フランスから―環境とアートのブログ

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論争「権利」

ロワシー空港、警備員のストライキ - 年末の行き来の激しいパリ国際ロワシー空港で、荷物などを検査する警備職員たちが賃金値上げを要求するストライキに入り、空港では延々と利用客の列が際限なく続いて飛行機の発着に大きな支障が出ていたが、スト6日目の今日、政府に派遣された警察官たちが空港に乗り込んでスト中の警備員の代わりに荷物検査などをして検問に並んでいた利用客の便宜を図り、空港の正常化に勤めた。 警官を介入させた政府の処置に、ストライキ中の空港職員たちはもとより、共産党組合や政治団体が激怒。ストライキは、労働争議の権利として認められており、ストライキ行為による仕事の支障を他の労働力で補填して正常化しようとすることは、争議権を抹殺することにほかならない。国による警官介入処置への組合員や政治団体の抗議にフィヨン首相は、「麻痺した空港を解除するのが目的でしたが、なによりも年末年始の大事な時節をかたにとってストライキをすること事態が許せません」。今朝6時から空港に送りこまれた武装警察官たちは80人。空港周辺の警備に当たっていた警察官とあわせて180人がスト中の警備員の代わりに仕事に取り掛かり、警官は操作免許を持たないスキャナーなどの使用はスト不参加の警備員に任せ、利用客を飛行機に乗せるための荷物検査や身体検査をした。 朝のニュースに引き続き夜のニュースでは内務大臣クロード・ゲアンがフランス2TVで警官の介入について説明。サルコジ大統領自身もこれについての支持意見を表明した。 革命共産戦線(LCR)のオリビエ・ブザンスノは空港で、「警備員の仕事をさせに警察を送り込んで政府はストライキをぶっ壊したんですよ!ストライキの意味をぶっ壊すのは、権利をぶっ壊すのと同じです」とし、また共産党組合の支持に訪れたフランス共産党のマリー=ジョルジュ・ビュッフェは、「警察が出てくるのは予想がついていましたが、スト中の警備員の代わりに仕事をするなんて、前代未聞じゃあないですか」。 労働争議権の遵守か、クリスマスで帰郷を急ぐ人たちへのサービスか。スト不参加の警備員による乗客検査を待つ利用客の列は平均45分待ちで、警官の「援護」が加わっても待ち時間はたいして変わらなかったという。 豊胸整形手術用の不良シリコン、外国での問題 - 20日のニュースに引き続き、フランスのPIP社の豊胸手術に利用するシリコン製品の問題で、PIP社の製品の84%がスエーデン、イギリス、ベルギー、ドイツなどに輸出されているため、外国での問題をあきらかにするために、フランス2TVはPIPのシリコンで災難にあったイギリス女性を発見し取材した。 この女性によれば、シリコンの外膜が破れて摘出したところフランスのPIP社のものと判明し、弁護士に言われて証拠品として保管していたが、当のPIP社が弁済不能状態のため、整形手術をしたクリニックを相手に訴訟を起こした。同業者の医師によれば、「PIP社のものは手にとって曲げてみると周りの皮膜に変な折り目がついてしまうなどし、不良品だということがすぐ分かります」。(フランス2TV) 23日朝のニュース: 3万人の女性の胸から不良製品のシリコンを摘出することをこれから半年以内に国が推進する方針を決めた。一方で、専門家によるとPIP社のシリコンだからと言ってすぐに発がんの危険性があるわけではなく、摘出をしたくない女性はそのままでいてもいいのではないかという。国民保険が3万人の手術に見込んでいる予算は、6000万ユーロ。 My opinion: サルコジ政権になってからの特徴は、国が小さい問題に関与しすぎる傾向にあることだろう。誘拐事件や殺人事件などのたった一人の犠牲者の葬式にも大臣が参列したりしている。クリスマスの帰省時期のストライキという理由で警官を出して争議権に抵触したり、医療費の高騰、国民保険の赤字、医療施設の激減や適切な医療を受けられない地域や人々の増加などの医療の大きな問題を国が孕んでいながら、美容整形者全員の不良品摘出手術代を国が負担することを決めたりするのは、異常の判断としか思えない。PIP社の不良シリコン事件は、現政府の「問題の取り上げ方」自体を疑問視する好材料として、ここ数日頻繁にメディアが取り上げているものと解釈していい。 債務不履行で社長を始めとして幹部全員が姿をくらましてしまったPIP社の事件は、その製品の大半が外国へ輸出されていたことから国際事件へ発展した。社長は南米に姿を隠していると言われ、また3万人の手術の補償をしなければならない国民保険は訴訟を起こす方針だという(24日付ニュースから)。(S.H.)

論争「女性」

2011年の話題の女性第一位 - 2011年12月19日、フランスのTerrafeminaによる今年一番話題になった女性についての世論調査で、ドミニク・ストロス=カンの妻でジャーナリストのアンヌ・サンクレアが選ばれた。第2位は、ドミニク・ストロス=カン退陣後に国際通貨基金のディレクターに就任したクリスチーヌ・ドラギャルド、3位は社会党のマルチーヌ・オブリィ、4位は歌手のノルヴェンヌ・ルロワ、5位はFN国民戦線のマリーヌ・ル・ペンという順位。アンヌ・サンクレアは、夫ドミニク・ストロス=カンの婦女暴行容疑逮捕以来、夫を支え続け、裁判や莫大な保釈金の肩代わりをした。 この世論調査に19日付のヌーベル・オプセルバターで、ヨーロップ・エコロジー・レ・ヴェールEELVの大統領候補エヴァ・ジョリィは、「(アンヌ・サンクレアが一位に選ばれたのは)悲しいですね。国際通貨基金のディレクターや、政治の第一線で活躍する女性や技術者が一位に選ばれるべきではないですか。あまりに前時代的な感じで、がっかりです」と発言した。 ちなみに内訳は、アンヌ・サンクレアに投票した大多数は女性という結果が出ており、2位にマルチーヌ・オーブリィを選んでいる。一方、男性の選択は、国際通貨基金のクリスチーヌ・ドラギャルド、2位に国民戦線のマリーヌ・ル・ペン、3位に社会党のマルチーヌ・オーブリィの順となっている。(ヌーベル・オプセルバター、シュッド・ウエスト紙、フランス2TV、TF1TV、BMFTV) 豊胸手術に発がん物質、国民保険が補償 - 豊胸整形手術のさい胸に埋め込むシリコンに用いられるPIP社製造のシリコンが、実は人体への使用に不適当な産業用シリコンを使ったものであったことが判明し、整形手術を受けた女性の団体が世論へ危険性を訴えていたが、シリコンを包む皮膜が破れるなどの事故が相次ぎ、12人が乳がんを発病して死亡するなどしたため、国は「予防の原理」を適用する方針を決めた。PIP社の シリコンと乳がんとの関係についてはまだ明らかにされてはいないが、 シリコンを取り除く手術を国民保険が支払う。PIP社の製品で整形手術をした女性は3万人にのぼり、そのうち80%は美容のための整形で、のこり20%は乳がん手術後の整形に利用されたと言われている。80%の美容整形者については、 シリコンの摘出にのみ国民保険がきくことになる。 PIP社は年間10万個のジェルを産出する世界三番目の大手会社で、製品のほとんどは海外へ輸出されていた。ジェルを包む皮膜の破裂などの問題が頻発して社員組合が動き出していたが、PIP社の幹部は社員を置き去りにして全員姿をくらましてしまったという。(フランス2TV) My opinion: アンヌ・サンクレアは、ポール・ローゼンベルグという20世紀初頭の大画商の孫に当たる。ポール・ローゼンベルグは、ピカソやマチス、ブラックなどを扱い、カーンワイラーと並ぶ有数の画商だった。アンヌ・サンクレアは遺産の絵画をいくつか引き継ぎ、億万長者というよりもその財産は計算できないくらいに膨大であるらしい。夫ドミニク・ストロス=カンの保釈金やニューヨークのアパート代警備代その他の莫大な出資はみな、アンヌ・サンクレアが引き受けたというはなしだ。婦女暴行容疑と汚名、その後次々と明らかになる夫ドミニク・ストロス=カンの不倫にもかかわらず、公衆の面前では夫を支え続け資金をつぎ込んで惜しまなかった。これを家庭崩壊を避けるために世間の目や夫の行状に耐える「けなげで忍耐強い主婦の鑑」と判断するか、「意志の強い女性」と判断するか。ともあれ世間はいろいろで、「分かれないのが不思議」という人も実はかなり多い。女性の投票が多いのは、どちらかと言うと「よく我慢している」という驚嘆によるものではないだろうか。いっぽうで、男性が国際通貨基金のクリスチーヌ・ドラギャルドを一位に選んでいるところを見ると、男性軍は、この機構の世界初の女性ディレクターをしっかり評価し、選考基準に社会的評価を先行させていることがみてとれる。エヴァ・ジョリィに反論する気は毛頭ないが、内訳をこういうふうに解釈すると、なかなか捨てたものではない。 PIP社の産業用シリコン事件は、がんとの因果関係がはっきりしていないことから国が補償する対象とすべきなのかどうか、世論は疑問視する傾向にある。発がん性の可能性のある産業用のシリコンを体に埋め込んでいる事実を知った女性たちは、身の危険に苛まされていることだろう。それにしても、PIP社の輸出先のシリコンについてはどうなる?(S.H.)