フランス文化省は2013年3月19日、フランスの美術館で保管されていた絵画を持ち主へ返還する式典を催した。絵画の所有者は、第二次世界大戦中、フランスに在住していたユダヤ系オーストリア人。ドイツのナチスやフランス警察の追及を逃れて1939年フランスを脱出する際、持ち出すことができずにフランスにおいていった所蔵品で、アメリカのボストン在住の孫にあたるトーマス・セルドルフ氏が式典のため来仏。報道陣を前にオレリー・フィリペッティ文化大臣がセルドルフ氏に手渡しし、大臣はこれからも積極的に戦時中に不当に収集されたり迷子になった絵画の持ち主を探す研究を進めることを約束した。セルドルフ氏への作品の返還は70年ぶりとなる。

絵画は、17、18世紀のイタリアの画家 (Gaspare Diziani, Sebastiano Ricci…)のもの6点。返還手続きは生易しいものではなく、ボストンから駆けつけた84歳のセルドルフ氏は、繊維産業を営み芸術愛好家であった祖父のリチャード・ナウマン氏の思い出を語りながら感激していた。

リチャード・ナウマン氏は第二次大戦前、200点あまりの作品をコレクションしていたが、祖国オーストリアが1938年にドイツのナチと協定を結んだことでオーストリアから逃亡せざるを得ない状況に陥り、その際にコレクションの一部をオーストリアにも置き去りにしなければならなかった。家族とともに幾ばくかの作品をかかえてパリへやってきたが、1941年、スペインからキューバ、そしてニューヨークへ渡るために絵画を急いで手放したのだという。…

作品をはじめて見る孫のセルドルフ氏は、「最高の日ですね。ボストンの家に保管するのが順当かと思っています」と語った。

これらの絵画と元の所有者の家族をむすびつけたのは、la Commission d’indemnisation des victimes de spoliation (CIVS、フランスにおける略奪の犠牲者へ賠償を促進する委員会)のソフィー・リリー氏(オーストリア芸術史家)の探索の成果によるもので、現在もほかの163点の作品に関して、持ち主の捜索が行われている。所有者が不明の約2000点の芸術作品は、とり集められて、MNR (Musées Nationaux Récupération、国立収拾美術館)とよばれており、MNR作品は元の所有者が見つかるまで、フランス政府の監視の下に美術館に保管、あるいは公開され続けることになっている。(フランスアンフォ・ラジオ、ル・ポワン)

La ministre de la Culture, Aurélie Filippetti, lors de la cérémonie de restitution de tableaux à des familles juives, à Paris le 19 mars 2013 [Bertrand Guay / AFP]

返還される作品の前で祝辞を述べるオレリー・フィリペッティ文化大臣 [Photo. Bertrand Guay / AFP]