アクチュアリティ、ユーロ圏はどうなる?
経済: ブラッセル、ユーロ圏救済特別サミット - GDPの150%に上る3500億ユーロもの負債をかかえるギリシャを救済をするために、ニコラ・サルコジ仏大統領は昨日ドイツのアンゲラ・メルケル首相と事前協議をするためベルリン入りをし、きょう17か国のEU代表が集まるブラッセルの欧州特別審議会で仏独共同策を提示した。今日中にEUが救済介入を決定しなければギリシャが倒産する。ギリシャの後ろには同様に経済危機をかかえるポルトガル、スペイン、それに加えてイタリアの低迷が足を引っ張リ、ギリシャが倒産すればユーロ圏崩壊を招くことは必定だ。こうしたユーロ体制の危機に際し、何を犠牲にしてもギリシャを救済するというサルコジ大統領と、自国内の金融体制には一切影響を及ぼさないことを前提に救済策を決定したい意向のメルケル首相との会議は7時間にわたって行われた。きょう13時から現在行われているブラッセルのEU特別審議会は、ギリシャは負債の全額を返済する必要はないというEU統合はじまって以来前代未聞の提言をしてギリシャの破産を食い止めようとしているが、負債の返済を一部回避できるとなればギリシャに貸借している銀行が困窮に陥る可能性がある。ギリシャ国内は、VAT消費税の高騰、ゼネスト、賃金引下げ不払いが相次ぎ混乱は収まらない。救済策として返済見過ごしを導入するのは、事実上暫定策でしかないという見方が大勢だ。 経済: EU緊急特別審議会、ギリシャを救う姿勢強く見せつける - (上記の続き)10時間以上に及ぶ審議のすえ、EUは3500億ユーロの負債をかかえる破産寸前のギリシャにたいし、1580億ユーロの救済金を捻出することを決定した。予想されていた額より多く、うち、3分の2はEU17カ国が負担し、3分の1は銀行が利息を減らしまた負債の一部を帳消しにするなどの処置で負担する方針。ギリシャを救済することで、EU諸国がEU圏の保持に全力を努める姿勢を強く打ち出し、ユーロ圏崩壊を食い止める体勢を世界に誇示したことになる。 破産は食い止められるもののギリシャ国民は悲観的で、「今回の処置はほかの国にしわ寄せが行くだけで、国内生産をあげるよう国が努力しなければ、元の木阿弥だ」。(フランス2TV) 社会党フランソワ・オーランド、メディアの行き過ぎに激怒 - DSK、ドミニク・ストロス=カンのニューヨークの婦女暴行事件が一転二転。DSKがニューヨークで自由になったとたんに、フランスでは2003年にDSKに強姦されそうになったというトリスタンヌ・ボノンという女性がDSKを訴えでた。2003年、DSKは社会党政府の経済大臣で有力者。トリスタンヌ・ボノンは暴行された当時、友人や家族などの周囲におしとどめられて沈黙していたのだという。トリスタンヌ・ボノン事件に関し、検察が事情聴取をすることを決め、社会党の大統領候補で有力視されているフランソワ・オーランドが参考人として召還されることになった。問題は、『ル・フィガロ』日刊紙の一面に、トリスタンヌ・ボノンとフランソワ・オーランドの2人の合成写真が大きく取り上げられており、またしても社会党が汚名を着せられたような印象を与えたことだ。「私は事件にはなんら関係がなく、また第三者以外の何者でもない。いいかげんに、細工(報道の?)を止めないと、法廷に引き出す用意がある」とフランソワ・オーランドは激怒。検察は9月にでも事情聴取をといったが、9月は社会党の大統領候補を決定する大事な時期に入る。「事情聴取をするなら今すぐやってくれ」と答えて、早速昨日召還を受け、「周辺の人たちの一人として知らされた覚えはあるが、自分はまったく事件とはかかわりがなく、これ以上の情報はまったく無い」と強調したという。 社会党書記長も、この日「人を貶めようと裏工作やら小細工が横行しすぎている。政治はもっと大きなビジョンや政策の問題を前面にしてやっていくものではないですか」と、DSK事件を発端として、社会党の人気落しが裏工作され続けていることに業を煮やした発言をした。 エネルギー - EDFフランス電気会社が30億ユーロの予算で建設中の新型炉心を備えるフラマンビル原子力発電所建設(バース・ノルマンディー)がさらに遅れ、2016年を完成めどとすることにした。このために建設費用は二倍に膨れ上がり60億ユーロになるという。2010年を目指して建築中であったが二度の大事故ですでに大幅に遅滞していたもの。福島原発事故なども影響して、原発炉心構造のさらなる安全性が求められており、建築予算は雲をつく勢いで増加。世界中で同種の炉心建設計画が10箇所あるが、うちアブダビやイタリアは建設を中止した。 (フランス2TV、BFMTV)
論争、エヴァ・ジョリィ対フランソワ・フィヨン
論争沸騰、軍事パレードから二重国籍へ- 7月14日、キャトルズ・ジュイエ。シャンゼリゼ通りで行われる恒例の軍事パレードについて、EELV(ユーロップ・エコロジー・レ・ヴェール)に選出された大統領候補エヴァ・ジョリィの発言が、論争を巻き起こした。この日エヴァ・ジョリィが、「軍事パレードを廃止して、市民のパレードに切りかえてはどうか」と発言したところ、フランソワ・フィヨン首相がこれを受け、「なんとも悲しい発言だ。この’婦人’はフランスの伝統や、古い文化や価値、またフランスの歴史がまるで分かっておられない」と、メディアに向けて正式発表するかたちをとってやり返した。エヴァ・ジョリィはこれに反駁し、「私はフランスで50年も生活してきたれっきとしたフランス人です。私の愛国心に対し疑いを投げかけるような言い方は許せません」。引き続き『Le Point』誌上で、「こうした(首相の)言い過ぎは、ナショナル・アイデンティティをたてに虚勢を張るところからでている。首相は、ああしたことを言ったことで、公ですべき意見討論の意味を貶めたばかりではなく、共和制政体のあり方そのものが退廃へ向かっていることを露にした」と述べた。 EELVの創始者、ダニエル・カン=ベンディット(欧州議員)は、「エヴァは正しい。フィヨンの脱線だ」。ユーロップ・エコロジー書記長セシル・デュフロは、「こうした発言をする首相は恥だ」。また社会党のフランソワ・オーランドは、「(軍事パレードをうんぬんというのはひとつのアイデアとして出ただけ)出てくるアイデアのもろもろを公の場で検討していくのは当たり前のことなのだが、そうした討論の場すら拒否してしまうような政府は言語道断です。フィヨン発言は許せません」。社会党のマルチーヌ・オーブリィはさらに輪をかけて、「フランスで生まれたフランス人も、フランスの外で生まれたフランス人もフランス人として同等の立場にあります。同等の権利を再び外と内とで引き裂くようなフィヨン首相の発言は、大問題です。フロン・ナショナル(極右政党)と同じラインではないですか。今回、心底からショックを受けました」。 軍事パレードの問題を飛び越え、フィヨン発言は革新左派を逆撫でする結果となり、「ナショナル・アイデンティティ」にかんする保守右派政府と革新左派全体の対立を、再び浮上させることとなった。 (フランス2TV、TF1TV、F2blog、Le Point) 〈注記: キャトルズ・ジュイエの軍事パレードについて - 大本はナポレオン一世時代に始まったもので、そののち1880年から毎年国民の日7月14日に行われるようになったパレード。シャンゼリゼ通りで行われるようになったのは第一次世界大戦後の1919年。現在のパレードは約4000人の軍隊(兵学校、海軍、陸軍など)、および消防、警察などで構成されている。キャトルズ・ジュイエの軍事パレードは、ロシアの赤の広場の軍事パレードに次ぐ大きなパレードといわれている。〉 My opinion: エヴァ・ジョリィの立候補と今回の発言、またフィヨン首相の発言にはさまざまな大問題が含まれている。キャトルズ・ジュイエの軍事パレードについていえば、現在軍事パレードが定期的にこれだけの規模で行われている国はロシア、北朝鮮など、ある種の政治色が濃い国ばかりであること。伝統的かつ著名な風習を廃止するという「ひとつの」提案を無下にし、フランス・ノルウエーの二重国籍を持つエヴァ・ジョリィに対し、「このご婦人はフランスの歴史も価値も知らない」といったフィヨン首相の表現には、エヴァ・ジョリィを外国人とみなしてフランスという国の概念の外へ押し出そうという意味合いがありありとしていたことだった。出るべくして出たこの二重国籍を保持する大統領候補の「出自」の問題。このことで、保守現政府が政府樹立当初、省まで設けた「ナショナル・アイデンティティの概念」を思い起こす国粋主義的な保守の根本志向が再浮上し、従来の保革の思想的対立へ立ち返ることになった。 フランスは植民地が多かった。北アフリカ、仏領インドネシア、ポリネシアなど、旧植民地関係でもフランス国籍を持つ有色人種がたくさんいる。フランス自体、イタリア、スペイン、ロシアなどの少数ながら民族移動と居留が歴史的に頻繁に繰り返されており、国民の混血を免れてはいない。また、サルコジ大統領も父親はハンガリー人でブタペスト生まれ、母親はフランスで生まれているが、家系はユダヤ系ギリシャ人。フランス人のアイデンティティを再考して、フランス人として不釣合いあるいは疑わしい人間の国籍を没収する、などという政策をとるなどしている現政府の「シェフ」ですら、フランス国籍取得は一代前のことでしかない。 こうした国で考えることは、自分のアイデンティティもしかることながら、「人間の権利」とは何かということだ。生まれたときから授けられた権利、剥奪される権利、獲得していく権利。いろいろあるが、現在生活をしている現場の国の人間たちと同じ権利を保障する国籍に関していうならば、日本は本来、二重国籍保持を許してはいない。したがって日本国籍を持つ限りは、日本人が外国で大統領候補になる可能性などは皆無である。したがって、フランスに50年いてもエヴァ・ジョリィにはなれない。すでにその50年あるいは1年ですらも、エヴァ・ジョリィと同じ生き方はできない。国の外で見えてくる人間の「権利の対等」。対等の権利を持つ。人一人の運命にとどまらず国の運命まで変えるキー概念のひとつがここにある。(S.H.)
アクチュアリティ
経済、さらにユーロ圏揺らぐ - きのう、世界市場でユーロ圏の危機が再び露になった。ギリシャ、ポルトガルに続くイタリア経済の弱体化が、ユーロ圏崩壊へのなだれ現象に拍車をかけるのではないかと懸念されている。イタリアはヨーロッパ経済では第3番目に位置した国であるが、経済相の収賄問題や、ペルロスコーニ首相の収賄問題等が国の経済低迷を招き、18兆ユーロという巨額の負債を背負い込んだ。負債額は国民総生産(GDP)の122%に相当する。すでに巨大な負債を抱え込むギリシャ、追随するポルトガル、スペインに加えてイタリアの経済危機はユーロ圏への影響が大。ちなみにEUは、ギリシャ救済にまだなんら解決策を得ていない。 フランス、風力原動機600基の建設へ - エオリエンヌ・オフショアーと呼ばれる海上での風力原動機建設実施が確定した。ノルマンディーの、サン・ナゼール、サン・ブリユー、フェカン、ル・トレポール沖合いに、重さ815トン高さ90mの風力原動機600基が、2016年をめどに環境省などの後押しで建設される運びとなった。フランスは2020年までに、エネルギー生産の23%をクリーン・エネルギーに転換する方針で、風力原動機の建設はその一環となる。建設費用100億ユーロ、225万世帯をカバーする見込み。海風が一定であるというメリット以外は、オフショアーで建設費用もメンテナンスも通常より費用がかさむ。採算が合うかどうかは稼動してから、という。 2012年、大統領選へ - きょうの国民調査で、フランス国民の61%がドミニク・ストロス=カンの立候補を好まない、という結果が出た。DSKが立候補するとすれば社会党からだが、社会党の立候補者二人、フランソワ・オーランド、マルチーヌ・オーブリィの人気は拮抗しており、いずれが立候補しても現大統領のニコラ・サルコジに7ポイント差で勝つ、という数値が出ている。ちなみに3番目は、フロン・ナショナル(極右政党)のマリーヌ・ルペン。サルコジとの差は5ポイントしかない。 (フランス2TV)