環境レガシーをどこまで守れるか、オバマ大統領、政権交代を目のまえに対策を急ぐ
−北極のエコシステムを聖域に。アメリカのオバマ大統領は、大西洋と北極海のアメリカ領海でガスと石油の掘削を永久に禁止すると発表した−
オバマ大統領は12月20日(火曜日)、北極海と大西洋の広い領域での石油等化石燃料の掘削禁止を命令した。大統領として最後の意思表明となるものだ。ホワイトハウスでの仕事が終わるまでちょうどあと一ヶ月、オバマ大統領は絶滅危惧種の植物や動物のいる地域を聖域化して守り、環境に携わったその業績をここで完遂しようとしたもようである。環境政策でオバマ大統領と対立する後継者ドナルド・トランプ氏が、就任の暁には原油の抽出規制を撤廃して経済政策へ最大限活用することを公約したことへ、オバマ大統領が半ば軽蔑を込めて反逆をした形だ。(ル・モンド)
オバマ大統領は数ヶ月前すでに、今後5年間これらの領域を保護する政策を発表していたのであるが、新しく加えられたのは、1953年の大陸棚に関する法律を基にして、ガスや石油のすべての開発*からアメリカの海を守る権利を大統領に与えたことであり、この法によって保護が恒久化することだ。(大統領がこの法律を利用するのは初めてのことではなく、これまでにも、ドワイト・アイゼンハワーとビル・クリントンが在職中に行っている。)
(*化石燃料、特に原油やガスは掘削するだけで土地を荒らし取り返しがつかない状態にすることは、Exxonの原油掘削の空撮などを含め、すでに先のブログでも映像「Before the Flood」の紹介で言及した。)
歴史的な環境保護へのコミットメントと気候変動へのインパクトへ接近
https://www.whitehouse.gov/the-record/climate
−ホワイト・ハウスから発信してきたオバマ大統領−
オバマ大統領は、「子供や地球そして未来の世代にとって、気候変動ほど大きな脅威はなく、これに挑戦することが一番重要な課題である、ー この問題解決に向けて地球上にこれほど素晴らしい装備を備えた国は他にないのだから」とコメントしている。
オバマ大政府は、米国は経済を成長を続けつつ、これまで以上に気候変動に対処するために多くの努力をしてきており、 事実、オバマ大統領が就任して以来、炭素排出量は9%減少し、その間米国経済は10%以上成長している。
サンゴ、クマや珍しい魚のいるエコシステム「北極」
バージニア州ノーフォークの大西洋岸全域からメイン州に至るカナダ国境までの150万ヘクタールという広域には、特に深海のサンゴや珍しい魚がいる。法令は、アメリカ政府管轄の北極海のほぼ全域4600万ヘクタールをカバーするが、ホッキョクグマやクジラなど絶滅危惧種が生息している。
海岸線はカナダと隣接しており、同日の12月20日、カナダのジャスティン・トルドー首相も(オバマ大統領の表明に合わせ)、カナダ海域での化石燃料の新規掘削を禁止すると発表した。
「隣国カナダと協力態勢を組み、合衆国は北極のエコシステムを保護するという歴史的段階へ入ったのです」とオバマ大統領。「これらの措置は、地球のほかのどこにも見られない貴重で脆弱な生態系を保護するためのものです」とオバマ大統領は強調する。「起こりうる石油流出から守ることを意図している」と付け加えた。原油流出の事故処理が、特に北極のようなところでは非常に難しいのは明らかだ。
次期新政権がこれらの新しい規定を崩そうとするか、疑問となるところだが、気候変動懐疑派(気候変動を信じない)の多い共和党議員で占められる新政府議会は、この決定を覆すために全力で奔走するだろう。(ル・モンド)
気候変動懐疑派
トランプ氏は、キャンペーンを通じて気候変動が人間の活動を原因とするものであることを一貫して否定してきた。就任直後最初の100日で実現したい公約は数あるが、その中に、「エネルギー開発を制限する規制を全て取りやめる」、「オバマが禁止したキーストーンのパイプライン設置(石油)を再開する」、「国連に差し出す数百万ドルの援助を取りやめる」、「オバマが設置した法令を全部取りやめる」とある。国連との協力体系の中で気候変動へチャレンジし、クリーン・エネルギーにエネルギー変換をすると取り決めたこれからの計画を全て握りつぶすかたちであると考えていい。
したがって、その政治中枢には気候変動を信じない「懐疑派」を据え、化石燃料のビジネスを推進する企業と連動していく人選をしている。米国環境保護庁(EPA)並びにオクラホマの法務長官にはスコット・プルーイットを任命した。スコット・プルーイットは、長年にわたり石油会社に肩入れをし、オバマの原油抽出制限に反対し方向転換しようとしてきた人間であるが、このポストに就くと法的手続きに関与できることになる。
「次期政権に我々の海を汚させてはならない」と言うオバマ法令には説得力があるが、現実には、法務局が動けば法律が撤回される恐れがあるという(環境保護協会シエラクラブ会長のマイケル・ブリュヌ)。実際過去にも、ビル・クリントンが12000万ヘクタールの海を聖域化したのを、ジョージ・ブッシュが撤回させ、そのうち2000万ヘクタールを原油開発可能にさせてしまったという事実があるのだ。
BPの原油ステーションがメキシコ湾で爆発し、長い日数海を汚染したのは記憶に新しいが、原油開発は周辺の環境に多大な傷跡を残す恐れを常に宿している。
En savoir plus sur http://www.lemonde.fr/planete/article/2016/12/21/forages-obama-sanctuarise-des-millions-d-hectares_5052173_3244.html#F55oUwQxDXS1oQbC.99
オバマ、トランプが就任する前に行動へ、Obama takes action before Trump takes office/CNN
Ajoutée le 20 déc. 2016
オバマ大統領はトランプ就任の前に、環境とグアンタナモ湾問題を法的に補強へ乗りだした。
Obama acts to curb Trump’s EPA agenda/CNN
Ajoutée le 20 déc. 2016
新しくオフショアでの原油掘削を禁止を表明。オバマの環境レガシーを護る意思を込めて。
トランプ就任始めの100日で行うと公約した気候とエネルギー政策?
−次期大統領は、就任直後に国際気候変動協定から撤退することはできるだろうが、国内の転換には時間がかかるだろう−
https://www.scientificamerican.com/article/trumps-first-100-days-climate-and-energy/
次期大統領は、彼が宣言している内容を実行させるほどの力は持たないという見方が強い。トランプ氏は、オバマ・レガシーから逆行。パリ協定から撤退、アメリカ環境保護庁(EPA)の解体、並びに国内エネルギー開発(化石燃料やガス)を制限するものを廃止し、国連のグリーン気候基金への資金援助を取り消し、化石燃料開発の制限を解除するなどのエネルギーと気候に関するあいまいながらも特定の約束をした。が、彼は一体、現実にはどの程度のことができるのだろうか。
彼の計画の多くは、膨大な時間とエネルギー、並びに議会の承認などを必要とする。また本人自身が、無数の訴訟や官僚組織の障害に遭遇して挫折する可能性も高い。コロンビア大学の国際・公共部門プロフェッショナル・プラクティスのジェイソン・ボルドフ教授は、「あまり公約に現実性がないとはいえ、トランプの勝利の影響は否定できない、気候変動に対する対策の実行は遅れることになるだろう」と述べている。
オバマ大統領、アメリカのクリーン電力計画:ホワイト・ハウス
President Obama on America’s Clean Power Plan/ The White House
Ajoutée le 2 août 2015
2015年8月2日、オバマ大統領は、アメリカのクリーン電力計画の最終段階を発表。気候変動との闘いへの挑戦に向けて最大のそして最重要なステップを踏み出した日。August 2, 2015.
私たちの電力からカーボン汚染を追放しよう:ホワイト・ハウス
Reducing Carbon Pollution in Our Power Plants/ The White House
Ajoutée le 31 mai 2014
オバマ大統領は今週、危険な炭素汚染についてEPAによる新しい対策を協議した。計画案はすでにあちこちの州や街、企業などで努力を重ねてきたものだ。
What Trump’s Presidency Means for Climate Change: A Closer Look
2016年は観測史上始まって以来の最高に暑い年となった。暑い年として記録されている17年のうち16年は2000年以降である・・・。