フランス国民戦線マリーヌ・ルペンの場合
ヨーロッパ議会は2017年4月、フランスの極右政党国民戦線(FN、フロン・ナショナル)議員らが欧州連合の公金から500万ユーロを横領したことを受けて、マリーヌ・ルペン欧州議員(フランス国民戦線党首)の議員特権を取り上げることを決めた。
フランス共和党フランソワ・フィヨンの場合
フランソワ・フィヨンといえばサルコジ政権時代の首相であり、先のフランス大統領選挙で共和党の候補に選ばれた政治家だが、大統領選真っ只中に、架空雇用による公金横領の容疑がかけられた。本人が議員になってから妻のペネロープをアシスタントに雇い、25年間公金で途方もない給料を払い続け、また二人の子供に初任給から月給1万ユーロの議会アシスタント職を斡旋したという。現実にはペネロープがアシスタントとして働いた痕跡はどこにもなく、その給料額は累積で百万ユーロを超え、公金横領の嫌疑は否応なく高まっていった。結局このスキャンダルで、フィヨンの支持率は急落。大統領選に敗北した。
アメリカトランプ政権下の場合
2017年9月29日、トム・プライス健康福祉長官が100万ドルにも上る税金横領で辞任した。トランプ政権下の辞任と更迭は合わせて19人目。今年5月からこの9月にかけて、空軍などの飛行機を26回もプライベイトな旅行に濫用しており、これらジェットにかかった費用合計100万ドルの返済を要求されていたが、トランプ大統領に首を切られる前に辞任した。軍用ジェットを利用したのはプライスだけではない。財務庁長官ムニューチンが新婚旅行に空軍のジェットを、また、環境保護長官のプルイットが自分の仕事に職権外の空軍の飛行機を濫用したことが問題化している。
トランプ大統領とその家族の護衛費は大統領就任直後から高額すぎることが問題になっていたが、すでにこの夏、今年度の予算の底をついて、その後どう融通しているのかあまり公表されていない。大家族の各メンバーに護衛をつけねばならず、特にトランプ大統領のウィークエンド・ゴルフは68日目と多くなって、ウィークエンド移動のたびに護衛の移動費滞在費に金がかかる。就任当初の計算では、オバマが在任8年間で費やした護衛費用をトランプは1年ちょっとで消費するという結果が出ていた。
億万長者の公金使い込み
職権や地位を利用して市民の税金を湯水のように使い、結局払い戻しもせずに辞任し、自分の腹は痛くもかゆくもないという図々しさの構図には、呆れ返る。世界中同じ構図が見えるのは、世も末か。一見してFar Rightの人たちのパターンのようにも見えるが、現実はFar Rightに隠れた「金持ちのエゴ・ファースト」だ。透明度を要求される政治家になったために、それが表面に出たというだけなのだろう。
アメリカのトランプ政権は億万長者だけで構成されている。これらの人たちは今、トランプ指揮下で税制改革を推し進めようとしており、「中産階級が助かる税制に」というトランプの説明とは裏腹に、バーニー・サンダースなどの民主党議員やニューヨーク・タイムズなどの計算によれば、トランプ法案では金持ちしか減税にならず、トランプとその家族が40億ドル儲かる(減税となる)計算になるという。40億ドルという数字が正しいかどうかは別として、減税のために必要な資金を得ようと、トランプは国民の保険「オバマケア」を4度も議会にかけて潰そうとした。3000万人の中産階級の人々の保険を取り上げ、その分の政府予算を金持ちの減税分に当てようという算段だ。オバマケアを取り上げられ、治療継続のため私立の保険会社に入ろうとすると、10倍20倍の保険金を支払わなければならない。年俸2万ドルの人が1万ドルの保険料を支払うのはほとんど不可能に近い。トランプがオバマケアをつぶそうとする度に、がん患者や車椅子にのった長期治療を必要とする患者たちが抗議行動に出て、直接の生死の問題であることを世間に知らしめ、生きる権利を主張しなければならなかった。民主党や一部の共和党議員が非人道的、殺人減税と呼ぶ究極の悪政が、今年一年ずっとアメリカでは行われようとし、それに対する抵抗が続いている。
フランスのマクロン政権はまだ人間性を失っていないように見えるが、先日の税法改正の説明には「月俸8000ユーロの家族(ほぼ100万円)」を例にとって税金の変化を説明したのには驚いた。「月給8000ユーロ」という高給はフランス国民の収入の典型ではない。また今まで、税法改正の説明でこのランクしか例としてあげなかったフランスの首脳はいない。これまでの慣例がなくなり、国民大多数の中産階級が政治から切り捨てられたような錯覚さえ覚える報道に何を見るか。国政にツイッターを使い始めたマクロン。若い政権の行方はまだま予測がつかない。
https://twitter.com/EmmanuelMacron/status/914823332192751616
こういう世界、ゆめゆめ右翼の金持ちのいうことを信じてはならない。
(S.H.)