フランス、現代文化政策の終焉か?
新文化省にみる現代文化政策崩壊のきざし - ニコラ・サルコジが大統領に就任した年(2007)の12月に発案されていた文化省の再構成が、2010年1月13日、実施の運びとなった。それまで10の各文化・芸術分野の専門の管理局があったが、4つにまとめられて「見通しの良い管理構成を持つ目的で」あたらしい文化省が発効した。(政府の文化エキスパートの放逐と文化行政部の縮小とみられる。) 新たな文化省の構成は以下のとおり。 ・Le secrétariat général(事務総局)、 ・La direction générale des patrimoines(文化遺産局)、 ・La direction générale de la création artistique(芸術創造局)、 ・La direction générale des médias et des industries culturelles(メデイア・文化産業局)、 省間庁: Délégation générale à la langue française et aux langues de France(フランス語とフランスの言語総合庁) 地域の文化省: ・Directions régionales des affaires culturelles(DRAC 地域文化振興局) ・Services départementaux de l’architecture et du patrimoine(建築文化遺産に関する県内サービス) ・Les établissements...
れきしの点と線 - デコンサントラシオンと文化
1969年、文化の地方分権化の始まり。 La Déconcentration – ラ・デコンサントラシオン: 文化省の中央集権的政治および事務的構造を、地域に《地域文化振興局- Directions régionales des affaires culturelles/ DRAC》を作ることによって、文化行政が地域へ出現し発展するよう発想されたもので、アンドレ・マルローによって1969年、地域3箇所に初めて地域文化振興局がおかれた。 この文化省のブランチDRACの存在によって、文化省は地域へアンテナを伸ばすことができ、かつ地域議会の文化予算に対応する予算の注入への配慮などの、中央と地域のバランスがとれていくことが期待された。 フランス国内は22の地域に分割されている。それを考えると、マルロー時代、3箇所のDRAC設置は、まったくのはじめの一歩というべき象徴的な出来事というだけにとどまり、全国に文化省の力を敷衍するまでにはいたらなかった。 1976年(ヴァレリー・ジスカール=デスタン大統領、ジャック・シラク首相)、Françoise Giroud(フランソワーズ・ジルー)が文化付閣外大臣(文化は省から閣外の局レベルに格下げされ、大臣は閣外大臣と呼ばれる)となり、短い任期中、地域文化振興局DRACの設置を制度化する条例を制定した。 ジスカール=デスタンはヨーロッパ共同体へ傾倒し、シラクはデコンサントラシオンを理由に、文化省を閣外に落としたという。財政の地方分散で文化も地域の采配に任せたという話だが、地域は自立して活動を行うまでにはいたらなかった。フランソワーズ・ジルーはこの政権下で女性の解放、平等化などへ尽力し(1974-76)、文化への思い入れのある政治家の希少なこの時期の政府の中で、文化の夢に「固執して」DRACの条例化をすすめた(1976-77)という。 La Décentralisation – ラ・デサントラリザシオン: 1982年83年(ミッテラン大統領、モロワ首相)制定の地方分権法。中央の権威や能力を地方へ分散させ、地方共同体との平衡を図る法律。この法律は政治司法、産業その他全般にわたるもので、文化も当然ここに含まれる。文化において80年代は、政府の積極策と地方共同体の熱意が功を奏し意思疎通がうまくいっていた時代であった。また文化省から地域へ配分される予算の増加とともに、DRACの体制が強化された。 1992年2月6日および7月1日、行政管区におけるデサントラリザシオン憲章設立。地方へ分散した権威に活動の権限を優先して与えることを謳ったもので、文化もこの優先権の逆転により、大いに性格が再検討され塗り替えらることになった。 したがって文化においてラング文相時代は、中央の文化政策を地域で行い地方共同体の世話をするエキスパートの役を担うというDRACの機構が実質的に形作られた時代ということができる。 (Extraits de: “L’Etat et la culture en France au xxe siècle” Philippe Poirrier, “Le lancement de la déconcentration” André-Hubert Mesnard)