールの海洋研究センターのUlf Riebesell教授は、海洋酸性化の影響について、「海水の酸性化は、程度が異なれど、すべての海洋生物グループに影響を及ぼします。ウォームウォーターサンゴは一般的に冷水サンゴよりも敏感ですし、クラムと巻貝は甲殻類よりも敏感です。また、生物の初期段階は成体生物よりも影響を受け易いことがはっきりしました」とBBCに述べた。

 

アジェンダ

2009年以来、BIOACIDプログラムの科学者たちは、海洋食物連鎖を通してそれぞれの生命体がどのように反応するか、また、進化的適応が起こることで新しい挑戦ができるかなどの点について、異なる生命段階で海洋生物がどのように酸性化の影響を受けるかを研究してきた。

研究室での研究のみならず、北海、バルト海、北極、パプアニューギニアで実地研究が行われ、実験対象になった海洋動物種のほぼ半数が否定的な反応をしたことを明らかにする海洋酸性化の影響に関する350以上の研究書の総体が、来月、気候変動サミットで代表団に手渡される。

海水CO2濃度の増加率

生命体の初期段階で、大西洋タラ、青いムラサキ、ヒトデ、ウニおよび海蝶が悪影響を受けたが、フジツボは酸性化に敏感ではなく、光合成のために炭素を必要とする藻類などの植物は却って繁殖に有利になる可能性がある。

BIOACIDの研究の重要性を支持するイギリスの海洋酸性化の研究家Carol Turley博士は、「この研究は、微生物から魚までの幅広い海洋生物に酸性化が及ぼす影響についての洞察に大きく貢献するもので、海洋の温暖化やその他のストレス要因と合わせて、生態系レベルで調査し、人間社会に影響を及ぼす可能性を探求するものです。今年11月のボンでの国連気候変動交渉では、海とその生態系は無視されるべきではないことが明らか」とBBCに述べた。

会議はドイツで開催されるが、議長には海洋に及ぼすCO2の影響への配慮を代表団にはっきり促したいフィジー(海に囲まれるオセアニアのフィジー共和国、イギリス連邦加盟国)が議長を務めることになっている。

 

MAREK MIS/SPL - BBC science-environment

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ニュースソース:BBC Science & Environment

My opinion: 

都市生活から離れたところにある海や山野。我々の日常生活から離れたところで環境の変化が刻々と進んでいる。その変化は人間の都市生活が生み出す汚染が大半なのは、もう随分前から言われているが、人間のエゴ、鈍感さ、日常への偏執はなかなか改善しない。遠くのものを伝えるのも人間だが、報道が手薄なのはやはり頑強なエゴのせいか。

都市にいて変化が見えないうちに行動すればなんとかなるかもしれないが、都市の人間にも変化が現れたらもう手遅れだったりする。地球の健康は人間が管理しないと。(S.H.)